ユーザーが入力したデータをもとに画像やアバターなどが生成されるジェネレーターコンテンツ。Webキャンペーンなどでもよく用いられているが、一度作ったらそれで満足してしまった経験はないだろうか。

キリン デジタルマーケティング部 ブランドコミュニケーション主務 松岡 貴英氏

ジェネレーターコンテンツを継続的に楽しんでもらい、さらに商品の売上に直接繋げていくにはどうすればよいか――この課題に対する解決策は、「ソーシャルゲーム」の要素だった。

ドラゴンボール風のオリジナルキャラクターをジェネレートできるだけでなく、戦わせたり育てたりすることもできる特設サイト「WELCOME! DRAGONBALL WORLD!! 惑星メッツ最強決戦武道会」を開設し、同サイトを使ったキャンペーンを企画したキリン デジタルマーケティング部 ブランドコミュニケーション主務 松岡 貴英氏にお話を伺った。

メッツを飲むと戦闘力アップ! SNS拡散と購入を同時に促す

同施策は、キリンビバレッジとドラゴンボールがコラボレーションしたプレゼントキャンペーン「WELCOME! DRAGONBALL WORLD!! キャンペーン」の一環として行われたもの。

特設サイトでは、地球人、サイヤ人といったドラゴンボールに登場する種族や、性別、髪型などを選んでいくことで、オリジナルのドラゴンボール風キャラクターを作ることができる。

惑星メッツ最強決戦武道会のトップページ(スマートフォンサイト)

作成したキャラクターは、SNSでシェアしたり、商品についているシリアルナンバーを入力したり、友達とバトルしたりすることでレベルアップしていくというのがポイントだ。従来のジェネレーターコンテンツで主流だった「つくる・シェアする」要素に、「育てる・戦う」というゲーム的な要素を追加したことで、参加人数約35万人、SNSでの総インプレッション7250万を達成した。

キャラクターは細かくカスタマイズ可能。提供パーツが数百にも及ぶなど、ドラゴンボールの世界観に浸れる

キャラクター完成後の画面。SNSでのシェアやバトルができる。レベルは、シェアやバトル、シリアルコード入力などで上がっていく

また、SNSの拡散だけでなく、実際の商品(キリン メッツ グレープフルーツ)購入への導線を引いているのも今回のキャンペーンの大きな特徴だ。

「メッツ」のペットボトルに付属していた首かけPOPのシリアルコードを入力すると、オリジナルキャラクターのレベルが大幅にアップする仕組みで、商品購入への誘導を実現している。

メッツのペットボトルにシリアルコードがかけられていた

さらに店頭でのキャンペーンとして、ジェネレーターで作成したオリジナルキャラクターを3Dプリンタで印刷したフィギュアが抽選で50名に当たるというプレゼントキャンペーンも同時に展開した。

ユーザーが作成したキャラクターを3Dプリンタでフィギュア化してプレゼントした(フィギュア画像はサンプル)

もともとは、セールスプロモーションとデジタルマーケティングをうまく融合できないかという課題から始まったこのプロジェクト。

「商品を買うとオリジナルグッズが貰えるというインセンティブキャンペーンは、店頭での商品販売をお願いする営業担当がよく採用している企画ですが、これをデジタルマーケティングの視点でうまく活用してはどうかと考えました」と、松岡氏はアイディアのきっかけについて説明している。

清涼飲料には「ユーザーを楽しませる」ことも効果的

Twitterを中心としたSNSでの拡散により、最終的には35万ものオリジナルキャラクターがジェネレートされた。このうち、レベル最高となる「殿堂入り」となったキャラクターは500を超えている。

SNSでは「(このキャンペーンのために)メッツを箱買いした」といったような、キャンペーンサイトから実際に商品購入へ至ったことを報告する投稿もあったという。

松岡氏は「メッツはおもしろいキャンペーンが好きですし、一昨年のCMで採用したこともあり、ドラゴンボールとの相性は良いと言えます。ユーザーを楽しませてSNS上の拡散を狙ったという意味では、今回のキャンペーンは成功だった」と結果を評価している。

ビールやワインなど、清涼飲料に比べて高価格帯の商品では、デジタルマーケティングを通して商品購入を誘導するというよりは、商品ブランドのファンになってもらうことを重視しているというが、単価の低い清涼飲料は、ちょっとした拡散やエンタメが商品購入へのモチベーションに繋がりやすい。

デジタル施策での拡散も商談の場の武器になる

売り上げにつながったかどうかを直接計測するのは難しいというデジタル施策の課題を抱えながらも、実際の商談での可能性やブランドに注目をさせる意味でも、今回の施策の大きな成果のひとつだろう。

シリアルナンバー入力キャンペーン自体はそこまで目新しいものではないため、営業のアピールポイントには繋がらない。

しかし、今回の施策では「オンライン上で話題になっているので、店舗に商品を置いてもらえませんか?」とアピールすることで、交渉につながる事例もあったという。

セールスプロモーション施策とマーケティング施策の連動はキリン社内の課題の一つ。実際の店舗を持つ企業は、データ活用やオムニチャネル、売場での仕掛けなどさまざまな手を打ちやすいが、メーカーとしてこれらの施策を実施するのは難しい。

この課題に、飲料メーカーであるキリンビバレッジはマーケティングでどう挑んでいくのか。松岡氏は、「今後も、BtoCでありながら商談(BtoB)にも繋がるような施策を打っていきたい」と語った。

今回、メッツで試験的に実施したというこの施策。キリンとしては今後、ほかのブランドキャンペーンにも応用していきたい考えだ。