「AI×脳科学」がビジネスの課題解決にもたらすイノベーションとは?

[2018/03/30 08:00]山田井ユウキ ブックマーク ブックマーク

脳活動と現実世界を統合的に解析する「ニューロAI」

矢野氏に続いて登壇した西本氏は、脳内情報の解読についてさらに詳しい講演を行った。

情報通信研究機構(NICT) 脳情報通信融合研究センターの西本伸志氏

西本氏によると、「自然な体験とは複雑で多様、かつダイナミックなものである」とのこと。そんな”自然な体験”下における脳神経の活動を定量的に理解するため、西本氏はモデリングという手法でアプローチしている。

まず、「何かを体験したとき脳活動はどうなっているのか」をfMRIで計測する。計測結果だけを見ても脳に何が起きているのかはよくわからないが、この脳の反応こそが「暗号化された”脳の言葉”」であると西本氏は言う。

暗号の解読方法のカギを握るのが、脳の情報処理の仕組みだ。

大脳皮質での情報処理は階層的に行われる。例えば、初期視覚野では見た物の色や動きなどが認識され、続いて高次視覚野では物体が何なのか、そこから受けた印象などが認識される。

「どの段階でどんな処理が行われているのか」という情報と、実際の体験と脳の反応を突き合わせることで、脳のモデル化や脳内情報の解読ができると西本氏は考えている。

すでに、脳活動のデータから、その人の体験内容を映像として取り出す試みが行われており、一定の精度で成功を収めている。この技術がさらに進歩すれば、夢の内容を推定できる可能性もあるという。

では、この技術が実社会でどんな分野に応用できるのか。

大きな可能性を秘めている1つの例として、CMの効果測定がある。

例えば「ライトアップされた橋の写真」が眼の前にあったとして、それを見た人が何を思うかは人それぞれである。「ロマンチックで映画のワンシーンみたい」と感じる人もいれば、「まぶしすぎて、この橋を運転したら事故を起こしそうだな」と感じる人もいるだろう。こうした意見は「広告の意図がしっかり伝わっているのか」を分析するための貴重な情報となるが、実際に被験者を大量に集めて話を聞くのはコストがかかりすぎる。

そこで符号化モデルを使うのだ。CMの写真や映像から脳活動を予測し、見た人の脳に与える知覚内容を推定するのである。

西本氏が実際に試してみたところ、「本物の人が感じた内容」と「符号化モデルが予測した脳活動」にかなりの類似性が認められた。

すなわち、「CMを見た人が何を感じるのか」について、高精度に予測することが可能になったのである。

この技術がさらに進歩していけば、テレビCMなどの効果検証が簡単に行えるようになり、広告業界に大きなインパクトを与えられるだろう。

ニューロAIに期待されるマーケティング領域の課題解決

脳情報通信技術に期待が集まる背景には、マーケティング領域が抱える課題がある。

マーケティングで用いられるデータはアンケートなどで収集されることが多いが、それは顧客データの氷山の一角。実際には顧客自身も知覚していない無意識の感覚や言語で表出できない部分が大量にあり、それらは言語に頼らない方法でセンシングしなければ取り出せないのだ。

矢野氏によると、NTTデータではすでに動画広告評価ソリューションを実用化しており、広告の質的側面を定量化することによる業務プロセス変革に取り組んでいるという。

事例として紹介されたのはゲッティ イメージズ。

同社は毎年、その年に撮影された写真からセレクトした写真集を発表しているが、「Year in Focus 2017」では、2017年を代表する写真を「ニューロAI」が審査して選出した。ニューロAIとは、脳活動・人間情報と現実世界の商品・サービスの統合的な解析にAI(人工知能)を活用した技術だ。

このニューロAIにより、作品を見る人の脳活動を予測し、得られた情報(知覚解読結果)と、応募作品のメッセージに込めた思いやテーマを比較。近い意味合いを持つ作品を高く評価したという。

簡単に言えば、「写真家が写真に込めた思いが見る人にしっかり届いているかどうか」という、これまで曖昧だった部分がAIによってきっちり評価できるようになったわけだ。

もっとも、こうしたニューロAIはまだまだ発展途上。今後、さらに進歩するためには産学連携が重要になると矢野氏は強調する。

氏が未来社会に向けて目指すのは「より人間らしいAI」の実現だ。一人ひとりの違いを理解するAIが登場すれば、より個人・個性に応じたサービスや教育が実現するだろう。

そんな未来はもう、すぐそこまでやってきている。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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