KDDIとWILLERは8月31日、高速バスでの移動中にVR(Virtual Reality)コンテンツを視聴できる新サービス「ライブバス VR」の提供を開始することを発表した。

WILEERが運営するライブ/イベント会場向け高速バス「ライブバス」の利用者に対して、ライブに出演予定のアーティストらが登場するオリジナルVRコンテンツを配信する。KDDIが出資するHMD(Head Mounted Display)「ハコスコ」も配布され、乗客は自身のスマートフォンを挿して移動中に視聴できる。

第一弾はDISH//の元旦ライブ

ライブバスVRの第一弾としてKDDIは、5人組ダンスロックバンド「DISH//」のメンバーが登場するオリジナルコンテンツを制作。2018年1月1日に日本武道館で開催する同バンドのライブに向けて大阪、名古屋、仙台を出発するWILLERのオフィシャルバスツアーにて提供する。

ライブバス VR第一弾に選ばれたDISH//

同ツアーで視聴できるVRコンテンツは4種類。DISH//のメンバー全員と一緒に会話している雰囲気を味わえる「雑談編」、メンバーの隣に座り1対1で親密な会話をしている雰囲気を味わえる「デート編」、メンバーから愛の告白を受けられる「告白編」、メンバーが後方から両手で目隠しして「だーれだ?」と問いかける「おまけ編」が用意される。

雑談編の様子 ※ HMDで視聴中のものをディスプレイに映している

使用時の様子 ※ HMDはライブバス1台に1つ用意される「ハコスコ DX2」

これらのコンテンツは、乗客が座るWILLERのバス車内で360度カメラを使って撮影。音声もバイノーラル音源として録音されている。「あえてバスのエンジンをかけた状況で撮影している」(KDDI ビジネスIoT企画部 部長 原田 圭悟氏)と言い、移動中の乗客の臨場感を高める工夫が施されている。

ライブバスがVRに適している理由

KDDI ビジネスIoT企画部 部長 原田 圭悟氏

VRコンテンツの制作/提供を担当するKDDI 原田氏は、ライブバス VRについて「VRの最適な活用シーン」との見解を示す。

「ライブバスでは、ゆっくり座って安全に視聴できるうえ、特定アーティストのファンという同じ趣味を持つ方々が周囲にいるため、一体感を醸成できます。移動中の隙間時間を活用するため、時間を気にせずにゆっくり視聴できるというのもメリットの一つでしょう」(原田氏)

KDDIのVR事業としては、スタンダードと提携して8月より提供を開始しているカラオケルーム向けVRサービス「KDDI カラオケVR」などがある。ライブバスVRは、そうした他のソリューションとの相互連携も視野に入れている。発表会では、ライブバス VRのコンテンツをカラオケVRで配信したり、カラオケVRのコンテンツをライブバス VRで提供したりといった案も紹介された。

なぜ、VRコンテンツ制作パートナーにKDDIを選んだのか

一方、ライブバスを運営するWILLERは、今回の新サービスについて、同社が以前から取り組む「新たな移動文化を創る」活動の一環と説明する。

WILLER 代表取締役 村瀨 茂高氏

「現在の移動ソリューションはいずれもプロダクトアウト。作り手側の理論に従ってできたものしかない。利用者はその中から選ばざるをえないため、移動に対して”面倒”、”時間がもったいない”というネガティブな印象を持つ方々がほとんど。WILLERでは、”移動のすべてを、あなたの思い通りにする”というコンセプトの下、顧客のインサイトを叶えるソリューションの開発に力を入れています。

自動翻訳、コンシェルジュサービス、GPSと連動した観光ガイド機能などを搭載した観光バスサービス『ベトナム ジェニック旅』などはその例の一つですが、今回のサービスも利用者の皆さんにより深く楽しんでもらえるものになるのはずです」(WILLER 代表取締役 村瀨 茂高氏)

また、数あるVRコンテンツ制作会社の中からKDDIを選んだ理由については、「KDDIさんとは、決済サービスをはじめとして、さまざまな取り組みを一緒に進めています。予約、決済、乗車までの一連のカスタマーエクペリエンスを一緒に考えていただけるパートナーという点が大きな理由です」と説明した。