HPE Arubaは4月18日、世界20カ国を対象に実施したIoTに関する企業調査「IOT:企業における現在の採用状況と影響、将来展望」の結果について、記者説明会を開催した。

同調査は2016年11月~12月、世界20カ国で、従業員500名以上の企業・組織の経営層およびIT部門責任者3,100名(うち日本は150名)を対象に実施されたもの。インタビューはオンラインと電話によって行い、厳格な複数レベルのスクリーニングによって適切な候補者のみが回答機会を得られるようにしたという。

説明会には、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 エンタープライズグループ 事業統括 HPE Aruba事業統括本部 事業統括本部長 田中 泰光氏が登壇。調査結果を元に、企業から見たIoTへのイメージと現実のギャップや、実際の導入状況などについて、国内外を比較しながら解説がなされた。

※ 対象国は、英国、イタリア、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン、スウェーデン、ノルウェー、トルコ、UAE、サウジアラビア、米国、シンガポール、日本、オーストラリア、インド、ブラジル、メキシコ、中国、韓国。

国内外におけるIoTへの理解度と導入状況

まず、IoTの定義に該当すると思われる説明文を選択する設問(複数選択可)において、日本の回答者の選択率は、いずれの項目も世界平均より低いという結果が示された。特に、製造業で利用される産業用コンポーネント(機器やセンサーなど)をIoTだと認識している率が顕著に低い。

IoTの定義を問う設問の結果

一方、日本を含む他国と比べ、中国やインドでは各項目ともIoTだと認識している率がかなり高くなっており、「国民性が影響していることも考えられる」という。こうした結果から導き出された仮説は、「日本人が描いているIoTのイメージは、非常に限定的なのではないか」ということだ。

これを裏付けるかのように、一般的なIoTデバイス、またはテクノロジーであると思われるものを選択肢から選ぶ設問では、ビルディングシステム関連と車両を除くほぼ全ての選択肢について「これはIoTデバイスに相当する」と判断する人の割合が、世界平均と比較して10%近く低い傾向にあった。

IoTデバイス、またはテクノロジーを選択する設問の結果

田中氏は「日本のほうがむしろIoTに対する理解度などは進んでいると思っていたので、意外だった」という。顧客を訪問するたびに、IoTをベースにビジネスを広げたり、コスト削減に活用したりといった高度な活用について、多く耳にしてきたからだ。「こうした調査結果が出たのは、(日本ではむしろ)IoTをとらえるレベル感が高いためではないか」と見解を述べた。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 エンタープライズグループ 事業統括 HPE Aruba事業統括本部 事業統括本部長 田中 泰光氏

それでは、現在の導入状況についてはどうなのだろうか。

「あなたが所属している組織では、IoTテクノロジーを積極的に採用していますか?」という設問に対し、戦略の有無は別として「既に導入している」と回答した企業がグローバルで56%、アジア太平洋地域(オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)で60%であるのに対し、日本は46%に留まった。

国別の導入傾向

さらに、現在は未導入だが「1年以内に導入」「2年以内に導入」「2年後以降に導入」といった予定も含めた回答を集計し、2年後の導入状況を割り出したところ、日本は20カ国の中で最下位になるという結果となった。ただしこれには、先の調査結果にあったように、日本ではそもそもIoTだと認識している対象が少ないことも影響している可能性があるという。

関連して、「IoTを導入するにあたり、どの部署が一番恩恵を受けると思いますか?」という設問では、IoTの導入率が高い国では全ての部門に恩恵があると考えられているが、日本はどの部門においてもあまり恩恵があるとは考えられておらず、特にグローバルでは約8割が「恩恵を受ける」と考えられているIT部門でさえ、日本では52%と20カ国中最下位の結果を示した。

「どの部署にも恩恵はない」と回答した率も日本は高い