デジタルメディア協会は9月7日、「AMDシンポジウム2017」を開催した。テーマは「世界を席巻するe-Sports」。e-Sportsとは、コンピュータゲーム・ビデオゲームで対戦する競技のことで、世界ではスポーツの一種として認知されている。

シンポジウム第2部では、パネリストとしてGzブレイン 代表取締役社長 浜村弘一氏、eスポーツコミュニケーションズ 代表 筧誠一郎氏、プロeスポーツチーム DetonatioN Gaming CEO 梅崎伸幸氏が登壇。モデレーターは第1部に引き続き慶応義塾大学大学院 特別招聘教授の夏野剛氏が務め、日本におけるe-Sportsの将来についてディスカッションが繰り広げられた。

e-Sportsを盛り上げるヒントは「野球」にアリ!?

第2部のテーマは「国内e-Sportsの明日」。まずは浜村氏が登壇し、国内e-Sportsの構造について解説を行った。

Gzブレイン 代表取締役社長 浜村弘一氏

そもそもe-Sportsとは何なのか。なぜゲームはスポーツ足りうる存在になったのか。その歩みを浜村氏は野球の歴史に例えて説明した。

「かつて野球は地味なスポーツでした。注目され始めたのは、1927年にラジオ放送が始まった頃です。その後、TVが普及し、大相撲とプロレスと野球がキラーコンテンツになりました」(浜村氏)

プロ野球が現在のように人気を得て国民的スポーツにまで進化したのは、実は「ノンプレーヤー野球ファン」の存在が重要なのだと浜村氏は言う。

「プロ野球選手の下に、プロではないけれどプレーヤーとして野球をやっている人たちがいて、その下に草野球プレーヤーがいます。しかし、産業として大きくなるためには、”自分では野球をやらないけれど観戦はする『ノンプレーヤー野球ファン』が必要なのです。例えば、”カープ女子”などが該当します。彼ら・彼女らは、野球はしないけれど、産業にお金を落としてくれる存在なのです」(浜村氏)

これをゲームに置き換えてみよう。ヒエラルキーの頂点にはプロゲーマーがおり、その下にアマチュアゲーム競技プレーヤーがいる。さらに一般ゲームプレーヤーがいて、最後にゲームをしないけれど観戦はする「ノンゲームプレーヤー観戦者」の存在がある。例えば、ゲーム実況を見る人たちがそうだ。e-Sportsが産業として成長するために重要なのは、この「ノンゲームプレーヤー観戦者」なのだ。

「かつて、ゲームは1人で遊ぶものでした。しかし、インターネット上で試合がコンテンツとなり、たくさんの人が見るようになりました。動画サイトでのゲーム実況もコンテンツです」(浜村氏)

もっとも、日本の課題はそこからだ。日本には多数のゲームプレーヤーがいるが、なかなかプロゲーマーを育てるところまでいっていない。それは「(多額の)賞金付きの大会ができないから」だと浜村氏は指摘する。

「お金が稼げなければゲームに専念できず、食べていくことができません。これをクリアしないとe-Sportsは産業にできないでしょう」(浜村氏)

e-Sportsの普及に必要な2つの要素

続いて登壇したのは、eスポーツコミュニケーションズの代表、筧 誠一郎氏だ。日本eスポーツ協会(JeSPA)によって設立された同社は、e-Sportsを通じたコミュニケーション活性化をテーマに活動を行うイベント・事業のサポート企業だ。

eスポーツコミュニケーションズ 代表 筧誠一郎氏

筧氏はe-Sportsの国内普及に必要な要素として「e-Sportsという言葉の認知」と「e-Sportsが身近に感じられるための普及活動」の2点を挙げ、JeSPAと連携したコミュニティ大会の開催など、活動内容について報告した。

例えば、2017年には豊洲PITで第2回日本eスポーツ選手権大会を実施。800名の来場者と11万人以上の動画視聴者数を記録した。また、JeSPAでは定期的に日本学生eスポーツ選手権大会も開催しており、中学・高校でのe-Sports部の設立を目指しているという。

JeSPAは現在、全国に12の支部を設置して活動している。さらに東京ヴェルディをはじめ、スポーツチームがe-Sportsに関心を寄せてチームを持つ流れがやってきているという。

さまざまな団体による地道な活動の成果が、少しずつ花開いてきているのだ。