技術としての成熟度は? ビジネス応用への可能性は?
ガートナーではブロックチェーンの技術としての成熟度をどう見ているのか。鈴木氏は2017年の世界市場におけるブロックチェーンテクノロジーのハイプサイクルを示した。
まず、基幹テクノロジーとしてのブロックチェーンは成熟度のピークを過ぎ、幻滅期に差しかかろうとしている。一口にブロックチェーンと言っても、Bitcoinから始まり基幹テクノロジーとしてのブロックチェーンを活用したテクノロジーにはさまざまなものがあるが、そのほとんどは黎明期にある。ただし、「ブロックチェーン」と聞いて、一般の人々が頭に浮かべるBitcoinは幻滅期の底にあり、分散型台帳がまさにピークを迎えようという位置にある。
比較的注目されている応用テクノロジーとして鈴木氏が紹介したのは、「スマートコントラクト」だ。これは、取引記録の連鎖のなかにプログラムを埋め込み、条件が合致したときの契約を自動実行するものである。ルールベースの仕組みを洗練させるためにAIを活用すれば、さらにビジネスの可能性が広がると期待されているが、現状はハイプの山をこれから登ろうとしている段階である。
鈴木氏は、ブロックチェーン自体がピークから落ち始めたと見るのではなく、ビジネスへの応用はこれからと見るべきだと語る。ビジネスでの応用には、分散型の仕組みを実現するブロックチェーンがあればいいわけではない。従来型のデータベースや分析エンジンの基盤として使う場合、ブロックチェーン自体が安全でも、上に載る機能のためのセキュリティやシステム全体の動きを監視するための管理ツールが必要になる。
ビジネス活用で大きな事例が出てきていないのは、ブロックチェーン自体の機能追加や連携拡充が進んでいるものの、未成熟な部分が残っているためだ。鈴木氏は、「今後は完成したアプリケーションやアプリケーション開発基盤が登場し、利用しやすくなる」と見解を示した。
日本のリーダーが知っておくべきこと
ブロックチェーンを活用し、「億単位のシステムを置き換えたい」「仲介者抜き、当事者間で自由な取引を行いたい」「ビジネスプラットフォームの構築に利用し、圧倒的な主導権を握りたい」「他市場への参入のツールとして活用し、飛躍的な成長を遂げたい」と、リーダー企業がブロックチェーンに寄せる期待は加熱している。だが、本当に使えるのかという点では、先に述べたようにテクノロジーは未熟であり、使う側のスキルも不足しているのが現状だ。さらには、「使いものにならない」「すぐに世界を変えることができる」など、極端な意見もまだ多い。
ブロックチェーンに懐疑的な人たちに対し、鈴木氏は「ブロックチェーンは危険だ」と主張する。その真に意味するところは、ブロックチェーンを利用するのは止めたほうがいいということではない。むしろその逆で、ブロックチェーンを放っておくこと自体に危険があるのだという。まずは、簡単な実証実験を進めるところからやってみて、理解を深めてほしいと提案し、鈴木氏は講演を終えた。
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