米フォード・モーターの創設者 ヘンリー・フォード(Henry Ford)氏や米アップルの創業者 スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏は、顧客が望むものよりも、顧客がこれから望むであろうものを見つけ出すことに長けた人物であった。そして現代は、これまで以上にすさまじいスピードでテクノロジーが進化している。彼らのようにイノベーティブなビジネスを創出するには、新しいテクノロジーを起点として将来的にどのようなことが可能になるかを想像し、今現在は存在しない商品/サービスをつくり出していかなければならない。

10月6日にアイ・ティ・アール(ITR)が開催したオンラインイベント「IT Trend 2020」では、このようなニーズ志向/シーズ志向を超えた「テックネイティブ」なビジネスの創成方法について、アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリストの甲元宏明氏が解説した。

甲元宏明氏

アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト 甲元宏明氏

ビジネスになり得る「未来型テクノロジー」を見つけるポイント

甲元氏は、新規テクノロジーには「未来型テクノロジー」と「非未来型テクノロジー」の2つのタイプがあるとし、イノベーションを創出するには「これらを見分け、前者(未来型)の活用を考えていくことが重要」だと説く。

同氏は未来型テクノロジーの例として、脳から直接コンピュータを操作する「BMI(Brain-Machine Interface)」や、コンピュータのサイズが極めて小さくなる「ゼロサイズ・インテリジェンス」を挙げ、「新規テクノロジーが未来型か否かを判断するには、適応範囲や規模の拡張性といった『スケーラビリティが高いかどうか』、社会情勢や物理的構造などの制約に左右されずに長期間生き残るような『サステナビリティがあるかどうか』の2点が重要」と、その見極め方を説明。併せて、ビジネスになり得る有望なテクノロジーを選別するための次の5つのポイントについて、コメントとともに紹介した。

1. 対抗テクノロジーが存在するか

「切磋琢磨してそのテクノロジーが育つ環境にあるかどうかということが大切。唯一無二のテクノロジーでは、マーケットができる前に廃れてしまう可能性がある」

2. ハードウエアでなくソフトウエアか

「制約に左右されないという意味でも、ソフトウエアが主導し、ハードウエアに依存しないようなテクノロジーであるかどうかが重要」

3. インフラとの互換性があるか

「ここで言うインフラとは、ITインフラを含む社会的基盤を指している。現状の社会的インフラとの互換性がなければ未来をつくっていくことは難しい」

4. 長年の課題に対する解決策になっているか

「クラウドがこれまでのオンプレミスの課題を解決するものだったように、長年の課題を解消できるテクノロジーかどうかも判断のポイントとなる」

5. 過去に実現の試みがあったテクノロジーか

「過去に何回もチャレンジされてきたが、周辺技術や製造技術が追いついていなかったなどの理由で実現されていなかったテクノロジーは有望。人工知能(AI)は、過去に何度もブームを繰り返し、生き残ってきた」