Aruba, a Hewlett Packard Enterprise company(HPE Aruba)は5月19日、英エコノミスト誌調査部門が実施したグローバル調査「職場におけるモビリティ環境と生産性」の調査結果を発表した。同調査は今年3月、世界9カ国(米国、英国、ドイツ、フランス、UAE、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、日本)の18歳以上のフルタイム労働者1,865名を対象に行われたもので、うち日本から回答したのは237名となっている。記者説明会では、米HPE Aruba マーケティング担当バイスプレジデント クリス・コザップ氏が、調査結果の重要部分について解説するとともに、関連する同社のイノベーションを紹介した。

生産性の向上に日本は「同僚とのコラボレーション」を重視

「今回の調査の目的は、#GenMobile(ジェネレーションモバイル)と呼ばれる新たなモバイル世代の価値を明らかにするため、モバイル技術への投資や従業員エンゲージメントと、企業の業績の関係性を実証することでした」とコザップ氏は説明する。

米HPE Aruba マーケティング担当バイスプレジデント クリス・コザップ氏

米HPE Aruba マーケティング担当バイスプレジデント クリス・コザップ氏

#GenMobileとは、モバイルテクノロジーに対して自らを「アーリーアダプター」と考えるグループのことで、仕事とプライベートの両面でモビリティを重視する傾向にある。HPE Arubaはこれまでに実施してきた調査で、職場における#GenMobileの台頭を報告しているが、その事実と業績との関係性までは明示できていなかった。今回、その数値化が図られたことになる。

調査では、自社をモバイルテクノロジーの活用に積極的だと考えている従業員の自己評価は、そうでない従業員に比べて、生産性が16%、創造性が18%、満足度が23%、忠誠心が21%高い結果となった。

「モビリティを高めることが生産性の向上につながるのは誰でもイメージできるでしょう。週に40時間働くとして、生産性が16%向上すると週に約6.4時間、年間で41日間分の業務時間を創出できることになります」(コザップ氏)

こうしたモビリティのメリットを享受するのは、若い世代に限らない。調査では、18歳から65歳までのすべての年代において、「モバイルテクノロジーによって生産性が向上する」と回答している。「CIOや情報システム部門は、年齢だけではなく行動にフォーカスし、#GenMobileが必要だと考えるサービスをとらえて生産性や創造性の向上につなげることが必要です」とコザップ氏は語る。

また、日本の職場のモビリティ環境の特徴も明らかにされている。「自分の生産性を決定づける最重要要因」を問う項目において、日本では30%以上の回答者が「同僚と効率的にコラボレーションできること」を選択しており、世界平均の21%を大きく引き離した。

この「同僚と効率的にコラボレーションできること」は、世界全体では「自分の創造性を決定づける最重要要因」として重視される傾向にある。しかし、日本では創造性の確立において「情報への迅速で容易なアクセス」や「いつでもどこでも業務できること」が重視されており、それぞれ回答の40%、36%を占める結果となった。

さらに、世界平均では「オフィス内のあらゆる場所でモバイル接続が可能なホットデスク(フリーアドレス)環境が提供されている」が46%に上るなか、日本は26%という結果となった。コザップ氏は、「モバイル大国である日本が、職場環境のモビリティにおいては海外に遅れをとっているのは意外でした」とコメントした。

ユーザーのニーズにこたえるために、必要なものは何か

10年ほど前には、利用するデバイスやサービスはすべてIT部門が管理するものだった。しかし、こうしたモビリティ環境に対する調査結果からもわかるように、ユーザーはより高い自由度を求めている。コザップ氏は、「わが社では、IT部門が本来実施すべきデバイスの管理やセキュリティの確保を行いつつ、柔軟性も実現できるソリューションを提供したいと考えました」と説明する。

モビリティというと、BYOD(Bring your own device)の実現やデバイスの自由な選択などが思い浮かぶ。しかし、「重要なのは、時間と場所を選ばずにコラボレーションできるアプリを提供できるかどうかや、モバイルから簡単にサービスにアクセスできるかといったこと」(コザップ氏)だという。

モバイルファーストを実現するには、どういった課題があるのだろうか。その1つとして、ネットワークのパフォーマンスをいかにして向上させるかというものが挙げられる。従来の固定回線に加え、モビリティを活用する際の新たなネットワークの運用性や信頼性についても勘案しなければならない。加えて、セキュリティやアプリケーションのパフォーマンスを確保するプラットフォームが必要になる。

その一例として、コザップ氏は同社が提供するネットワーク統合管理プラットフォーム「Aruba AirWave」を紹介した。同製品は、複数の事業拠点を横断し、有線・無線のマルチベンダーネットワークを一元管理するもの。ソフトウェアモジュール「Aruba Clarity」と連携することで、モバイル機器とWi-Fi無線との関連付けやRADIUSサーバへの認証などを監視し、接続上の問題が生じる前に予測して回避することができるという。

Aruba AirWaveのモニタリング機能

また、ポリシー管理やセキュリティの強化を実現するものとして統合認証プラットフォーム「ClearPass」を挙げ、「IoTデバイスやモバイル向けのセキュリティ機能を搭載し、マルチファクター認証にも対応しています」と説明した。