企業規模に関係なく、不確実性の高い時代に企業が生き残るためにはデジタルトランフォーメーション(DX)への対応は必須の状況だ。企業がDXを実現するためには、新しいスキルをもった人材や従業員のスキルアップが必要だが、ものづくり業界の動きは依然として鈍い。
設計者一人ひとりにとってもデジタル化を通じてスキルアップをすることは、作業効率をアップさせ、より創造性の高いイノベーティブな設計技術を得ることに繋がる。

 「ものづくり白書」2020年版では、日本の製造業の課題として「IT投資目的の消極性」「データの収集・活用の停滞」「老朽化した基幹系システムの存在」などを挙げ、デジタル化の遅れを指摘している。
特に設計のデジタル化とデジタル人材の確保・育成という2つの遅れは顕著だ。

 そんななか「設計におけるCADの導入状況や活用の仕方を見ると、現場が『失われた30年』からほとんど抜け出せていないことがわかります」と話すのは、機械設計者出身であり、元オートデスク社員、現在は独立しオクターブ・ラボを起業した田中洋次氏だ。

オクターブ・ラボ 田中洋次氏

オクターブ・ラボ
田中洋次氏

「日本の多くの製造業では、3次元CADをいまだに使いこなせていません。導入している企業でも、2次元の図面をもとに3次元モデル化を外注していたり、実際には2次元しか使っていなかったりします。また、CADエンジニアも、図面の一部を編集するだけで済ませるケースが増え、本当の設計スキルを身に付けられません。このままだと取り返しのつかない事態に陥ります」(田中氏)

 一方で「今こそ、チャンスです」とも指摘する。設計のデジタル化とエンジニアのスキルアップが、事態を改善するカギになるからだ。
では、どのようにエンジニアはスキルアップを図るとよいのか。田中氏にそのポイントを聞いた。