イスラエル企業と日本企業をつなぐコンサルティングサービスを提供するジャコーレは1月18日、イスラエルの技術コンサルティング企業であるBavilon(バビロン)と提携したと発表した。これにより、両社は共同でテクノロジーの脆弱性調査やサイバーセキュリティ強化支援サービス、日本企業が海外のテクノロジー企業に投資する際のデューデリジェンスサービスなどの提供を開始する。

バビロンに所属するコンサルタントの多くはイスラエルの軍事サイバーセキュリティ部門「8200部隊(Unit 8200)」の卒業生であり、CEOを務めるTal Binder氏は同部隊のリクルーティングを担当してきた人物。ジャコーレは併せて、イスラエルに現地法人「JAKORE VENTURES」を設立したこと、2017年までイスラエルにて経済産業省 事務次官を務めたAmit Lang氏が外部顧問に就任したことも明らかにしている。

発表会では、イスラエルのハイテクスタートアップ事情と共に、日本企業がイスラエル企業に着目すべき理由について解説された。

なぜ今、イスラエルなのか?

かねてより、イスラエルのハイテクスタートアップは欧米からの注目を集めてきた。人口約860万人(2017年5月時点)の小国ながら、国を挙げて技術革新に取り組んでおり、年間約800社のスタートアップが誕生しているという。”第ニのシリコンバレー”と目される国の1つだ。

記者説明会に登壇したジャコーレ 代表取締役 CEO 平戸慎太郎氏は、「イスラエル企業が中国や日本を中心としたアジア進出に興味を持ち始めており、日本企業ではオープンイノベーションへの関心が高まる今、両者がつながるベストタイミング」だと説明する。

ジャコーレ 代表取締役 CEO 平戸慎太郎氏

既にいくつかの企業は動き始めており、日本からイスラエルへの直接投資は、3年前に比べて20倍(2017年5月 経済産業省)になっている。例えば、2014年には楽天がメッセージングサービスのViber(バイバー)を、2016年にはソニーがLTE通信向けモデムチップ技術を保有するAltair(アルティア)を買収し、2017年にはオリックスが地熱発電事業などを手掛けるOrmat Technologies(オーマットテクノロジーズ)を子会社化している。

イスラエルがハイテクスタートアップ大国として成長したのには相応の理由がある。前職では楽天にてViberの買収とPMI(Post Merger Integration)に携わり、イスラエルで経営にも参画した平戸氏は、3年間、現地に入り込んで活動した経験から「イスラエルの人は、発想力や突破力が飛び抜けている」と実感したという。

「移民国なので、(国民は)自立心が強い傾向にあります。また、いつ自国に危機が訪れるかわからないため、非常に速いスピード感で物事を考えます」(平戸氏)

ジャコーレ イスラエル支社代表 COO/CIOのヨニー・ゴラン氏も「国自体がいつ危機に陥るかわからないイスラエルの状況下では、人は起業することにあまりリスクを感じません。ストレスに強い、とも言えるでしょう。もし失敗したとしても、次に活かして成功させればそれは成功です。イスラエルではチャレンジが続かないことが失敗だと考えます」と説明する。

ジャコーレ イスラエル支社代表 COO/CIOのヨニー・ゴラン氏

天然資源を持たないことから、テクノロジーやノウハウ、知的財産に注力するに至ったというのは自然な流れだろう。敵対国に囲まれているため、軍事技術やサイバーセキュリティが発達し、それが民間にも転用されてきたことも技術発展の一因となっている。ビッグデータの扱いに長けており、集積したデータをどう活用・保護するか、ユーザー権限をどうするべきかといったインタフェース開発が得意で「コングロマリットに向いている」とは平戸氏の弁だ。

国の取り組みとしてハイテク人材を育てる教育も充実しており、エンジニアの社会的地位も高い。法務・税務面でもスタートアップに優しい制度が整備されており、GDPに対するR&Dの支出はトップクラスとなっている。

だが、良いことばかりというわけではない。