運転支援デバイスで交通事故を減らしたい - 人命を守る企業を目指すPyrenee

【連載】

DMM.make AKIBAから生まれたスタートアップたち

【第6回】運転支援デバイスで交通事故を減らしたい - 人命を守る企業を目指すPyrenee

[2018/09/11 08:30]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

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ソリューション

日本では年間4000人以上の人たちが命を落としている交通事故。世界全体でみると、交通事故の死者は約125万人にものぼる(世界保健機関:WHOによる2013年の調査結果)。

自動運転の実用化を目指し、世界各国で自動車メーカーをはじめとするさまざまな企業が技術開発にしのぎを削っていることはご存知だろう。レベル5の完全自動運転が導入されれば、交通事故件数の大幅削減につながることが予想されている。

しかし、道路上の多くの車が自動運転車になるような社会の実現には、少なくとも30年以上はかかるものと見られている。一方で人の命に関わる交通事故は、今すぐにでも解決しなければならない社会課題だ。

完全自動運転時代を待つ以外に、これを解決する方法はないのか――そんな危機意識から自動運転過渡期の交通事故を減らすべく、運転支援デバイス「Pyrenee Drive」を開発するのが、DMM.make AKIBAにオフィスを構えるベンチャー企業のPyreneeである。

Pyrenee CEOの三野龍太氏

本誌は同社CEOの三野 龍太氏にお話を伺った。

ドライバーをサポートすることで交通事故を減らす

Pyrenee Driveは、自動車のダッシュボードに装着して使用する運転支援デバイスで、内蔵のステレオカメラで走行状況を常にモニターし、歩行者や他の車と衝突する危険が発生した際には、ディスプレイ表示とアラート音でドライバーに危険を知らせ、事故回避を促すというもの。

人工知能(AI)による画像認識技術によって実現しており、2019年内の発売を目指して、開発が進められている。

開発中のPyrenee Drive。車載カメラによる撮影動画をPCで再生し、それを認識させたときの様子。デバイスは静止しているため、速度は0kmと表示されている

三野氏は「交通事故の大半は、ドライバーが危険に気付くのが遅れたために起きていると言われています。運転に100%集中していれば危険を察知することができるかもしれませんが、やはり私たち人間の能力だけでは、不注意をゼロにすることはできません。Pyrenee Driveによってそこをサポートしていければと考えています」と説明する。

シガーソケットから電源を取り、粘着ゲルで設置するだけで簡単に使用することができるため、車種を選ばないのがPyrenee Driveの特徴だ。

ナビゲーションやドライブレコーダー、音楽配信、ハンズフリー通話などの機能も内蔵している。

スマートフォンと連携し、ナビゲーションや音楽、音声通話などのアプリをディスプレイに表示可能。声でも操作できる

さらにPyrenee Driveでは、LTE常時接続でステレオカメラが取得した映像や各種データをクラウドにアップロードする仕組みになっており、これらのデータをAIに学習させることでさらに精度の高いプログラムへとブラッシュアップしていけるようにもなっている。

現在のシミュレーションの段階でもかなりの精度がでているというが、ユーザーのデータを利用することで、危険が近づいた際により早い段階で知らせることが可能になるというわけだ。

危険を検知した場合は、ディスプレイ表示とアラート音でドライバーに通知して事故回避を促す

人の命を守ることができるモノづくりを

モノづくりが好きで、もともと夫婦で雑貨メーカーを営んでいた三野氏。人生をかけられるようなモノづくりとは何かと考えたときに「人命を守ることができるモノをつくりたい」と思い至り、2016年にPyreneeを創業した。車載デバイスを選んだ理由について三野氏は、次のように語る。

「人命を守るという観点では、ヘルスケア製品なども考えられますが、交通事故はその一瞬さえ避けられれば、命を落とさなくて済みます。AIなどのテクノロジーを活用することで、最も多くの人命を守れるモノが作れると考えたんです」(三野氏)

現在は、CTOの水野 剛氏が画像認識や機械制御、AIなど技術面を統括しているが、初号機はDMM.make AKIBAの機材を利用し、三野氏自身で開発したという。

デバイス開発未経験の三野氏にとっては難しいチャレンジとなったが、「DMM.make AKIBAの入居者にはハードウェアの技術者が多く、わからないことがあった際に教えてもらえたり、詳しい人を紹介してもらえたりしました。近い分野で頑張っている人たちが多いのは、モチベーションアップにもつながりましたね」と振り返る。

そもそも水野氏との出会いも、DMM.make AKIBAの1周年記念パーティだったと明かす三野氏。現在のPyreneeを形成するうえで大きな影響を及ぼしている。

Pyrenee Driveの背面。人間の目の幅と同等距離にレンズを2台配置したステレオカメラを採用。側面のライトは、車外から見てPyrenee Driveを使っているとわかるよう、ブランディング目的で設置している

ユーザーへの直接販売形式をとる理由

Pyreneeは、ユーザーへの直接販売をメインとしたビジネス戦略をとる。まずは日本と米国において直営店とオンラインショップを展開していく予定だ。

利用料は、通信料も含めて月額4000円程度を想定。ユーザーの利用データを自動車メーカーなどに販売していくことで、この価格を下げていきたい考えだ。

自動車企業や販売代理店を通した販売を行わない理由として三野氏は、「自分たちで製品を提供していくことで、自分たちが正しいと思う世界観を実現していきたいためです。自社商品を自社店舗で販売するAppleや無印良品のようなスタイルが理想です」と語る。

今後は、音声アシスタント機能や自社開発のナビゲーションシステムの導入など、世界展開に向けた製品バージョンアップを行っていく予定だ。

さらに、人を守る製品を提供する企業として、子ども向けのウェアラブルデバイスなど車載デバイス以外の製品展開も考えているという。

会社名の由来である大型犬「グレートピレニーズ」は古くから、羊と羊飼いの家族をクマやオオカミなどから守る役目を担っていた。Pyreneeが今後、私たちや私たちの生活を守ってくれる存在になってくれることを期待したい。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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https://news.mynavi.jp/itsearch/2018/09/10/001_pyrenee.jpg
道路上の多くの車が自動運転車になるような社会の実現には、30年以上はかかると見られている。一方で人の命に関わる交通事故は、すぐにでも解決しなければならない社会課題だ。今解決すべき課題に立ち向かうべく、運転支援デバイス「Pyrenee Drive」を開発するのがPyreneeである。

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