CX向上に欠かせない顧客インサイト、その価値とリスク、リーダーの役割

[2018/03/09 09:55]小池 晃臣 ブックマーク ブックマーク

差別化を生む顧客インサイトを得るための注目技術

今後、企業は競争力を高めるためにますますCXの向上が求められるようになる。川辺氏は、CXを構成する要素として次の5つを示した。

  • 従業員エンゲージメント
  • 品質(もの、デリバリーの双方)
  • 顧客満足度
  • ロイヤリティ、顧客維持
  • アドボカシー、ブランド評価

これらのうち、顧客満足度が高ければ顧客を嫌な気持ちにはさせていないわけだが、だからと言って必ずしもリピート購入するとは限らない。したがって、顧客満足度が高いだけではビジネスが成功しているとは言えないだろう。そこでロイヤリティを提供し、もう一度購入しようという気持ちを抱かせるために、顧客インサイトの活用が重要になる。

では、差別化を生む顧客インサイトを取得・活用する上で、注目すべき技術的進化はどこにあるのだろうか。

そのカギとなるのが、DMP(Data Management Platform)の進展によるマーケティング関連データ活用の高度化である。DMPと連携したCDP(Customer Data Platform)が登場したことで、DMP、パーソナライゼーション、キャンペーン管理、CRMを一元的かつリアルタイムにサポートすることが可能となった。これにより、チャネルをまたがる同一顧客の識別・追跡と理解といったカスタマージャーニーアナリティクスも実践できるようになっているのだ。

一方で、個人情報保護を推進するフレームワークも進化している。法的規制が強化されるなかにあって、例えばSASのソリューションのような、法令遵守に必要となる「管理」をサポートするツールも登場している。

「ただし、これはユーザー企業が気をつけていくべき話であって、必ずしもテクノロジーを必要とするものではありません」(川辺氏)

CXリーダーに求められること

講演の後半、川辺氏は「CXリーダーに求められるアクションとは何か」というテーマに言及した。CXリーダーには、多種多様かつ膨大なデータを管理できることが求められる。特に重要なのは、顧客ライフサイクル全体を見渡し、顧客インサイトが価値をもたらす箇所を特定することだ。

川辺氏は、「つながる時代では、従来の購入サイクルから所有サイクルまでの一貫性が必要になります」と説く。

顧客ライフサイクル全体の一貫性/出典:ガートナー(2018年2月)

購入に至るまでのサイクルで大切なのは、顧客に必要な情報を提供することだが、購入後の所有サイクルにおいても、顧客との関係を維持し、深めながら再購入へと導く一貫性のあるサイクルが価値を生みだすのである。

「製品を使いながら顧客の気持ちが変わるかもしれません。また、属性が類似している顧客が何をしているかも、インサイトとしては重要です」(川辺氏)

「価値」と「リスク」のバランスをどうとるか?

続いて川辺氏は「いちばん大事な話」と前置きした上で、法規制と自社のポリシーの適合性について持論を展開した。法的な規制が厳しくなっているが、合法と違法の境界というのはあまり明確ではない。一方で、自社のポリシーに関しては明確に決めることができる。ここで問題となるのが、法的に問題のない範囲と自社ポリシーとが重なっている分野というのは、無難ではあるもののインパクトに欠ける点である。

価値を念頭に確認すべき法規制と自社のポリシーの適合性/出典:ガートナー(2018年2月)

川辺氏は「そこで大事になるのが、ビジネス価値と適法性がせめぎ合う領域について、『リスクと価値のバランス』を考えることです。ここは、日本企業と欧米企業ではかなり考え方が異なります」と説明した上で、「ただ私自身は、差別化できるエクスペリエンスを提供できる顧客インサイトを、『リスクがあるから活用できない』というのはいかがなものかと思っています。もちろん、法的に問題あることをやりなさいというわけではありません。そこは、顧客からどれだけ信頼を得ているかを1つの目安にするのが有効ではないでしょうか」と主張した。

そうした信頼を勝ち取るには、数年はかかる。そのなかでたった1度でもミスがあれば全てが台無しになり、そしてもはや信頼を取り戻すことはできないだろう。となると、社外的にやるべきことと社内的にやるべきことが明らかになってくる。

社外的には、自社のプライバシーポリシーをわかりやすい表現で、見やすい場所に公開したり、報告された顧客情報の不正利用に対する改善状況を顧客が参照できるかたちで公表したりすることが求められる。

一方、社内的には、顧客インサイト利用の目的を明確にした管理体制を築くことがポイントとなる。例えば、システムで担当業務別に参照可能項目を変え、マーケティングキャンペーン担当者には氏名をハンドル名で見せたり、年代などを丸めたりといった具合だ。従業員への定期的な研修や、業務上、個人情報にアクセスする担当者に対する定常的な監視なども考えられる。

「大変かもしれないが、手がけておくことで将来的な差別化につながる」と川辺氏は見解を示した。

* * *

最後に川辺氏は、IT部門とのかかわりについてCXリーダーに向けて次のようなメッセージを送り、壇を後にした。

「CXリーダーには、顧客インサイトを活用する際の調整役となることが求められます。なかでも、テクノロジーの役割範囲が広がってきているため、特にCIOとの関係構築を重視するようにすべきでしょう。ただし、情報システムにも問題がある可能性があるので、アプリケーションで業務を支援するというマインドのある人材をIT部門に育ててもらうことで、よりコミュニケーションもスムーズになるのではないでしょうか」

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

もっと知りたい!こちらもオススメ

価格・品質に代わる差別化要素「CX(顧客体験)」について考える

価格・品質に代わる差別化要素「CX(顧客体験)」について考える

2月19日から20日に開催された「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス サミット 2018」の最後を締めくくったのは、「独自のカスタマー・エクスペリエンスを自ら推進せよ」と題した講演に登壇したガートナー ジャパン リサーチ ディレクター 川辺 謙介氏だ。講演では、イベントタイトルを昨年までの「カスタマー360」から「カスタマー・エクスペリエンス」に変えた…

関連リンク

この記事に興味を持ったら"いいね!"を Click
Facebook で IT Search+ の人気記事をお届けします
注目の特集/連載
[解説動画] Googleアナリティクス分析&活用講座 - Webサイト改善の正しい考え方
[解説動画] 個人の業務効率化術 - 短時間集中はこうして作る
ミッションステートメント
教えてカナコさん! これならわかるAI入門
AWSではじめる機械学習 ~サービスを知り、実装を学ぶ~
対話システムをつくろう! Python超入門
Kubernetes入門
SAFeでつくる「DXに強い組織」~企業の課題を解決する13のアプローチ~
PowerShell Core入門
AWSで作るマイクロサービス
マイナビニュース スペシャルセミナー 講演レポート/当日講演資料 まとめ
セキュリティアワード特設ページ

一覧はこちら

今注目のIT用語の意味を事典でチェック!

一覧はこちら

会員登録(無料)

ページの先頭に戻る