4年半越しのソニーグループ横断型開発プロジェクトはいかにして実を結んだか? - AIを活用した自動車保険「GOOD DRIVE」

[2020/09/04 10:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

前例のないボトムアップ型プロジェクトが成功できた理由

GOOD DRIVEのアイデアが生まれたきっかけは、2015年の秋に遡る。機械学習や信号処理を専門としてライフログ向けアルゴリズムの開発に携わっていた古川氏は「人の行動が利益につながる、より社会的/経済的な付加価値のあるサービスをつくりたい」と考え、保険領域に着目していた。

古川氏

一方、石井氏はドライブカウンターを用いた既存サービスに課題を感じていた。この情報を古川氏が聞きつけ、会社の垣根を超えて石井氏に相談したことでプロジェクトがスタート。ソニーグループ内の関係者にプロジェクトに入ってほしいと古川氏から声をかけていくかたちでメンバーを集めていった。

このように、GOOD DRIVEは新規事業創出を目的とした組織から生まれたサービスではなく、完全なボトムアップ型のプロジェクトが基になっている。あらかじめソニーグループを横断するような組織が用意されていたわけではない。古川氏の熱意とビジョンがプロジェクトの成否を左右する大きなカギとなっていたことがうかがえる。

ただし「当初は2年くらいでできると思っていましたが、結果的に4年掛かった」と古川氏が振り返るように、プロジェクト立ち上げ後も困難は多くあった。

「ソニー損保とソニー本体との開発文化の違いには苦労しました。ほかの金融システム同様、ソニー損保側はウォーターフォール型でシステムをつくろうとしますが、ソニー側は、アジャイル型。途中でいったん確認したい、という感覚がウォーターフォール型に通用しないんですよね。ギリギリ整合性がとれるよう、うまく調整しながら進めていきました」(石井氏)

石井氏

保険サービスとしての作り込みにも課題があった。特に、関係者による座談会で挙がった「保険料の安さが契約者にとってはネガティブに効いてしまうのではないか?」という意見は大きかった。石井氏は「確かにネット型自動車保険では、安い代わりにデメリットがあるのではという印象を持たれてしまうことは避けられません。そのためGOOD DRIVEでも、サービスデザインをかなり工夫しなければならないと感じていました」と語る。

こうした意見を反映させた機能の1つとして、GOOD DRIVEには、事故が起こった際、専用デバイスのボタンを押すだけでアプリの緊急連絡画面が自動で立ち上がり、ワンタップでコールセンターに連絡できるという機能が搭載されている。事後対応という従来の保険が重要視してきた場面でも、しっかりと安心感を提供しているわけだ。

“人生の主役ではない”保険の価値

契約者にとって保険料が安くなることはもちろん、保険会社側からすると保険金の支出が減り、さらに交通事故という大きな社会課題の解決にもつながる、まさに三方良しのサービスと言えるGOOD DRIVE。「シェアリングエコノミー時代の信用情報にもなり得る」と、古川氏は今後の展望を語る。MaaS化が進み、自動車のシェアリングサービスが今後さらに普及していけば、安全運転をしている人にだけ車を貸し出すといったような、運転データを基にした与信プラットフォームとして活用する利用方法も考えられるというわけだ。

GOOD DRIVEの開発段階では、「保険は人生の主役ではない」という議論があったという。しかし今後、従来の保険の枠組みを超えた価値を提供していくことで、GOOD DRIVEは人生の舞台裏から人々や社会をより強固に支えていくだろう。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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