昨今、LINEやFacebook、Messengerなどのチャットアプリは、電話やメールに代わる新たなコミュニケーション手段として、私たちの日常生活に浸透してきました。

最近では、そのチャットとAI(ボット)をつなげることで、業務の効率化をはかったり、新たな顧客接点を作り出したりする事例も増えているようです。

以下、ドリーム・アーツの伊勢川暁氏に、AIチャットボットとはなにか、ビジネスにどのように活用できるのか、そして具体的にどう実現するのか、実例を交えて解説していただきます。

AIチャットボット初心者でも既存のサービスを組み合わせることで、AIチャットボットを構築することは難しくありません。

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AIチャットボットとは?

「チャットボット」とは、チャットにメッセージを自動で投稿したり、人間の問いかけに応答したりするロボットを指します。なので、チャットボットとAIを組み合わせたものを「AIチャットボット」と言います。

AIチャットボットの例としては、マイクロソフトの女子高生AIの「りんな」が有名です。

Microsoft りんな

LINEで「りんな」を友達として追加して話しかけると、他愛もない雑談の相手をしてくれます。雑談そのものに意味はありませんが、雑談を通じて顧客接点を持続させたり、それを応用して顧客からの問合せに自動的に答えさせたりできるかもしれないというように、いろいろな期待を膨らませてくれます。

インターネット通販サービス「LOHACO」のお客様からのチャットでの問合せに対して、自動的に応答をする「マナミさん」も代表的なチャットボットです。

チャットボットによる24時間365日のスピーディーな対応と、人間のスタッフによる丁寧な対応を組み合わせて運用することで、顧客満足度の向上につなげています。「マナミさん」はお問い合わせの3分の1を対応しており、6.5人分の人件費削減に貢献しているそうです。

LOHACO マナミさん

ライフネット生命の「ラネットくん」は、チャットで保険の相談に乗ったり、自動見積りをしたりできるチャットボットです。こちらもAIと人間による対応を組み合わせています。特徴的なのが、一般的には営業マンがやっているような保険診断・簡易見積りを自動で即座に行う点です。ローコストで新たな顧客接点を追加することで、サービスの充実を図っています。

ライフネット生命 ラネットくん

社内の問合わせに回答するAIチャットボットをつくる

さて、ここからは実際にAIチャットボットを作って社内で運用した内容をご紹介します。

弊社は大企業向けのコミュニケーションツールを開発しており、自社でもそのツールを使っています。そして、自社製品に対する社内からのフィードバックや問い合わせは、対応のスピードを早めるため、自社で開発したビジネス向けチャットツール「知話輪(ちわわ)」を用いています。

今回は社内から上がった自社製品に対するフィードバックやお問い合わせに対して、自動で回答をするQ&Aボットを作成しました。

弊社は従業員数がそれほど多くないため、全て人手で回答をしてもそれほど工数はかかりませんが、従業員数が多い会社では、社内の問い合わせに回答をするだけでも、かなりの工数がかかります。また、人数が多いと重複したやりとりも増えて、それがノイズとなってさらに情報が探しにくくなることもあるでしょう。

そのような場合に、今回紹介するQ&Aボットのような仕組みが効果を発揮します。

学習データとシステム構成

チャットボットを作るといっても、全てゼロから作る必要はありません。多数のチャットボットを作るサービスがあり、目的に応じてそれらを組み合わせて使うことで、開発や運用のコストを減らすことができます。

まずは、全体像を把握しやすくするため、最終的なシステム構成を紹介します。

システム全体像