旧日本長期信用銀行が2000年に再スタートするかたちで誕生した新生銀行。現在は26本支店、3出張所の拠点を持ち、日本における全く新しいタイプの金融サービスの展開に向けて取り組んでいる。

12月13日に都内で開催された「マイナビニュースフォーラム 2019 Winter for データ活用」では、新生銀行 常務執行役員 兼 株式会社アプラス 代表取締役社長 清水哲朗氏が登壇。「新生銀行が目指す『価値共創型ビジネス』とは」と題し、同社が取り組む金融機能のプラットフォーム化と価値共創に向けた事業戦略を解説した。

デジタル技術を活用した顧客コミュニケーションの強化

「『新生銀行』という名前は、姿勢、発想、行動のすべてにおいて、新しく生まれ変わろうという私たちの意志を表しています。また、日本における全く新しいタイプの金融サービスを目指す決意が込められています。常に新しいことにチャレンジしていかないと意味はない。そう自らを定義づけている金融機関です」

――登壇した清水氏は冒頭こう語り、”これまでにない銀行体験”を提供する同行の取り組みを紹介した。

例えば、新生銀行スタート当初から、スターバックスコーヒーと隣接した個人店舗の開設や「Color your Life」というコンセプトの下でキャッシュカードを32色から選べる施策など、他社に先駆けて顧客体験を向上させる取り組みを行ってきた。

「我々は、総資産10兆円のうち、半分強が銀行で残りがノンバンクという構成になっており、フルラインナップで金融サービスを提供できるユニークなポジションにある金融グループです。そのなかでの課題は、さまざまな金融機能をどのように世の中に提供していくか。自動化やロボットの活用も進んではいるものの、やはり重要なことは、人がもてなしたり、気にかけたりする『コミュニケーションのあり方』です」(清水氏)

新生銀行 常務執行役員 個人ビジネスユニット長 シニアオフィサー グループ事業戦略 兼 株式会社アプラス 代表取締役社長 清水哲朗氏

コミュニケーションを強化する上でポイントになるのがデジタル技術だ。

「SNSやメッセージングソフトが登場したことで、例えばマーケットの状況に合わせて複数のお客さまに対して大規模かつタイムリーにメッセージを届けることが可能になりました。また、店舗のない地域や窓口が時間外の場合でも、リモートチャネルやデバイスを通じたコミュニケーションが可能です。場所や時間を問わない『おもてなし』も実現できるようになりました」(清水氏)

新生銀行では、CRMツールなどを使って顧客情報を一元管理し、さまざまなタッチポイントを最適化して、ビジネスプロセスの改善や顧客とのつながりの強化に取り組んでいる。

例えば、マーケティングオートメーション(MA)施策の一環として、オンライン/オフラインを使い分けたフォローアップ施策を実施した。この施策では、サイト上で外貨関連ページを閲覧したもののアクションがないユーザーに対して、「直近の来店履歴があるユーザーには電話で」「履歴がないユーザーにはメール配信で」というようにフォローアップの方法を使い分けるなどしたところ、外貨預金デビュー者数が13%増加する結果に寄与したという。

また、コンタクトセンターでは音声認識ツールを活用している。通話内容を画面上でテキスト化することで、スタッフの業務負荷を軽減するとともに、お客さまの声を的確に把握して分析することで、お客さまの満足度向上につなげている。

さらに、投資信託の目論見書の電子化も実施した。店舗で投資信託を販売する際に、目論見書のURLをお客さまの携帯電話にSMSで送信し、電磁的方法で交付。お客さまが紙の目論見書を持ち帰る手間を省き、お客さまの満足度向上を図るとともに、店舗での目論見書の管理負担を減らしながら、ペーパーレス化によるコスト削減、誤交付の防止、お客さまの資料管理負担の軽減を実現した。