ブロックチェーンで「奪われる仕事」と「価値が高まる仕事」は何か?

[2017/11/29 08:00]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

ブロックチェーンが持つディスラプターとしての側面

こうしたブロックチェーンの仕組みは、さまざまな仮想通貨を生み出した。仮想通貨はビットコイン型の仮想通貨に留まらず、メガバンクや中央銀行が発行する仮想通貨にも応用されようとしている。これが実現されれば、銀行預金を持つ必要がなくなり、銀行が消滅することすら考えられる。

また、証券や保険での応用も広がっている。証券取引そのものは高速だが、精算と決済には時間がかかっている。そこでブロックチェーンを応用して2~3日かかっている精算処理を数分に高速化することに期待が集まっているのだ。保険では、知り合い同士で行う「P2P保険」や、飛行機が遅れたときなど事故や障害を感知して即座に保険金を支払う「パラメトリック保険」が検討されている。ICOなど、仮想通貨を用いた資金調達にも期待が集まる。

「金融業界では、さまざまな目的のためにブロックチェーンが活用されています。ブロックチェーンは、今の金融のかたちを大きく変えようとしているのです。金融はもともと情報産業ですが、規制の強い産業でもあります。どんなことも、技術的に可能だからといってすぐに実現してきたわけではありません。それが大きく変わろうとしています。Fintechのなかでも、ブロックチェーンを用いるFintechは最も革新的だと言うことができます」(野口氏)

金融以外の分野での応用も進んでいる。シェアリングエコノミーにおいては、ブロックチェーンで仲介者の作業を自動化して、UberやAirbnbのような仲介者がいない仕組みを構築することが検討されている。また、予測市場では胴元がいない透明なシステムを構築する動きがあり、一部の市場では実際に行われているという。このほか、商品のサプライチェーンにブロックチェーンの仕組みを応用して商品の履歴を追跡して品質を向上したり、医療情報などの個人情報を管理したりする実証実験も行われている。

では、ブロックチェーンのこうした応用が進んだ結果、人々の働き方や組織のあり方はどう変化するのか。しばしば議論になるのは、自動化によって人々の職が奪われるのではないかということだ。今まで人がやっていた仕事を奪っていくと考えられる存在を「ディスラプター」などと呼んだりする。

「AIだけでなく、ブロックチェーンもディスラプターとしての側面を持っています。ただ、AIと違う側面もあります。AIは労働者が行っていた仕事をコンピュータが行うというものです。例えば、工場で機械を扱う仕事をロボットが行ったり、銀行の窓口で人間が行っていた仕事をロボットが代わりに行ったりします。これに対し、ブロックチェーンでは経営者がやっていた仕事をコンピュータが行うという側面を持っています。つまり、労働者だけでなく、管理者の仕事も奪われるということです」(野口氏)

こうした「労働者はいるが、管理者がいない仕組み」は、「DAO(Decentralized Autonomous Organization: 分散自立型組織)」と呼ばれる。

「経営者や管理者のなかには『いくらコンピュータが発達しても、われわれの仕事はなくならない』と考えている人もいるかもしれません。でもそうではありません。DAOは決して夢物語ではないのです。その片鱗はビットコインというかたちで既に存在しています。また、AIとブロックチェーンを組み合わせて、労働者も管理者もいない組織を作ることも可能だと考えられています」

例えば、AIを使った自動運転タクシーには運転者はいない。また、ライドシェアをブロックチェーンで自動化すればユーザーを仲介する管理者もいなくなる。労働者も経営者もいないタクシー会社ができるわけだ。

「われわれ人間の仕事は全て奪われる。すると、われわれはすることが何もなくなる。私はそうしたことは決してないと思っています。奪われない仕事はあります。奪われないどころか、AIやブロックチェーンによってかえって価値が高まる仕事があります。それがどんな仕事なのかは、簡単にはわかりません。今の段階ではっきり言えるのは、単なる右から左への情報の仲介役や、ルーティンワークは”破壊される”ということです」(野口氏)

例えば、ある個人経営のレストランがあったとする。オーナーはシェフとして働く一方、スタッフを雇ったり、仕入れや経理を行ったりと経営者としての仕事もある。ただ、経営者としての仕事の大部分はルーティンワークだ。したがって、仕入れ値の交渉までブロックチェーンで自動化できるようになる。さらに場合によっては、シェフとしての仕事もロボットでまかなえるようになるかもしれない。

「ただ、コンピュータが作る料理はいやだというお客さんは必ずいるわけです。私はあなたが作った料理を食べたいという。そうだとするとこの経営者は、管理者としてのルーチンワークを自動化し、本当に自分がやりたいシェフの仕事だけに専念すればいいのです」(野口氏)

通訳の仕事もそうだ。コンピュータでかなりのことができるようになった。ただ、全てAIになるわけではない。「雄弁なる通訳者」という言葉がある。1960年代に池田勇人首相とケネディ大統領(いずれも当時)が米国で会談したとき、当時通訳だった宮沢喜一は、池田勇人が発した数秒ほどの発言を10分間に渡る発言として通訳した。ケネディは「日本語はなんて効率的な言葉なんだ」と驚いたという。

「雄弁なる通訳者は、AIがいくら進化してもできないと思っています。当意即妙、何を話すかわからない池田氏の言葉を即座に受け止めて10分間話すことは、コンピュータにはできません。そういう仕事が、これから価値の高まっていく仕事だと思っています」(野口氏)

最後に、野口氏は「みなさんもぜひ、AIやブロックチェーンによって価値が高まる仕事を見いだしてほしいと思います」と呼びかけ、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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