イノベーションを起こせ! スタートアップのために日本は何をなすべきか?

[2017/02/23 08:55]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

「成功」と「距離」の関係

では、どのようにすれば健全なエコシステムが構築できるのか。まず考えなければならないのは、環境だ。かつて米国のイノベーションはガレージから起こった。Disney、HP、Appleといった名だたる企業の創業の地はガレージだ。都会から離れ、情報からも遮断されていた。だが、今はイノベーションが起こる速度が増し、情報の共有が不可欠になっている。

「他人から学び、他人に教える環境のなかで情報を共有していくことが非常に重要になってきました。そうした環境のことを『イノベーションハブ』と呼びます。このハブのなかで、何をどう結びつけるのか。スタートアップには、お金(Money)とアイデア(Idea)、才能(Talent)の3つのリソースが必要です。この3つをイノベーションハブでコラボレーションさせるのです。覚えるのは簡単ですね。MITです(笑)」(ロウ氏)

ロウ氏は、「お金とアイデアと才能を持った人を1カ所に集め、協業させることで、大きなイノベーションは自然に発生する」と強調する。実際、協業によって大きな成果が生み出されることを裏付ける研究データも多いという。

「AT&Tのベル研究所で働く研究者に対して、研究者同士がどういう条件だったらお互いに協力して共同研究を行うかを調査した論文があります。それによると、自分の研究室と同じ通路に研究室がある場合のコラボレーションの割合は10%でした。しかし、同じフロアだった場合、1.9%しかコラボレーションしていませんでした。さらに違うフロアだったら0.3%、違う建物だったら0.4%にまで落ち込みました。つまり、研究者は物理的に近い距離にいれば協力しやすいということです。実に30倍もの差があります。重要なのは距離なのです」(ロウ氏)

研究者のコラボレーション頻度と距離の関係

たとえ、お金やアイデア、才能が揃っていても、それだけではイノベーションは起こせないという。ミートアップと称して週に1回集まるのではなく、同じ場所、同じフロア、できれば同じ通路内で同居するくらいの距離にいることが望ましいのだ。

この「距離の重要さ」を裏付ける別の研究データもある。「共同研究の著者がどこにオフィスを構えていたか」を調査したところ、ほぼ全ての研究論文が1km圏内で一緒に働く人たちによって執筆されていた。精査したところ、実に80%が50m以内に収まっていたという。

距離は、論文の引用回数とも相関関係が見られた。別の街にオフィスを構える研究者の論文を引用するケースは平均92件だった。これに対し、同じ街にオフィスを構える場合では111件に、さらに同じ建物にオフィスを構える場合は125件と、引用数が高かった。

「イノベーションハブに、人やアイデアを集中させることが大切です。これは決して珍しい考え方ではありません。歴史的に有名なケースは、電話を発明したグラハム・ベルと、電球を発明したトーマス・エジソンです。2人はボストン市コート通り109番にあった同じビルに仕事場がありました。ビルの1階には電報を打つ機械の部品を売っていた店が入居していて、2人は、そこの従業員をアルバイトに雇って特許文書を書かせました。イノベーションは決して偶然の産物ではないのです」(ロウ氏)

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