セールスフォース・ドットコムが9月に発表した人工知能プラットフォーム「Salesforce Einstein(アインシュタイン)」。このプラットフォームでは、営業活動やカスタマーサポート、マーケティング、販売現場における予測分析、支援が可能となる。11月16日に記者向けに行われたデモンストレーションのようすをお伝えする。

ビジネス環境でもAIを

セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクター 御代 茂樹氏

デモンストレーションには、セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代 茂樹氏と同社CTOの及川喜之氏が登壇した。

冒頭、御代氏はAppleのSiriやAmazonの商品レコメンド、Facebookの写真タグ付け時の人物サジェスト機能を例に出し「すでにコンシューマーの世界にAIは使われている」と語る。一方で、エンタープライズアプリケーション領域では「企業にとってAIは複雑なもの」として、1つ1つの企業が自助努力で活用するにはまだまだハードルがあると説明する。

具体的には、「膨大なデータの用意」から「トレーニング」、正しい解を導き出す「モデリング」、分析するための「データサイエンティスト」「インフラストラクチャ」の用意、セキュリティ確保、そして「どういった用途に使うのか」という大命題など、「単純にAI使うと言っても色々出てくる」(御代氏)。

ただ、金融機関におけるカスタマーサポートではIBM Watsonの活用例が登場しているように、企業にとって身近な「次のステップ」としてAIが認知され始めた。そうした状況で、「すべてのユーザーが簡単にビジネスアプリケーションを使えるようにするのがセールスフォースの使命」(御代氏)であることから、AIのサービス提供に至ったという。なお、同社はAIを個別機能としてではなく、現在提供している「それぞれのアプリに組み込んで提供していく」(同)そうだ。

データサイエンティストの仕事が変わる

セールスフォース・ドットコム CTO 及川喜之氏

続いて登壇した及川氏も、EinsteinはAI群の総称であり「私達は、データを集めて、学びのモデル化を、CRMの1機能として提供してくのがストーリー」と語る。同社はBaaSも提供しており、ユーザー企業のプログラマーによる開発も可能。App Cloud Einsteinでは、Heroku Private SpacesのPredictionIOでマシンラーニングによるモデリングも行える。

及川氏は、このAIプラットフォームの登場によって「データサイエンティストの位置付けが変わった」と話す。これまでは、膨大なデータの中から特徴を見つけるまでが仕事だったが、これからはデータの特徴を見出した後、レコメンデーションや類似性を見つけられるAIのモデリングを行い、プログラムして、実際の機能に転換するという「表作りではなく、機能づくり」が必要になるそうだ。

同社は単なるCRMではなく、営業の見込み情報、商談、履歴、受注、問い合わせ、受け答え、メール送信というありとあらゆるリレーション情報を分析できる基盤を持つ。

「AIを適用するにふさわしいデータ群があり、セールスのため、営業の人間のためにどんなデータを与えられるのかが考えられる」(及川氏)

ただ、AIは適用範囲が広く、最終的にどんなアウトプットを求めるかによってモデルが異なると及川氏。「データサイエンティストへの依存を専門家に任せる形にして、アウトプットだけを提供するようにしたい。データの底の上にアインシュタインがある」(同)。