「OTA」という言葉を聞いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。携帯電話の機能の一つで、無線ネットワークを経由した遠隔操作で、ソフトウェア更新や機能追加、設定を変更できます。この機能は、M2MやIoT機器においても実装されています。

OTA(Over The Air)とは

M2MやIoT機器を制御するソフトウェアは高機能で複雑な動作を実現するため、機器ごとにさまざまな設定項目が存在します。また、ソフトウェアの大容量化や多機能化にともなって、不具合(バグ)やセキュリティホールが発見されるケースも増大しています。

そこで、遠隔地に設置したIoT・M2M機器のソフトウェアを後から更新できるようにした仕組みがOTAです。OTAの読みは「オーティーエー」で、英語のOver The Airの頭文字が由来です。OTAが登場する前は、機器と設定変更用の設備をケーブルで接続し、直接機器を操作することで設定変更、ソフトウェアを更新することが一般的でした。

OTAによって、以下のようなメリットが生まれました。

  • 遠隔地に足を運んだり、機器を回収したりすることなくソフトウェアの更新が可能に
  • 設定ミスやソフトウェア不具合が発生しても、即座に修正が可能
  • ソフトウェアで実現できる新機能を一斉配信できる
  • 多数の機器のソフトウェアを同時に更新できる

具体的なOTAの利用シーンは?

携帯電話やスマートフォンでは、利便性向上やソフトウェア、アプリケーションの品質向上にOTAを利用してきました。

M2MやIoTとしてイメージしやすいのは「コネクテッド・カー」でしょう。近年、インターネット接続機能を持った車が登場しており、OTAを活用して機能拡張や新たなサービスの提供を行う事例が出てきています。

そもそも近年の車は、運転のために必要な機能の操舵、ブレーキ、アクセル、車両の状態を測定するセンサー、レーダー類などからさまざまなデータを取得しており、車両に搭載したコンピューターに集約して制御や車の状態確認を行っています。

高機能な車であれば、スイッチで操作可能な機能のすべてを収集・集約しており、その車載コンピューターは移動通信網を使用してネットワークに接続しています。

将来的には、自動車メーカーがソフトウェア制御によって変更可能な車両の各機能を組み合わせ、発売当時には存在しなかった新サービスや機能を追加することも考えられます。また、運転手のドライブ傾向を収集してドライビングをより楽しめる機能や、環境に適した車両制御(登り坂や凍結路における安定性強化など)を、OTAで提供したり、有償販売したりすることも考えられます。

著者プロフィール

上竹 勝彦(うえたけ・かつひこ)
ソフトバンク 法人事業統括 ICTイノベーション本部 モバイルES統括部 モバイルサービス部

携帯電話用のIPネットワーク構築、メールサービス実装、迷惑メール対策を経て、現在はモバイルの法人向けサービス「ソフトバンク 法人サービス M2Mソリューション」の開発を担当