RPAソリューションを提供するUiPathは1月30日、年次ユーザーカンファレンス「UiPathFoward Japan 2019」を開催した。同カンファレンスでは、RPAに関連するソリューションの展示に加え、さまざまな企業のRPA導入/活用事例を紹介する講演が行われた。

そのうちの1社が、損害保険ジャパン日本興亜(以下、損保ジャパン日本興亜)だ。同社では、RPA導入で得られる成果は時間削減ではなく、前向きな価値創造業務のための時間創出だと捉え、取り組みを進めているという。本稿では、損保ジャパン日本興亜 業務改革推進部 リーダーの齋藤隆史氏が登壇した講演「損保ジャパン日本興亜におけるRPA活用」から、同社がどのように業務改革を進めているかについてレポートする。

CoEとして業務改革推進部が挑んだRPA導入

損保ジャパン日本興亜がRPAを導入したのは、従来路線のビジネスから、デジタル変革や海外展開といった成長分野にシフトするためである。日々の事業運営をしていると気づきにくいため、ゼロベースで再考することで不要になったルールや習慣の断捨離を行い、”指示待ち”ではなく能動的に価値創造業務を遂行できるような企業文化の変革を試みたのだ。

齋藤氏が所属する業務改革推進部は、それまで社内に散在していた生産性向上を行う部門を集約してできた部門である。CoE(Center of Excellence)の役割を担うため、IT部門のほか、営業、保険金支払い、代理店出向者などの人材を集め、同部を中心に業務の棚卸しから改革に着手した。

損保ジャパン日本興亜 業務改革推進部 リーダーの齋藤隆史氏

その手順は、まず組織に存在する業務を可視化し、それぞれの業務にどれだけの時間と労力を割いているかを確認して中止するものを選択。スリム化した後、どこでどのようにRPAを使うかを検討するというものであった。

RPA導入は2017年6月のPoC(Proof of Concept)を経て、下期から展開を開始した。一般に、RPAツールにはサーバ管理型とPC稼働型の2つがある。通常、ロボットのガバナンスを重視しなくてはならない大企業は前者を選択することが多いが、導入のスピーディーさでは後者が優れる。損保ジャパン日本興亜は、そのどちらにも対応できることを評価し、「UiPath」を選択したという。2018年度の上期はPC稼働型で開発したが、下期は管理ツール「UiPath Orchestrator」を導入し、大規模開発を進めている。

同社の場合、ロボット開発自体は外部のベンダーに委託しており、業務改革推進部の役割は各部門から出された開発要望を精査し、開発マネジメントを行うことが中心となる。開発を内製化しないのは、職員のリテラシーの問題や教育負荷の懸念があったためだ。

また、やみくもにロボットを増やさないような工夫も凝らしている。例えば、ロボットを全国に配置するのではなく、業務を本社に集約させ、本社でロボットが実行するスキームを採用するといった具合だ。

大規模開発でぶつかる典型的な壁が、ルールやガバナンスである。一度ガチガチのルールを作ると開発後の改善に向けたモチベーションが低下するため、極力簡単にしたいところだが、緩すぎると逆に使われない。また、改修したいときにブラックボックス化しており、どこを直せばいいのかわからなくなる事態は回避しなければならない。

そこでルール策定にあたっては、知見を持つコンサルティングファームにサポートを得て行なった。ガバナンスについては、UiPath Orchestratorを使い、ロボットの所在の明確化とログの取得/分析を行うようにした。その体制構築では、UiPath導入の先輩企業に力を借りたという。