7月26~28日に開催された「総務・人事・経理ワールド2017 HR EXPO」の特別講演では、HRテクノロジーの最新動向と経営をサポートする人事の取り組みがテーマに掲げられた。登壇したのは、慶應義塾大学 大学院経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏と、日本オラクルの執行役員 人事本部長 遠藤有紀子氏。本稿では、講演の模様をダイジェストでお届けする。

技術の進化で盛り上がるHRテクノロジーの「今」

HR(Human Resource)テクノロジーとは、企業が人事給与管理やタレントマネジメントを行うための技術やツールのこと。世界的に盛り上がりを見せており、日本国内でも労働人口の減少や有能な人材確保を目的に取組みが活発化している。岩本氏は「企業の成長をドライブするHRテクノロジーの最新動向」と題し、そうした市場の動向や、HRテクノロジーを活用することによって企業がどのようなメリットを得られるかなどについて紹介した。

慶應義塾大学 大学院経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏

岩本氏は日本モトローラやノキア・ジャパン、ドリームインキュベータなどを経て、2012年から現職を務める。産業プロデュース論を専門に、データサイエンスや人材マネジメント、政策、技術・経営戦略など、これまで23法人と受託・共同研究を行ってきた。

氏によれば、HRテクノロジーは1980年代からスタートアップを中心にツールが出始めたのだという。2000年代半ばから大手ベンダーがM&Aなどによって参入し、タレントマネジメントが盛り上がってきた。2010年代は、ビッグデータ分析、機械学習、ディープラーニング、AIなどの技術の進化で、百花繚乱の状況だ。

例えば、2012年ごろからSAPによるSuccessFactors買収や、OracleによるTaleo買収、IBMによるKenexa買収などと続き、その後も、SumTotal、bswift、HRsmartといった企業が資金を投じている。Workdayなどのスタートアップも急速にシェアを伸ばした。

「タレントマネジメントと財務会計を組み合わせた、HCM(Human Capital Management)の流れが進んでいます。HCMアプリケーションは1兆3,000億円のマーケットとなっており、その半分をSAP、ADP、Oracle、Workday、Kronos、Linkedinなどの大手10社が占めています。日本はまだ100~200億円程度の規模。グローバルの10分の1としても、まだまだ伸びしろがある状況です」(岩本氏)

国内では、2015年4月に「HRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC)」が設立され、翌年に「HRテクノロジーサミット」を開催、2017年には経産省とLeBACとで「HR-Solution Contest」を開催するなど、取り組みが進められてきた。

現在、働き方改革の第2フェーズとして日本政府が「人づくり革命」や「生産性向上」「柔軟かつ多様な働き方」を推進しているが、そうした動きのなかで、HRテクノロジーは企業のパラダイムシフトを促すものとして期待されている。

岩本氏は「経営における人材マネジメントの重要性が高まっていて、経営と人事の距離はますます近づいています。経営者にとっては、テクノロジーをいかにうまく使いこなすが企業成長の『肝』となります。また人事部は、HRテクノロジーを活用して企業の成長に貢献することが求められます」と強調した。