日本でなじみがあるIT見本市と言えば、1月に米国ラスベガスで開催する「CES(Consumer Electronics Show)」や6月に台湾(台北)で開催する「COMPUTEX」、10月に千葉・幕張メッセで開催する「CEATEC」だろう。CESは家電、COMPUTEXとCEATECはICTとコンピュータ全般に特化した見本市だ。ただし、最近のCESでは自動運転車やドローンなど、ICT全般を扱うようになっている。一方、CEATECでは全自動衣類折りたたみ機(laundroid)などが展示されるようになった。「家電」と「ICT」の垣根は取り払われつつあると言ってよいだろう。

GITEX Technology Week 2018の会場となった「Dubai World Trade Center」

そのような状況下、世界的に注目を集めているのが、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイで毎年開催される、中東・アフリカ・南アジア地域で最大のIT見本市「GITEX(GITEX Technology Week 2018)」だ。日本ではあまりなじみがないが、世界100カ国以上の国と地域から4,000超の企業や組織が出展する巨大な見本市で、今年で38回目を数える。今年の来場者は延べ20万人を超えた。

来場者の約半数は中東諸国の人が多い印象だった。来場者は延べ20万人を超えたという

今回、GITEX Technology Week 2018がテーマに掲げたのは、「Experience Future Urbanism(将来における都市型生活の体験)」である。ただし展示されていたのは、最先端の人工知能(AI)やブロックチェーン、5G(第5世代移動通信システム)、ロボティクス、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)をはじめ、IoT(Internet of Things)やコネクテッドデバイスなど、「ICTと名前がつくモノすべて」だ。たとえは悪いが、秋葉原の裏路地で売っているPCパーツから、数億円のスーパーコンピュータまでが一堂に会する様子をイメージしてもらうとわかりやすい。

また、GITEXで見どころの1つとなっているのが、ドバイ政府機関のパビリオンである。これは、保健省や環境省、警視庁/警察庁などが自分たちの取り組みを紹介するものだ。ドバイ政府は国家プロジェクトとして「スマートドバイイニシアティブ」を打ち出している。「世界で一番スマートなシティを目指す」をコンセプトに、持続可能な環境循環型社会の実現や交通網の整備、スマートシティを実現する取り組みだ。

ドバイ政府は独立した会場スペースを借り切って展示をしていた

こうした背景からドバイでは、さまざまな分野で最先端ICTを積極的に取り入れている。なかでもドバイの政府機関や関連する企業が熱い視線を注いでいるのが、世界中のスタートアップ企業だ。

GITEX期間中に同見本市内で開催される「GITEX Future Stars」は、世界中のスタートアップが出展するイベントである。「人工知能(AI)」「環境」「教育」「フィンテック」「宇宙技術」といったカテゴリに出展するベンチャーもいれば、UAEやサウジアラビア、レバノン、バーレーン、中国、韓国などは国単位でブースを構え、自国のベンチャーを後押しするケースもある。日本からは日本貿易振興機構(JETRO)が支援し、18のベンチャー企業がジャパンパビリオンにブースを構えた。

世界中のスタートアップが出展する「GITEX Future Stars」は、(ドバイ政府のパビリオンと比較し)手作り感満載だ