株式投資を始めるなら、まずは証券会社に口座を開かないといけません。そして、証券会社に口座を作る時には、口座の種類を選ぶ必要があります。
具体的には、特定口座(源泉徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)、一般口座の3択です。
証券会社の口座開設申し込み画面には、各口座についての簡単な説明があるだけなので、どれを選んだらいいのか迷う人も多いようです。
安易に選んでしまうと、払わなくてもいい税金を払うことになったり、会社に給与外の所得があることが知られたり、確定申告が面倒になったりします。
それぞれの口座のメリットとデメリットを知り、「どれを選んだらいいのかわからない」という悩みをずばっと解決しましょう。
特定口座と一般口座の違い!源泉徴収あり特定口座なら確定申告が不要
どの口座を選ぶかは、税金の払い方に大きく影響してきます。
株や投資信託で儲けて譲渡所得(売った値段-買った値段-手数料)を得たら、税金がかかります。株取引で利益が出たら確定申告をして、いくら税金を払うのかを国に申告しなくてはいけません。
特定口座(源泉徴収あり/なし)と一般口座のうち、どれを選ぶかによって、この確定申告にかかる手間が大きく異なります。
3つの口座の違いを見てみましょう。
特定口座とは?年間取引報告書を証券会社が作ってくれる口座
特定口座は、金融機関が株や投資信託の利益・損を計算して、「年間取引報告書」という書類を作ってくれる口座です。1証券会社につき1口座作ることができます。
一般口座では「年間取引報告書」を自分で作る必要があります。
特定口座にはさらに源泉徴収ありとなしの2種類があります。一般口座も含めた3つの口座の違いを簡単に説明すると、こうなります。
特定口座 (源泉徴収あり) |
簡単に確定申告できるように、証券会社が書類を準備してくれる。確定申告しなくてもいい。 |
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特定口座 (源泉徴収なし) |
簡単に確定申告できるように、証券会社が書類を準備してくれる。確定申告は必要。 |
一般口座 | 書類作成から確定申告まで、自分でやる。 |
「年間取引報告書」は確定申告に必須の書類ですが、見ればわかるように自分で作るのは大変なので、証券会社に作ってもらえるメリットはとても大きいんです。
確定申告の手間がない特定口座(源泉徴収あり)が選ばれている
3つの口座の中では、特定口座(源泉徴収あり)が最も人気があります。
2014年1月~2015年2月までの楽天証券の集計では、82%もの人が特定口座(源泉徴収あり)を選択しています。
年間取引報告書を作ってもらえるだけではなくて、確定申告の手間が省けるというのが人気の理由です。確定申告に不慣れな会社員や公務員には、ありがたいですよね。
源泉徴収あり特定口座のメリットは?とにかく楽!
先ほど紹介したように、人気があるのは、確定申告しなくていい源泉徴収ありの特定口座です。源泉徴収ありの口座だと、株売買で譲渡所得(売却で得た所得)が出た都度、金融機関が税金分を自動で差し引いてくれます。
しかし、源泉徴収ありの口座には、「払わなくてもいい税金まで払ってしまう」というデメリットがあります。
源泉徴収あり特定口座のメリットとデメリットを整理してみます。
確定申告の手間が省けるのは大きなメリット
源泉徴収あり特定口座では、会社員の給料から所得税や住民税が天引きされているのと同じように税金が自動で引かれていきます。でから確定申告する必要がありません。
売却損が出た時は、天引きされた税金から、税金が還付されます。
とにかく楽なので、確定申告に慣れていない人、手間をかけたくない人にはありがたい口座です。
確定申告しないから利益を上げても扶養から外れない
源泉徴収あり特定口座なら確定申告不要なので、夫の扶養に入っている主婦、親の扶養に入っている学生ががいくら利益を上げても扶養から外れません。
これは扶養に入っている人にとっては大きなメリットですね。
ただし仮に「損益通算」や「譲渡損失の繰越控除」を受けたいために確定申告をしてしまうと、扶養控除に影響する可能性があるので注意が必要です。
損益通算や繰越控除については「株で損したら絶対確定申告しろ!初心者向け株と税金の基礎知識」を参考にしてください。
配当金と売却損の損益通算が確定申告なしで完了
上場株式配当等受領委任契約が結べるのもメリットです。この契約を結んでいると、口座内で配当金と売却損を損益通算(利益と損を相殺して節税する方法)して、税金を減らすことができるんです。
急に配当金の話が出てきて、戸惑った方もいるでしょうか。今までは譲渡所得(売却で得た所得)についてお話してきましたが、株で得られるもうひとつの利益に配当金がありますよね。
本来、売却損と配当金を損益通算するには、確定申告が必要ですが、上場株式配当等受領委任契約を結んでいれば、確定申告しなくても損益通算が自動でできます。
契約方法は証券会社によって異なります。例えば松井証券の場合には、特定口座(源泉徴収あり)の開設を選択すると、自動で上場株式配当等受領委任契約を結ぶことになります。
譲渡益20万円以下だと税金を払いすぎてしまうデメリット
便利な源泉徴収あり特定口座ですが、「払う必要がない税金を払ってしまう」という注意点もあります。実は、こんな条件を満たしていれば譲渡所得にかかる税金をおさめなくてもいいというルールがあるんです。
- 1ヶ所から給与を受けている給与所得者
- 給与収入2,000万円以下
- 給与・退職所得以外の所得(株の譲渡所得含む)が年間20万円以下
例えば、こんなサラリーマン・Aさんなら、確定申告は不要です。
- 年収400万円のサラリーマン
- 年間の譲渡所得が10万円
- 他に給与や退職金以外の所得はなかった
しかし、Aさんが源泉徴収ありの特定口座を選んでいると、税金を払う必要はないのに、証券会社が自動で譲渡所得10万円×20.315%(20,315円)を納税してしまいます。
払わなくてもいい税金を2万円も払ってしまって、10万円の利益のうち8万円しか残らないのは痛いですよね。
しかも、税金の払い戻しは受けられません。一旦払ってしまったら取り返すことはできない決まりなんです。
少額で運用しているとか、配当金狙いがメイン(売却益狙いの運用ではない)とか、売却益が20万円を超えない人には特に知っておいてほしいデメリットです。
源泉徴収なし特定口座は譲渡益20万円以下なら納税不要
次に特定口座(源泉徴収なし)について説明します。
この口座だと、年間取引報告書は証券会社が作ってくれますが、源泉徴収はしてくれないので、自分で確定申告しなくてはいけません。
確定申告は必要ですが簡単に申告できるので、簡易申告口座とも呼ばれます。
源泉徴収あり口座と違い、譲渡所得が20万円以下の会社員は余計な税金を払うことがないのがメリットです。
譲渡益20万円以下の会社員なら確定申告は不要
源泉徴収なしの特定口座では、20万円を超える譲渡所得が出たら確定申告が必要ですが、譲渡所得が20万円以下の場合は確定申告が不要です。支払わなくてもいい税金を払うことがありません。
少額で運用している人、売却益狙いではない人、「最初は利益がでるか自信がない」という人には、源泉徴収なしの特定口座がおすすめです。
ただし申告しなくていいのは所得税だけで、20万円以下でも住民税の申告と納税は必要です。確定申告をせず、住民税のみを申告する場合は、自治体で申告を行います。
20万円を超えた時には自分で確定申告しないといけない
源泉徴収なし特定口座で譲渡所得が20万円を超えると、自分で確定申告しないといけません。
確定申告をする場合、自営業の人や、夫・親の扶養に入っている主婦・学生は注意が必要です。譲渡所得の額が多いと、こんな可能性があります。
- 自営業の場合:国民健康保険料が上がる
- 主婦の場合:夫の扶養から外れる
特定口座(源泉徴収あり)だと、基本的に確定申告はしないので、この点を気にする必要はありません。
会社に株取引がバレない確定申告と住民税申告の方法
利益が出て確定申告して住民税を納める場合、税金が給料天引きになってしまうと、会社に給料以外の所得があることが知られる可能性があります。
社内ルールで株式投資を制限している会社でなければ問題にはならないでしょうが、知られたくない場合は徴収方法を選択するときに注意してください。
確定申告せず、自治体で住民税の申告だけをする場合は「給与・公的年金に係る所得以外の住民税の納付方法」欄を「普通徴収」にしてください。
株取引がメインならメリットなしの一般口座
最後に一般口座について説明します。
一般口座だと、年間取引報告書を証券会社が作ってくれないので、自分で年間取引報告書を作って確定申告しないといけません。
一般口座にも、特定口座(源泉徴収なし)と同じように、譲渡所得が20万円以下なら確定申告は不要というメリットはあります。
しかし、損失が出て、損益通算や損失繰越(ある年の損失を、向こう3年間の利益と相殺して節税する方法)をするとなると、確定申告する必要があります。そう考えると、やはり確定申告が簡単な特定口座にしておくべきでしょう。
ちなみに、最初に見た楽天証券の円グラフだと、一般口座を持っている人は10%でしたよね。「面倒な口座なのに、使っている人が10%もいるのは意外だな」と思うかもしれません。
実は、未公開株(上場していない会社の株)が一般口座でしか扱えないため、需要があるのです。
しかし、特定口座で対応可能な取引のみを行うなら、一般口座のメリットはほとんどないといえます。
源泉徴収なし口座から源泉徴収あり口座への変更方法
「ここまで読んで、特定口座(源泉徴収あり)がいいと思ったけど、実はもう特定口座(源泉徴収なし)で開設してしまった」という場合でも、源泉徴収ありの口座に変更できます。
楽天証券を例にすると、変更可能な人の条件はこのようになっています。
- 特定口座で、その年にまだ最初の売却や 配当等の受入をしていなかったら可能
- 配当金の受け入れのみが発生している場合、「源泉徴収なし」から「源泉徴収あり」への変更は可能
(2019年1月現在)
手続き方法は以下のとおりです。
WEB上で行う場合 | 手続き画面で、希望の源泉徴収区分を選び、本人確認書類をアップロードして完了 |
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WEB画面から届出書をダウンロードする場合 | 特定口座開設届出書を印刷し、本人確認書類を同封して楽天証券に返送 |
届出書を請求する場合 | 特定口座開設届出書の郵送をWEBまたは電話で請求し、本人確認書類を同封して楽天証券に返送 |
条件はあるものの、手続きそのものはネットで完結できて簡単ですよね。
楽天証券の場合は、書類を提出してから1週間くらいで変更が完了します。
そのほかにも楽天証券には顧客対応の優れたサービスがいっぱいあるので、気になる方はぜひ楽天証券をチェックしてみてください。
特定口座と一般口座のメリット・デメリットまとめ
特定口座と一般口座の特徴、メリット・デメリットと注意点をまとめます。
特徴 | 特定口座(源泉徴収あり) |
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メリット |
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デメリット |
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利用している人 |
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※一般口座や他の証券会社の特定口座の譲渡損益と損益通算したい場合、損失繰越したい場合は、確定申告が必要。その場合は譲渡所得が所得額に合計され、国保料等に影響する。
特徴 | 特定口座(源泉徴収なし) |
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メリット |
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デメリット |
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利用している人 |
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特徴 | 一般口座 |
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メリット |
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デメリット |
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利用している人 |
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株式投資で見込まれる利益額で源泉徴収の有無を選ぶ
少額での運用なら、払わなくてもいい税金をとられてしまう心配がない特定口座(源泉徴収なし)をおすすめします。
20万円以上の利益が見込まれ、配当金と売却損益の損益通算も楽に行いたい場合や、扶養から外れたくない主婦・学生の人は特定口座(源泉徴収あり)を選びましょう。
3つの口座には大きな違いがありますから、きちんと知って選ばないと、思わぬ損をしたり、手間がかかったりします。あなたにあった口座を選んでくださいね。