ソフトバンクはかねてより、超小型モビリティ分野の取り組みを進めている。2013年7月に香川県小豆郡土庄町の豊島で実証実験を行ったほか、2015年4月には、奈良県明日香村で「MICHIMO」と呼ばれる超小型モビリティレンタルサービス事業がスタートし、運営する明日香村地域振興公社のサポートを行っている。

同社がモビリティに関わる理由は、昨今のバズワードである”IoT”といった部分だけではない。この3月に豊島でスタートした電動二輪車のレンタルサービス「瀬戸内カレン」とMICHIMOの双方に、同社の電気計測ソリューション「ユビ電」が利用されているのだ。

MICHIMO

瀬戸内カレン

ユビ電は、超小型モビリティを充電スポットに接続すると、車載認証キーから認証IDをユビ電クラウドへ送信する。クラウド側で認証が正しいものと判断すると通電し、充電が可能となる仕組みだ。これは車などでの利用に限った話ではなく、スマートフォンなどにも応用でき、「電気を通信回線の利用料金と同じように、使った分だけ利用料金を支払えるようにできる」(ソフトバンク ITサービス開発本部 M2Mクラウド事業開発室 室長 山口 典男氏)ようにするものだという。

ソフトバンク ITサービス開発本部 M2Mクラウド事業開発室 室長 山口 典男氏

瀬戸内カレンの充電所と充電器。日本オラクルも参画しているため、バイクの横にOracleシールが貼られている

クラウドとの通信により接続したバイクが、ユビ電の認証が通ると通電する仕組み

ユビ電は、冒頭で触れた3年前の実証実験から始まったソリューションで、明日香村での商業利用を経て、再び豊島に戻ってきた。同島は、オリーブオイルの生産地として著名な小豆島に近く、島の中心に位置する檀山(標高339m)からは周囲の島を一望できる。電動二輪車のレンタルサービスは、豊島や小豆島などの瀬戸内海12島(季節限定の島含む)で108日間行われる「瀬戸内国際芸術祭2016」の開催に合わせたもの。自然豊かな瀬戸内海とアートを融合し、過疎化が進む地方であっても活力を取り戻せるようにと2010年に始まり、今年が3回目となる。

豊島は香川県高松市の高松港からフェリーで30分ほど

檀山からの風景

超小型モビリティを豊島や明日香村が必要とする理由は極めて単純で「観光の足に」というものだ。明日香村では、日産の「NISSAN New Mobility Concept」、豊島ではホンダの「EV-neo」を利用しており、どちらも超小型モビリティとして小回りが利く車両だ。諸外国に比べ、道路幅が狭い傾向にある日本においては、こうした車両が果たす役割は大きく、たとえ満足のいくスピードが出なくとも、1km先へのちょっとした移動に利用できる。

もちろん、都市圏であれば1km先へ行くには数分おきに到着する公共交通機関を利用すればいいが、豊島や明日香村ではそうやすやすと利用できるわけではない。ましてや、観光スポットは地域に点在しているため、「自転車で回るのも億劫」といったデメリットをなくす意味でも、超小型モビリティは必要な手段となる。

このレンタルサービスにはソフトバンクだけでなく、同社子会社のPSソリューションズや、日本オラクルも参加する。PSソリューションズは、モビリティの利用解析データを活用し将来的な連携サービスの創出を検討する。一方で日本オラクルは、同社のクラウドプラットフォームである「Oracle Internet of Things Cloud Service」「Database Cloud Service」「Oracle Java Cloud Service」を提供する。

オラクルのこれらのサービスはIoTに適したクラウドプラットフォームで、あまり大きな変更を加えることなく、「サービス設計から1週間もかからず、数日で環境構築できた」(同社担当者)とのことで、迅速にサービス立ち上げに臨めたという。この基盤では、車両の位置情報や充電状況を収集・分析でき、将来的には位置情報に則した利用者へのクーポンなどのレコメンドなどにも応用できるとしていた。

ブラウザでSaaSの管理コンソールを開き、現在位置を確認できる

利用者やバッテリー状態の管理、稼働状況の統計データまでオラクルのプラットフォームで統合管理できる

登録バイクの一覧。充電残量などを把握することで「バイクの現在位置から充電所まで戻れなくなる」といった予測も将来的に立てられるようになる

>>テストフェーズを超えたIoTの実用化に