グーグルは11月19日、日本におけるスタートアップ支援の取り組みとしてコミュニティスペース「Google for Startups Campus」を渋谷ストリームに開設した。スタートアップが招かれた同日のオープニングイベントには、来日した米Google CEO スンダー・ピチャイ氏が登壇したほか、来賓として高市早苗総務大臣も祝賀の言葉を述べた。

スンダー・ピチャイ氏が語る日本への思い

Googleは同社創業から3年目となる2001年、初の海外拠点として東京・渋谷にオフィスを構え、その後、港区六本木に移転。今回、Google for Startups Campusの開設と共に日本法人オフィスも渋谷ストリーム内に移転しており、Campusの1つ上のフロアに入居している。

イベント冒頭、登壇したグーグル日本法人 代表 ピーター・フィッツジェラルド氏は、「今日は特別な日です。日本法人を設立して18年になりますが、日本からは温かく迎えられてきました。渋谷に戻ってきたことを嬉しく思っています。私達はパートナーシップを結びながら、将来のためのデジタルスキルを構築していきます。今日はCampusの正式な開設となりますが、これは次のパートナーシップの第一歩でもあります」と挨拶。ピチャイ氏を招き入れた。

ピチャイ氏は、日本法人設立時を振り返り「日本の起業家とその事業の成功を支援することに、私たちは情熱を持っています。なぜならば、それほど遠くはない昔、Googleもまたスタートアップだったからです。2001年、まさにスタートアップだった私たちは、米国外で初となるオフィスを渋谷に構えました。Gmail、Chrome、Androidが登場するずっと以前に、Google Japanがあったのです」と語る。

米Google CEO スンダー・ピチャイ氏

それから18年が経過した今、グーグルはもはやスタートアップではなくなったが、その使命が「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」なのは変わらないという。

「変化したことを挙げるならば、使命をまっとうするためのアプローチでしょう。世界中の人々に、知識や健康、幸せ、そして成功をもたらすツールを提供するために、近年はすべての人にとって役立つGoogleを目指し、開発に注力してきました」(スンダー氏)

こうした方針により、同社では先を見据えたアプローチを展開している。例えば、来たる2020年、訪日外国人の増加が予想されることを視野に入れ、Googleマップに日本語で目的地や住所を読み上げる新機能を追加したほか、Googleアシスタントのビジネス向け通訳機能を現在開発中だ。

また、2020年以降においても「技術革新が牽引するレガシーを長きにわたって継承していくことも重要」だとし、「東京に新たに開設したGoogle for Startups Campusや、今春に発表した日本全国でデジタルスキルの獲得を支援するGrow with Googleプロジェクトが、その一端を担うことを期待しています」と思いを語る。

ここでピチャイ氏から、Google.orgが特定非営利活動法人「みんなのコード」へ新たな助成金として100万ドル(約1億円)を追加提供することが発表された。Googleは2018年からみんなのコードへの支援を通じ、小学校での情報科学教育の義務化に向け、数千人規模の教員養成プログラムを提供している。今回の助成金によって同プログラムを拡充し、中学校教員にも展開する。

「日本の若い力にとってインスピレーションとなる日本らしい精神や信頼、技術に対する愛着に加え、本日発表したさまざまな取り組みが、2020年から未来へと続くレガシーの一部となることを願っています」(ピチャイ氏)

スタートアップを対象とした3カ月集中プログラムを提供

Google for Startups Campusでは2020年2月から、AIや機械学習を活用するスタートアップ向けに3カ月集中型プログラム「Google for Startups Accelerator」を提供する。同プログラムでは、確固とした製品/サービスを擁するスタートアップを対象に、次の成長フェーズに備えるためのツールを提供するとしており、同日、プログラムに参加を希望する企業の募集も開始された。参加企業の発表は2020年2月中旬ごろ、プログラム期間は2月中旬から5月末を予定する。

Google for Startups グローバルディレクター アグニエシュカ・ヴィエニェク氏は「(海外実績として)Google for Startups Campusの参加メンバーの37%は女性。この割合を毎年上げていきたい。日本でも同じような役割を果たせるように努力していく」と意気込みを語った

同プログラムに参加するスタートアップは、参加期間中、Campus内のワークスペースおよびCampus内にある全施設を活用できるほか、Google社員によるメンター制度や技術活用/リーダーシップに関するトレーニングの受講、スタートアップコミュニティへの参画などが可能。これらの内容は海外6拠点(ロンドン、マドリード、サンパウロ、ソウル、テルアビブ、ワルシャワ)のGoogle for Startups Campusを訪れた際も同様に利用することができる。期間中、スタートアップの費用負担はない。

ワークスペース(写真左)と、集中用の個室(写真右)。どの国のCampusも、各ルーム名は「各国に根付いているものを」との考えで名付けられているという。日本は、「Somen」「Udon」といった食べ物の名前が並ぶ

プログラムの参加/選考基準は、「社会課題の解決を目的としていること」。最大12社が参加でき、「応募多数の場合は選考委員会を設け、グーグルが最もサポートできるスタートアップを考えていく」としている。

Google for Srartups Partnerships Manager マイケル・キム氏によれば、Google for Startups Campusはあくまでも「エコシステムの一環」であり、施設やメンター制度の提供、VCとの橋渡しは行うがグーグルがスタートアップへの直接的な資金援助を行うことはなく、また、Campusの運営から収益を得ることは考えていないという。