AIの「始め方」と「注意点」
現在、AIの市場ではさまざなテクノロジーが生まれている。そのため、企業担当者のなかにはIBM WatsonとGoogle TensorFlowを同列に論じるような混乱も生まれてしまっているという。AIを理解する上で重要になるのは、一般的なシステムのスタックと同じように、AIのスタックを捉えることだ。
つまり、ハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーション、ソリューション/SIがあったとき、AIハードウェア、AIエンジン、AIミドルウェア、AIアプリケーション、AIソリューションといったスタックで考える。例えば、Google TensorFlowは深層学習ライブラリであり、AIエンジンに含まれる。IBM WatsonはAIエンジンでありながら、クラウドAPIを提供するAIミドルウェアでもある。
もっとも、AIエンジンがOSである以上、OS導入がビジネスにつながらないのと同様に、AIエンジンがそのままビジネスに寄与するものではない。亦賀氏は「今は『何でもAIで』という発想になりがちです。しかし、AIで何ができるかを問うことは、OSで何ができるかを問うことと同じです。AIで儲かるのかを問うことは、OSで儲かるかを問うことと同じです」と、AI市場をスタックで考え、冷静に判断していくことの重要性を訴える。
こうした誤解を解いた上で、企業はAIにどう取り組んでいけばいいのか。亦賀氏は、現在から数年先までの適用領域とアプローチの検討例を図示し、いくつかの取り組みのヒントを示した。
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まずは、ノートPCやクラウド基盤などに深層学習ライブラリなどをインストールして自分で試してみることだ。実際に知識がないと、ベンダーやインテグレーターと会話が成立しないケースが増えてくる。ノートPCやクラウドでは物足りない場合は、25万円~300万円程度で機械学習向けのキットが入手できるので、そうしたものを検討する。
「まず自分たちで試行錯誤するというケースは、製造業を中心に増えてきています。わかりやすい目的を定め、わかりやすいアプローチで小さく始めてみることが大切です」(亦賀氏)
次に、AIの専門知識やテクノロジーを持った企業との付き合いを検討することだ。「日本ではベンチャーが育たない」と言われるが、この分野では非常に多くのベンチャー企業が生まれている。そのなかからスキルとセンスのある企業と戦略的な提携を進めるとよいだろう。ただし、その際には「人材の獲得競争が起こっていること」を意識する必要がある。
亦賀氏は「グローバル企業と対等な立場で協業するベンチャーも少なくありません。付き合い方を間違えると、ベンチャー側から協業を断られることにもなりかねません」と警鐘を鳴らす。
取り組みの際の注意点としては、「丸投げや無償PoC依頼を避ける」「事例作りに終わらない」「最初から完璧を求めない」「すぐに諦めない」「すぐに儲かるのか、できるのかと言わない」ことなどを挙げた。
最後に亦賀氏は「少なくとも1年は研究期間と割り切り、専任者をアサインします。また行き詰まったら、まず見える課題から解いていく『何とかならないか』というアプローチを採ります。AIを推進していくと、これまでのような業務にテクノロジーを合わせるスタイルから、ビジネスをテクノロジーでドライブするスタイルに変わっていきます。SFのような世界だと思っていたものが、サイエンスノンフィクション(SNF)として現実の物になるのです。AIをSNFへの第一歩と考え、中長期的な戦略を持って推進してください」と訴えた。
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