「SAFe」とは(その2)- Lean-Agile Leadership

【連載】

SAFeでつくる「DXに強い組織」~企業の課題を解決する13のアプローチ~

【第3回】「SAFe」とは(その2)- Lean-Agile Leadership

[2020/04/06 08:00]近藤陽介 ブックマーク ブックマーク

前回は、SAFeの概要をお伝えするとともに、SAFeの基礎となる重要な考え方や原則として、7つのコアコンピテンシーを紹介しました。続く今回は、コアコンピテンシーのなかでも特に重要な「Lean-Agile Leadership」について解説します。

組織変革の基礎となる「Lean-Agile Leadership」

Lean-Agile Leadershipは、7つのコアコンピテンシーのなかで”基礎”となるものです。前回紹介したSAFe 5.0のBig Pictureにおいても、Lean-Agile Leadershipは図の一番下、まさに土台として描かれています。

SAFe 5.0のBig Picture(Full SAFe Confiugration)/出典:米Scaled Agileの公式サイト

Lean-Agile Leadership、すなわち、「無駄をそぎ落とした上で俊敏性を高めた組織を作るためのリーダーシップ」において、その基盤となるのが「リーンアジャイルに関するマインドセットと原則」です。リーダー自身が「リーンアジャイルのマインドセット」を身に付け、原則に従って行動することで、組織全体に対して規範を示し、結果、組織のリーンアジャイルへの変革を主導することができるとしています。

以降では、Lean-Agile Leadershipを構成する「Lean-Agile Mindset」と「Core Values」、そして「SAFe Principles」について紹介していきます。

Lean-Agile Mindset

Lean-Agile Mindsetとは、アジャイル開発チームで共有されるべき理念「リーンの家(House of Lean)」で示される「Lean Thinking」と、その背後にある12の原則から成る「アジャイルソフトウェア開発宣言(Agile Manifest)」のことです。

リーンの家はリーン生産方式を起源とする考え方です。そのなかで示されるLean Thinkingでは、「最短かつ持続可能なリードタイムでの最高の品質と価値の提供」を実現するために、以下の行動が必要だとしています。

  • 価値を生み出す者に敬意を払う
  • 待ちや無駄がなく顧客からのフィードバックに迅速に対応できるフローを確立する
  • 状況の変化を観察した上で適切な改革を行う
  • 常に危機感を持ち、適切な改善を迅速に行い続ける

さらに、これらを実現するための組織変革には、管理職やリーダーなどの強力なリーダーシップが必要となります。

アジャイルソフトウェア開発宣言については、すでにご存じの方も多いでしょう。2001年に、著名なソフトウエアエンジニア17名が議論の末に導き出した、全てのソフトウエア開発に共通する価値や信念であり、アジャイル開発のよりどころとなっています。

Core Values(コアバリュー)

SAFeでは、Lean-Agile Mindsetの価値観の下に行動する際、大切にするべきものとして、次の4つのコアバリューを定めています。

◆Alignment(ベクトルを合わせる):リーダーは戦略とビジョンを組織内に伝え、プランニングにおいてビジネス価値を決定した上で需要とキャパシティが折り合うようにスコープ調整を主導することで、組織が共通のゴールを目指して取り組めるようにします。
◆Built-in-Quality(ビルトインクオリティ):リーダーは、開発において高い品質が実現できるよう、開発フローにそのための仕組みやプラクティスを組み込みます。
◆Transparency(透明性):リーダーは、全ての関連する情報の可視化/公開を促し、信頼関係の構築と、問題の早期検知/解決ができるようにします。
◆Program Execution(プログラムの実行):リーダーは、ビジネスオーナーとしてPI(プログラムインクリメント)のプランニングと実行に参加し、質の高いPI実施の奨励と、障害や阻害要因の除去に取り組み、継続的に価値が提供できるようにします。

SAFe Principles(SAFeの原則)

SAFeは、上述したLean-Agile MindsetとCore Valuesに加え、10個の基本原則(SAFeの原則)を定義しています。いずれもSAFeのロールやプラクティスを導く知見であり、かつ、リーダーの振る舞いと意思決定の指針となるものです。これらの原則が守られていれば、「SAFeを正しく実践できている」と言えます。

少しかみ砕くと、以下のような内容が述べられています。

  1. 顧客が受ける経済的価値が最大化されるように意思決定を行う
  2. システム(バリューストリーム=顧客に価値が届くまでの価値の流れと、それに関わる全ての関係者)を捉え、ボトルネックを特定した上でそれを改善し、全体最適を目指す
  3. 時間経過に伴うビジネスニーズや技術トレンドの変化を前提に、これらに対応できるように常に複数の選択肢を事前に用意しておく(その場で考え出していては変化にすぐに対応できない)
  4. 段階的に機能を結合してソリューションを構築するなかで、顧客からのフィードバックに基づく学習の機会を繰り返し設け、技術やビジネスが含むリスクを早めに低減させる
  5. ビジネスオーナーやステークホルダーへの定期的なデモの実施とそれによる客観的な評価を通して、ビルドがきちんと成功し、要件定義や設計が正しいことを確認する
  6. 仕掛中(WIP:Work In Progress)のタスクの制限、作業の適度な細分化により、待ち行列の長さをコントロールすることで、メンバーの「待ち時間」を最小化し、「最短で持続可能なリードタイム」を実現する
  7. 開発期間の長さやデモなどのイベントの開催間隔をチーム間で揃え(Cadence)、かつ、それを同期(Synchronization)させることで、組織の成果に関する予測可能性の向上と、頻繁な成果物の統合を可能にする
  8. 開発者はナレッジワーカーであり、彼らのモチベーションと成果を最大化するには、「より高い報酬を与える」のではなく、「明確な目標と、各種判断に対する裁量を与える」ことが重要である
  9. 上位層が中央集権的に全てを判断するのではなく、チームや担当者が判断を下せるよう意思決定ルールを整備し、頻繁かつ即断が必要な意思決定を委譲することで、組織全体の意思決定の速度を最大化する
  10. 機能/役割別に分断した組織ではなく、組織が提供する価値を中心に考え、価値が迅速に提供できるように組織を編成する

* * *

今回は、SAFeの7つのコアコンピテンシーのなかでも特に重要なLean-Agile Leadershipを構成するLean-Agile Mindset、Core Values、SAFe Principlesについて紹介しました。それぞれの内容や重要性は理解できるものの、まだSAFe自体がどのようなものか見えてこず、モヤモヤしているかもしれません。次回からはさらに踏み込み、SAFeがどのようなプロセスフレームワークなのか、ロールやイベント、成果物に着目して紐解いていきます。

著者紹介


近藤陽介 (KONDOH Yohsuke) - NTTデータ システム技術本部 デジタル技術部
Agileプロフェッショナルセンタ

総合的な顧客体験・サービスの創出のための「方法論」、それに必要な技術・ツール・環境をすぐに利用できるようにする「クラウド基盤」、そして、それらを十分に活用するための「組織全体にわたる人財育成やプロセス改善のコンサルティング」を提供することでDXを支援するデジタル技術部に所属。

業務では、このうちの「コンサルティング」において、大規模アジャイルフレームワーク「Scaled Agile Framework(SAFe)」などを活用し、DXを実現しようとする企業が抱える課題を解決するためのアプローチを共に考え、お客様の組織/プロセスの変革を支援している。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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