NTTデータは1月27日、同社と同社のスペイン子会社everis(エヴェリス)グループが、スペイン最大の病院であるヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院と集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)向け「スマートアラートソリューション」を開発。1月30日からヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院に導入し、実証実験を開始すると発表した。

同ソリューションは、重症患者の合併症発症を予測し、リスクスコアや診断に必要な情報を医師・看護師に提供するもの。発症前に情報を提供することで、医療介入の早期化を図る。

記者説明会では、NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ デバイス協調技術担当 部長の渡辺真太郎氏が登壇し、同ソリューション開発の背景や、狙いについて解説がなされた。

ICUが抱える課題

24時間体制で集中治療を行うICUでは、そもそも重篤患者を受け入れているため、一般病棟などと比べて合併症が発生するケースも多い。合併症のなかには致命的なものもあるが、いつ発症するかはわからないため、患者のバイタル(血圧や心拍数、白血球数など)をモニタリングして容態の急変に備えているのが実情だ。

日本では、国の主導で医療ビッグデータ活用の仕組みづくりが進められており、「医療・介護の質向上」「新しい医療技術・サービスの創出」が目論まれている。「こうした流れのなかで、NTTデータでは、診療ビッグデータを活用することにより、ICUの医師の診断を支援する取り組み『Smart ICU』を始めました」と渡辺氏は語る。

NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ デバイス協調技術担当 部長の渡辺真太郎氏

その目的は、「集中治療室に入った患者をいつ治療すればよいか」について、適切なタイミングで医師に通知することで、重症化を予防し、ICUからの早期退室を実現することだ。これを具現化すべく、医療デバイスから収集されたセンサーデータとAI(人工知能)技術を組み合わせ、合併症発症の「AI予測モデル」を開発。合併症の発症前に、医師にリスクを通知する「スマートアラート」を開発した。

AI予測モデルは、バイタルをはじめとする患者データをAIに学習させ、合併症発症者と非発症者の傾向の差をとらえたものだ。スマートアラートは、ICUの現場からリアルタイムで収集した患者データとAI予測モデルを基に発症リスクスコアを算出し、値が閾値を越えた場合、ベッドサイドのPCモニタや医師のモバイル端末にアラートを通知する。

スマートアラートのアプリ画面。心拍数や体温、血圧、呼吸数など直近4時間分のデータが表示される

リアルタイムで2時間後の値が予測算出され、閾値を超えるとアラートが通知される

発症前にケアすることで、「生存率の向上や入院の短期化、医療費の削減につながることが期待される」(渡辺氏)という。