Google、Apple、Facebookなど、世界的なIT企業が割拠する米国・シリコンバレー。

テクノロジーの最先端を行くイメージがあるが、実は旧態依然としたままの業界もある。そのひとつが「住宅」だ。

米国の戸建住宅販売においては中古住宅が全体の約9割を占めている。日本と比べ長年に渡って使用される傾向があり、暖炉やパーティルームなどの使われない施設が依然として残されている。

新築住宅に目を向けても問題は多い。効率の悪い施工法や、代わり映えのしないデザインが横行。テクノロジーを組み込もうという業者は少ないという。完成まで2年程度かかるケースが珍しくなく、最先端でスタイリッシュのシリコンバレーのイメージからは程遠い。

こうした状況を変えようと、ソニーや楽天で新規事業の立ち上げなどに携わってきた本間 毅氏が現地でスタートアップ企業を立ち上げた。

その名も「HOMMA」。

同社は、先進的な現代のライフスタイルを家から創り出していくことをミッションに、建売住宅事業を展開する。

本稿では、本間氏にHOMMAの創業背景や今後の展望について話を伺った。

代わり映えのしない住宅業界にイノベーションを

2008年より米国・西海岸に在住する本間氏。電話がiPhoneへ、車がTeslaへと変化していく様を目の当たりにしながら、住宅に関しては100年前とほとんど状況が変わっていないことに気づいた。

人の住む場所にもイノベーションを起こすことができれば、未来を変えられるのでは——こうした思いから、それまでの経歴とは畑違いともいえる住宅業界での起業を決意する。

「確かに私の経歴は住宅とは関係ないものに見えるかもしれませんが、私の父方の祖父は建築家、母方は瓦の窯元ということもあり、私にとって建築は昔から身近な存在でした。自分が育ってきた環境と、ITのバックグラウンド、米国での生活があったことでHOMMAの起業に至ったのです。まさに”Connecting the dots”といえるでしょう」と本間氏は振り返る。

住宅の中でもHOMMAが着目したのは、建売住宅だ。米国の建売住宅の問題点として、在来工法・現場施工が中心で効率が悪く、仕上げの品質や納期にばらつきがあることが挙げられる。

また、短期的な利益が重視されているため、デザインやテクノロジーという面においてもイノベーティブな取り組みが行われづらい環境にある。

アメリカの建売住宅には、日本人が知りえない問題点が

HOMMAでは、既存の住宅デザインの概念にとらわれず、ユーザーエクスペリエンス(UX)を中心とした住宅のデザインを行っている。

「実際に米国で生活してみて、50-60年前に建設された家ではダイニングルームをほとんど使わないなど、現代のライフスタイルと間取りにギャップがあることがわかってきました。既存の住宅をもとに惰性でデザインするのではなく、UXをベースにデザインオリエンテッドな住宅を作ることを目指しています」(本間氏)

HOMMAではUXを重視したうえで、テクノロジーを融合した住宅を目指す

スマートホーム技術の導入を前提としている点も、HOMMAの住宅デザインの特長だ。

本間氏は「スマートホームは現状、アプリもデバイスもバラバラな状態で、一から設定するのは非常に面倒です。

そこでHOMMAでは、スマートホーム関連のデバイスを施工時にビルトインし、あらかじめアプリをインストールしておくことで、入居したらすぐにスマートホーム技術を利用できるような状態を実現します。

テクノロジーの導入を前提として作られた家はこれまでにありません。既存の住宅とは違う住みやすい家ができるはずです」と自信を見せる。

テクノロジーを住宅にビルトインし、スマートホーム技術などが生活に溶け込む設計に