スマートからコネクティッドへ! tsumugが目指す、鍵でつながる世界

【連載】

DMM.make AKIBAから生まれたスタートアップたち

【第8回】スマートからコネクティッドへ! tsumugが目指す、鍵でつながる世界

[2018/10/09 08:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

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コネクティッド・ロック「TiNK(ティンク)」シリーズの開発および、関連サービスを手掛けるtsumug。

2017年11月に第一弾となる「TiNK C」と「TiNK E」を発表し、販売パートナーであるアパマンショップホールディングスグループらとの連携のもと、賃貸物件への設置による内見業務の効率化などを進めている。将来的には宅配やホームセキュリティなど、付帯サービスへの拡張も視野に入れる。

tsumug 代表取締役社長の牧田 恵里氏によると、元交際相手に合鍵のコピーを作られて不法侵入されてしまった経験が、TiNKのアイディアの元になっているという。

tsumug 代表取締役社長の牧田 恵里氏

確かに、物理鍵ではいつ誰が鍵を開けたのかを確認する術がなく、牧田氏と同様の経験をしている人や不法侵入に気づいていないだけという人も、もしかするといるのかもしれない。

IoT技術で安全を可視化できるようなものを――そんな思いがきっかけとなり開発されたTiNK。牧田氏にその狙いや今後の展望について、お話を伺った。

「スマート」の先にある、「コネクティッド」な鍵へ

賃貸マンションや戸建の玄関のドアに設置するタイプのTiNK Cは、シリンダーに設置する室内機と室外に取り付けるリーダー機で構成されている。一般的なシリンダー交換のフローで設置でき、初期費用を通常のシリンダー交換の半分程度に抑えることができる。

TiNK C。左が外側、右が内側。シリンダーの交換で設置できる

解錠には、スマートフォンアプリのほか、テンキーや交通系ICカードなどが利用可能。アプリ上でキー利用の履歴を確認できるほか、キーシェアリング機能やゲストキー発行機能、自動で施錠するオートセキュリティ機能なども備えている。

LTE通信に対応しているため、自宅やオフィスなどのインターネット環境に依存せず、単体で通信できるのが特徴だ。

集合住宅の入口に設置できるTiNK E

不動産会社勤務の経験がある牧田氏。何かと”アナログ”な部分が多く残っている不動産業界だが、スマートロックを活用すれば、物件管理や内見の際の鍵の受け渡し作業をスムーズに行えるようにできるのではと考えた。

TiNKは法人向けのスマートロックとしては後発だが、その状況を逆手に取り、不動産管理会社への徹底的なヒアリングを行いながら開発を進めていったという。

ヒアリングから明らかになった課題は、物理鍵では内見などの際に受け渡しがしづらいことや、鍵の不正利用の検知ができないこと。インターネット環境によらず、単体でなるべく簡単に利用できるものが求められていることもわかった。

また、不動産業界で利用されているさまざまなシステムやサービスと連携したいという声も多くあったことから、APIベースのシステムを作ることで、宅配やホームセキュリティなど、他業界も含めたサービス連携がしやすい設計を目指した。

「鍵を戸締り用のモノとして利用するだけでなく、認証機能として用いることで、不在時の荷物の受け取りや、お年寄り・子どもの見守りなど、さまざまなサービスと連携できるのではないかと考えました。スマートロックとしては後発だからこそ、こうしたコンセプトで開発することに価値があると感じたのです」(牧田氏)

TiNKが”スマート”ロックではなく”コネクティッド”ロックと説明されているのは、こうした理由からだ。

スタートアップが直面する「量産の壁」を越えて

もともと孫 泰藏氏のスタートアップ投資企業で働いていた牧田氏は、投資側の立場としてプロトタイプの重要性を実感していた。ハードウェアスタートアップは特に、投資家や提携企業へ説明する際、モノをつくることができるかどうかが第一に問われる。

そこで牧田氏は、DMM.make AKIBAの技術スタッフなどに相談しながらプロトタイプの開発を進めていった。

牧田氏は「配線はぐちゃぐちゃ、ディスプレイはモックアップ、室外機の外装には雑貨のペン立てを利用しているような状況でしたが、スマートフォン経由で解錠できる機能は達成できていました。このプロトタイプを持って不動産管理会社にプレゼンして回ったからこそ、ビジネスの話をきちんと聞いてもらえたのだと思います」と振り返る。

しかし次に直面したのは、量産の壁だった。新しいモノづくりを量産段階まで手がけた経験のある人はスタートアップの世界には少なく、一般的に、経験や知見の不足による設計ミスや品質不良、納期遅延などが課題となる。

牧田氏自身も当初はプロトタイプと量産品の違いをきちんと理解しておらず、開発者から「鍵を作りたいんですか? それともオモチャを作りたいんですか?」と言われてしまったこともあるという。

さらに、量産の受託先企業を探すのにも大苦戦。工場周りをした際には、意思決定のスピード感にギャップがあったり、そもそも相手にされなかったりなど、途方に暮れてしまうこともあった。

こうしたなか、IoTベンチャー向けの量産支援を行うシャープのSHARP量産アクセラレーションプログラムを受け、シャープがもつ豊富な量産設計や品質確保のノウハウのもと、なんとか量産へとこぎつけることができた。

そして現在tsumugは、2021年までに100万世帯への設置とサービス提供を目指し、ビジネスを展開させている。

“スマート”の先にある、”コネクティッド”な鍵を通して世の中のさまざまなサービスとつながることで、安心・安全はもちろん、便利で豊かな世界を実現してくれることを期待したい。

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元交際相手に合鍵のコピーを作られて不法侵入されてしまった経験から、スマート鍵を開発するtsumug 代表取締役社長の牧田 恵里氏。IoT技術で安全を可視化する、そんな強い想いを原動力に製品化に取り組んでいる。

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