ビジネスシーンではプレゼンテーション(以下、プレゼン)を行う機会が何かと多い。そして、プレゼンの効果を大きく左右するのが、投影スライドだ。しかし、「気づいたら文字だらけのスライドになっていた」「時間を掛けて丁寧に作成したのに伝えたいことが伝わらなかった」……などという苦い経験を持っている人も少なくないのではないだろうか。

6月25日に開催された第120回 IT Search+スペシャルセミナーでは、”プレゼンの神様”とも称される圓窓 代表 澤円氏が登壇。『公開! 「澤流」スライド作成テクニック』と題し、実際にその場でスライド資料を作成して見せながら、作成のポイントについて解説した。

こんなスライドなら、プレゼンはいらない!?

冒頭で澤氏は、先日とある講演で見かけたという「文字だらけのスライド」を紹介。講義の内容を考えると仕方がない側面はあるとフォローしつつも、「(字が小さすぎて)後方の席の人はまったく読むことができません」と欠点を指摘する。

「さらに、これをプリントアウトして配っているために観客は下を向いてしまっていました。それではスライドを投影している意味も、講演者が前にいる意味もないというのが私の持論です。資料を渡してそれを読んでもらうのでよければ、プレゼンは必要ないのではないでしょうか?」

こう問題提起した澤氏は「行間や表情から講演者の伝えたいことを読み取れるのがプレゼンの良さ」だと説き、「文字だらけのスライドを朗読するだけのプレゼンからは卒業しましょう」と会場に呼びかけた。

圓窓 代表 澤円氏

澤氏によると、プレゼンは「ビジョン」「核」「実践テクニック」の3層構造から成り、スライド作成技術は「実践テクニック」の部分に含まれる。ただし、その重要度はプレゼン全体の2割程度でしかないという。澤氏は「いくらスライドを磨いても『ビジョン』と『核』が伴っていなければ2割のプレゼンにしかならない」と忠告しつつも、「8割の『ビジョン』と『核』を活かすために、スライド作成技術を磨いておく必要はある」とスライド作成の意義を説いた。

「キーワード」を頭に入れてアンテナを張るべし!

講演では、実際にPowerPointを使ってスライドを作る過程を披露しながら、作成のポイントについて具体的な解説が行われた。なお、今回作成するスライドのお題には「転職活動」が設定された。

澤氏がスライドを作る際には、まず初めにプレゼンに与えられた時間を基に大まかな枚数を決めるという。1枚のスライドあたり1分程度が目安で、例えば10~15分のプレゼンであれば10~15枚程度のスライドになるようにまとめていく。

澤氏曰く、「10~15分程度のプレゼン用スライドであれば1~2時間で作成自体は完了する」ものの、これはあくまでも作業時間にすぎない。一番重要なのは、実はスライドを作り始める前に行う「準備」だ。事前にさまざまな情報をインプットしておくことで、スライド作成にかかる作業時間を短縮することができるという。

「今日この場でスライドを作るにあたっては、事前に『転職活動』というキーワードを頭に入れてアンテナを張っていました。プレゼンをすることが決まったら、まずはそのテーマのキーワードとなる言葉を頭の中に入れて、世の中に存在する『キーワードに関するモノ』に気づけるようにしておくことが大切です」(澤氏)

つまり、「転職活動」を常に頭の片隅に置いておくことで、ビルに掲げられた看板や書店に並ぶ本のタイトルを目にしたり、TVを見たり、買い物に出かけたりといった日常的な行動のなかで、転職活動に関連しそうな情報を貯めていくことができるわけだ。

さらに「プレゼンで話すテーマを周囲に言いふらすといい」という。

「言いふらすことで、周りの人が自然と情報を教えてくれるようになり、インプットの質を高められます。こうした準備を行うことで、実際のスライド作成は頭の中にある構成をスライドに落とし込むだけの作業になるため、作業時間を短くすることができるのです」(澤氏)