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クラウド時代の契約/SaaS調達はここが違う! ベンダーとの交渉の要点

[2019/09/06 08:00]冨永裕子 ブックマーク ブックマーク

契約交渉時には何を確認するべきか?

ここまでの足固めができたら、自信を持って契約交渉に臨めるはずだ。交渉のポイントを解説するにあたり、海老名氏は、その前提となる「マスターアグリーメント」について説明した。形式はオンプレミスの場合と大きくは変わらない。通常は、これとは別に契約当事者情報などをまとめたオーダーフォームや、セキュリティポリシーの詳細などをまとめた附属ドキュメント(SLAのような詳細なもの)を取り交わすという。

クラウド契約で取り交わされるドキュメント/出典:ガートナー(2019年8月)

最初に確認するべきことは、契約書テンプレートの有無と内容である。中堅以下ではテンプレートを持たないベンダーもいるが、交渉時は自社向けに適切なマスターアグリーメントを求めるところを出発点にするべきだと海老名氏は強調する。確認するべき項目を大まかに分類すると「スムーズな立ち上げ」「コスト最適化」品質確保/リスク最小化」に整理できるという。個別に調整するべき項目を順に見ていこう。

スムーズな立ち上げ

立ち上げでつまずくことが多いのが、「ライセンシーの範囲」「データセンターの場所」「ベンダーの責任の上限」「導入時に必要な契約」、既存ユーザーの場合の「ライセンスとサポートの移行」である。

海老名氏は、それぞれについて「資本比率に注意し、利用対象となりうる関連会社の定義を広めに取ること」「データセンターは国内を基本に、海外拠点の利用意向など条件が合えば海外も可」「直接損害に対する責任を基本に、支払額を全額取り戻せる条件を確認すること」「導入プロジェクトでのライセンス優遇を求めること」「既存ユーザー向けの優遇制度を活用すること」を勧めた。

コスト最適化

クラウドソフトウエアの魅力は価格弾力性にあるが、支払条件と契約期間に留意しなければ十分にメリットを得られない。インフラは使った分だけ支払う完全従量制が成り立つが、ビジネスアプリケーションの場合は、成果を出すためには一定期間の利用が前提になる。通常、短くて1年、通常は3~5年の契約期間が設定される。少なくとも自動更新は避け、契約更新時に都度協議をする余地を残しておきたい。

また、契約期間内に利用を増やしたい場合に備え、複数年契約でも年初の見直しができるようにしておきたい。さらに確認しておきたいのが、契約期間中にユーザー都合で解約できる条件である。本当に解約するかどうかはともかく、健全な緊張関係の下で利用できるようにしておきたいところだ。

品質確保/リスク最小化

クラウドになると、環境はベンダー持ちになるが。運用から完全に解放されるわけではない。「保守方針やSLAに影響力を持ちにくくなる分、保守計画とSLAを明確にかつ適切に合意することが求められる」と海老名氏は警告する。

例えば、「計画的メンテナンスは月に1度、月次レポートで作業結果の報告」「緊急ダウンは3カ月に1度まで、24時間以上前に通知」などを確認し、契約書に反映したい。SLAについては稼働率の目標値(99.5%にするケースが多い)を設定し、下回ると一定金額の払い戻しを求めるなどの条件を盛り込みたい。

* * *

ここまでの確認ができれば、業務遂行にクリティカルな問題は避けられるはずだ。契約交渉ではベンダーに「正しい質問をする」ことで、リスクを回避することもできるだろう。IT部門は「クラウドの契約だから交渉の余地がない」とあきらめるのではなく、事前準備と確認項目を整理し、個別交渉の場に臨める力をつける必要がある。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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