前編に続き、本稿では「新経済サミット 2017」で行われたパネルディスカッション「AIは未来をどう変えるか」の模様をお伝えする。後半では、具体的なAIの活用事例に加え、AI脅威論や、AI活用に求められる倫理観についての各識者の見解が語られた。
IBMが考える「AI」
現状のAIについて各人の見解が提示されたところで、話題は「ビジネスの視点から、AIがどのように役立つか」に移った。IBM ワトソン&クラウドプラットフォーム ジェネラル・マネジャー兼チーフ・レベニュー・オフィサーのジェイ・ベリシモ氏は、次のように語る。
「コグニティブという考え方は、『機械と人間のパートナーシップ』を意味しています。人間の専門知識を加速的に拡張するもので、さまざまな技術がありますが、技術よりも重要なのはデータです。Watsonはプログラミングされたシステムではなく、データを基に自ら学習する点に真髄があります」(ベリシモ氏)
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IBM ワトソン&クラウドプラットフォーム ジェネラル・マネジャー兼チーフ・レベニュー・オフィサーのジェイ・ベリシモ氏 |
氏によれば、Watsonのシステムは次の4つのピースが支えているという。
1. 理解すること:Watsonは大量のデータインプットを好む。何百万冊の本を数秒で読み、あたかも翻訳家のように本の内容を理解できる。テキストだけではなく、自然言語処理エンジンを活用した会話データの理解も日本では進んでいる。
2. 推論すること:データ同士の関係性を理解するもの。何百もの仮説を作り、それぞれの結論から最も信頼性が高いと考えられるものだけを提示する。すぐに正しい答えが出る時もあれば間違える時もある。間違えた場合は、機械学習のアルゴリズムが仮説検証作業を繰り返しながら学習し、最終的に正しい答えに導き出す。
3. 決して忘れないこと:Watsonは学べば学ぶほど賢くなり、学習したことを忘れない。Watsonは継続的な学習で正しい結論を出す。
4. 人間とのやり取りが必須であること:Watsonはプログラミングされていないので、人間との自然なやり取りがさまざまなソリューション提供に不可欠となる。
これらを踏まえ、ベリシモ氏はIBMが考えるAIについて言及。「IBMがAIと呼ぶ時の『A』は、『Artificial』ではなく『Augmented』のことです」と説明する。IBMにおけるAIは「人工知能」ではなく「拡張知能」のことであり、人間の専門知識を教師(プログラミング)なしで拡張するという観点から「AI」と呼んでいることになる。
では、IBMの言う拡張知能の活用事例にはどのようなものがあるのだろうか。ベリシモ氏は、豪州パースの石油・ガス会社Woodside Energyの事例を挙げて解説した。
「CEOに会った当初、Watsonがどう事業に貢献するかは未知数でした。約10のユースケースを提示し、採用されたのが『Lessons Learned』です。これは、熟練したエンジニアが持つ過去の経験や教訓を、新しく入社する若いエンジニアが活用できるようWatsonで支援するというものです」(ベリシモ氏)
従来、ナレッジの獲得と維持には膨大な費用がかかっていた。石油の掘削装置の開発でさまざまな知識が必要になったとき、「エンジニアがWatsonとやり取りを繰り返すと、過去30年間を振り返り、Watsonが数秒で膨大な情報を提供することができた」(ベリシモ氏)という。
この例には、試行錯誤を繰り返しながら能力を高めることができるWatsonの特徴がよく現れていると言えるだろう。
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