7月5日に都内で開催されたソラコム主催の年次イベント「SORACOM Conference “Discovery” 2017」。基調講演の後半では、「IoTで創出するビジネスイノベーション」と題し、金融業、製造業、流通業の各分野の企業からゲストスピーカーを招き、各社の取り組みを軸に、多岐にわたるIoT活用の現状と、その先の未来について議論が繰り広げられた。

各社が挑むイノベーションへの取り組み

ゲストスピーカーとして登壇したのは、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 江坂 忠晴氏とみずほフィナンシャルグループ 常務執行役員 デジタルイノベーション担当役員 山田 大介氏、ローソン 理事執行役員 マーケティング本部 本部長代行 兼 商品本部副本部長 野辺 一也氏が登壇。アナウンサーの膳場貴子氏が司会を務め、ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏と共に進行役を担った。

まず最初に登壇した江坂氏が、コネクテッドソリューション社について簡単に紹介するところから始まった。同社は、パナソニックの社内カンパニーとして今年2017年4月1日に発足。主な事業として、アビオニクス、プロセスオートメーション、メディアエンタテインメント、モバイルソリューションなどを扱っており、パナソニックグループ全体のB2Bソリューション事業の中核を担う顧客密着型事業体制の構築を目指している。

「ビジネスのさまざまな現場にイノベーションを起こして社会に役立つよう、B2Bを中心に事業を展開しています。物流量の増加や社会の安心安全、人手不足など、多岐にわたる社会問題にどう向かい合うことができるのか、試行錯誤をしているところです」(江坂氏)

続いて壇に立った山田氏は、みずほフィナンシャルグループにおいて、新しい技術を活用して新たなイノベーションを起こす使命を担っている。

「特に銀行の場合、コンプライアンスなどの問題をクリアするために膨大な時間をかけねばならず、なかなか新しいビジネスモデルを創出することができません。ならば新しい企業を作ってしまおうと、シリコンバレーのベンチャーキャピタルとともに合弁会社を設立しました。これにより、完全なオープンイノベーションの方針で、どのような企業とでも新しいビジネスモデルを作る体制が整いました」と山田氏は強調した。

また、「メガバンクがベンチャーの役割を担う」という発想について同氏は「うまくいくはずです。優れた技術があっても、売り続けるのが難しいというベンチャー企業もあるでしょう。そこは我々が支援できる部分です」と説明する。

「自分はITについては素人同然ですが、我々がやろうとしていることは、FinTechの要素技術の開発ではありません。そこはシリコンバレーのベンチャー企業や、ソラコムなどにやってもらえればと期待しています。我々が目指しているのは、社会に眠るニーズを掘り起こし、そうしたニーズに応えるビジネスを起ち上げることなのです」(山田氏)

次にローソンの野辺氏は、マーケティング担当という立場から自社のユースケースを紹介した。

「一番大きなテーマは、次世代のコンビニがどうなるかです。オンラインショップであれば顧客の事前行動から購入して荷物が届くまでの全行程が見えていますが、我々の場合は『何を買ったか』しか見えていません。いよいよIoTベースのマーケティングを本気で考えないといけない時代が来たと強く感じています」(野辺氏)

そうしたなかローソンでは、物流トラックにセンサーを搭載し、運転状況の可視化を実現。配送品質の向上に貢献している。

「初期は動態管理の取り組みでしたが、センサーの活用の幅を広げることでさまざまな可能性が出てきています。今では、動くものは全てIoTデバイスになると考えています」と野辺氏は展望を語った。