ビッグテータ解析の專門イベント「Big Data Analytics Tokyo」が2月7日、8日の2日間にわたり、東京都内で開催された。7日の基調講演には、スタートアップの「集積地」として知られるケンブリッジイノベーションセンター(CIC)の創業者兼CEO ティム・ロウ氏が登壇。「イノベーションエコシステムの構築:東京がケンブリッジから学べることとは?」と題し、イノベーションを起こすための「仕掛け」や、それを日本で具現化するためになすべきことについて解説を繰り広げた。

イノベーションエコシステムの「あるべき姿」

CICはマサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生でもあるロウ氏が1999年に設立した、世界最大のシェアードスペースだ。スタートアップ約700社がMITに隣接する敷地に入居し、同居するベンチャーキャピタルや各国の政府組織からの支援もスムーズに受けられる。Androidの共同創始者リッチ・マイナー氏など、CIC出身のアントレプレナーも数多い。

ケンブリッジイノベーションセンター 創業者兼CEO ティム・ロウ氏

「ビッグデータやAI(人工知能)、マシンラーニングがビジネスの世界に新しい変化の波をもたらしています。この波を引き起こしたのは、スタートアップによるイノベーションであり、イノベーションを支えるカギはエコシステムです。東京という都市、あるいは日本という国は、このイノベーションエコシステムをどう構築し、強化できるのでしょうか?」

ロウ氏は会場にこう問いかけ、どのようにイノベーションを定義し、イノベーションを起こす環境を構築していくかについて、「ヒント」を披露していった。氏はイノベーションを「アイデアからユーザーに至るまでプロセス」と定義する。そして、「新しいアイデアを世界にもたらすシステム」がイノベーションエコシステムだ。

「水上自動車はイノベーションではありません。アイデアは面白くても、普及していないからです。一方、日本が開発したハイブリッド自動車はイノベーションです。ガソリン消費を大幅に削減し、世界中で使われるようになったからです。イノベーションの最大のポイントは世界に有益かどうかです。世界中の病気治療に役立てられるDNA解析も、イノベーションの典型例だと言えます」(ロウ氏)

そうしたイノベーションの基点となるアイデアを世に送り出すイノベーションエコシステムは、経済活動とも大きな関係がある。森の生態系のなかで、大樹が朽ちて新芽が林として育っていくように、大企業の倒産の陰で新興企業が成長していくことが、エコシステムの本来の姿だ。

「米国では、300万人の新規雇用を設立5年未満のスタートアップが作り出しています。その一方で、設立5年以上の企業の倒産によって毎年1,000万人の雇用が失われています。数字上の雇用は減っているかもしれませんが、きわめて健全です。大きな森を作るには、大きな木が倒れ、新しい木が生まれることが大切なのです」(ロウ氏)