価格・品質に代わる差別化要素「CX(顧客体験)」について考える

[2018/03/07 10:00]冨永裕子 ブックマーク ブックマーク

CX向上を牽引するのは誰なのか?

では、CX向上に向けて会社全体をリードするのは誰なのか。

川辺氏は、CX責任者についてのグローバル調査結果を示した。CX責任者であるCCO(Chief Customer Officer)が、誰にレポートしているかを尋ねた結果が左のドーナツグラフだ。

CXリーダーの現状/出典:ガートナー(2018年2月)

「社長直下」とする回答が最も多い反面、「該当する役職者がいない」とする回答も多い。次に、CXの一次的な責任の所在を尋ねた結果(右の棒グラフ)を見ると、マーケティング、営業、顧客サービスなど、顧客接点にある部門がそれぞれに取り組んでおり、IT部門の関与は比較的少ないことがわかる。

一方、日本の調査結果では「CXを主体的に行う役員は誰か」という質問に対し、全体の56.8%が「該当する人物はいない」と回答し、「リーダーはいるが役員ではない」とする回答が14.8%とそれに続いた。日本企業の組織では営業が強く、CMOのいるところ自体がまだ少ない。川辺氏は、「新しい差別化要素であるCXを作るための牽引役を作らなければならない」と訴えた。

CXでビジネスを変革するためのリーダーの役割

B2B企業でもB2C企業と変わらず、CXは重要だと川辺氏は指摘する。1999年、パインとギルモアは著書『The Experience Economy(邦題:経験経済)』のなかで、第3次産業の次に来るのは「経験経済」であると主張した。顧客は体験を求めていて、自ら変わりたいと思っている。その手伝いをするのが企業の究極の目標だという。「当時から時代背景やテクノロジーは大きく変わったが、今こそリーダーがCXでビジネスを変革することが求められている」というのが川辺氏の見解だ。

「顧客分析に投資したい」という日本企業の方向性は正しい。だが、分析結果がわかればいいのか。「実行可能な顧客インサイトを提供し、優れた体験を提供し、ビジネスに変化をもたらすところまで見届けて、新しい顧客アナリティクスと言えるのではないか」と川辺氏は問題を提起する。

さらに、顧客満足度を高めれば成果につながると考えることは早計かもしれない。むしろ、自分が使っている製品やサービスを家族や友人に勧められるかという「アドボカシー」の視点を重視するべきなのだという。自発的に周囲の人を誘ってくれる顧客が多いほど、CXが良いものになり、その製品やサービスをより良いものにしていくことができるからだ。KPI(Key Performance Indicators)を設定し、定期的に監視しながら改善するプロセスは多くの部門が関与することになるだろう。

各部門の業務は各部門で完結させ、CXリーダーは踏み込まない。だが、CXリーダーは各部門の業務を阻害しないかたちで顧客視点に基づく新しい提案を行うことになる。組織横断的に各部門を支援するにはテクノロジーとの連携が重要だ。今までは保守的な情報システム部であったとしても、自社のシステムを顧客視点なものに変革するべく、これからはCXリーダーと協調することが求められる。CXOは業務の推進役ではなく、部門間の調整役としての役割が大事になると川辺氏は見ている。

企業戦略における「差別化」とは、自社独自のものであり、他社が容易にまねすることが困難な要素で優位性を築くことだ。川辺氏は、「新しい道を作らないといけない」と語り、道を作る過程で失敗があっても、失敗を教えてくれる顧客からのフィードバックを糧に変革に取り組んでほしいと訴え、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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