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ヤフーが明かす「検索データの可能性」 ー SoftBank World 2017

[2017/08/29 09:30]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

検索データに隠された人々の行動とは?

実際にヤフーでは、検索結果を解析することで「インフルエンザの流行の予測」や「選挙結果の予測」などを行っている。どんなキーワードが検索されているかを調べることで、インフルエンザや選挙といった、一見すると検索と関係のない事象の予測までできてしまうわけだ。

では、検索データはどのように実際のビジネスのなかで活用されているのか。天野氏はヤフーでの取り組み事例をいくつか紹介した。

まずは、購入検討開始のタイミングを知ることだ。一般に「いつその商品の購入を検討したか」を知りたい場合、リサーチなどでユーザーに直接聞くことが行われる。これに対し、検索データを使うと、ユーザーの実際の行動を抽出することができる。

「リサーチはユーザーの記憶に頼ります。記憶は想起する時点から作り上げられるものであり、過去の客観的な記録ではありません。実際、想起した購入検討開始と実際の行動が異なることがよく起こります」

例えば、自動車の購入アンケートで「購入の3カ月前に検討を開始した」層が最も多くても、実際に検索データを調べると、実は6カ月前から検討を開始していた層が最も多いといったズレが生じるケースがよくあるのだという。となると、購入を促すキャンペーンの実施時期も実際にはもっと前倒しすべきだったと判断が可能になるわけだ。

想起による購入検討時期と実際の行動にはズレがある。それを踏まえてキャンペーンを実施する必要がある

また、ブランドスイッチが起こるタイミングを知ることにも使える。例えば、タバコに対する検索数は40歳前後がピークとなる。検索数の多さが商品に対する需要の多さと考えると、40歳まではブランドスイッチが起こる可能性があると考えられる。しかし、質的変動係数という係数を使って分析してみると、実際には、25歳まででブランドが固定するのだという。この場合、商品のキャンペーンを幅広い年齢層にしかけるのではなく、若年層に絞ることが重要ということになる。

「本人の記憶に頼らずとも、検索でその記憶を記録するといったことができるようになっています。検索データを見ていくと、消費者の関心を把握し、商品開発に生かしていくことができるようになります」(同氏)

たとえば、プロモーション企画への活用が可能だ。ヤフーが行ったミニバンのバナー企画では、バナーをクリックしたユーザーがよく検索語として「オートキャンプ場」「キャンプ用品」が多いことを想定していた。実際、キャンプ関連は多かったのだが、それよりも多かったのは「釣り」だった。釣り情報サイトや釣具店などを同時に検索しており、ミニバンはキャンプに行くような家族連れをターゲットにするだけでなく、釣り好きにも訴えるプロモーションを行うことにつながったという。

また、サブカル女性向けの電子コミック販売では、従来のような年齢や居住地といった基本属性ではターゲティングができないため、特徴語による抽出を行ってマーケティングした。具体的には、ボーイズラブという単語やジャニーズのグループ名、漫画のタイトルなどを特徴語として、ターゲットを設定していったという。

「これらはペルソナと呼ばれるような理想の顧客像を使ってマーケティングする従来の方法とは異なります。従来のマーケティングでは、理想像から漏れた層を対象とすることが難しかったり、ステレオタイプ化するといった課題がありました。これに対し検索データを使ったマーケティングでは、顧客は属性の束でしかなく、統合的な人物像を想定しません。データベースの組み合わせから網羅的、非体系的に対象を決めていきます」

ペルソナを立ててマーケティングする従来の方法から、データベースの組み合わせを基に網羅的、非体系的に対象を決める新しい手法に変わっている

最近の検索データ活用の事例としては、販売数量の予測や、テレビCMのプランニング、マーケットシェア把握がある。

販売数量の予測というのは、新商品に関する検索を「商品期待度」として分析し、実際の販売数量を予測するものだ。現在は的中率77%という高い精度での予測を実現している。今後は、需要予測による生産調整や商品期待度をいかに上げるかといった施策につなげていくという。

また、テレビCMのプランニングというのは、テレビの実視聴とWeb行動データを統合したパネルデータ「Yahoo!メディアオーディエンスパネル」を構築し、テレビの視聴行動とWebの検索語からターゲットを特定して行動を把握するという試みだ。例えば、女性向けアパレルを検索する層がよく見ているテレビ番組や、カードローンを検索する層がよく見ているテレビ番組を調べ、その番組に対してCMを提供できるようにする。

テレビの実視聴とWeb行動データを統合したパネルデータ「Yahoo!メディアオーディエンスパネル」を構築

また、マーケットシェア把握というのは、「NBDモデル」という確率的数理モデルを応用して、検索語とクリック数を組み合わせてシェアを把握し、プロモーションに生かす取り組みだ。NBDモデルは、選択確率と購入回数を軸にして分析するもので、USJのCMOだった森岡毅氏らが著書『確率思考の戦略論』で触れているもの。これを検索に応用し、例えば、ECサイトの検索結果と商品購入、航空会社の検索結果とチケット購入などを継続的にモニタリングし、それぞれの企業の特色を踏まえたプロモーションを提案していくという。

最後に、天野氏は「繰り返しになりますが、検索データには人々の欲望パータンが言語化され、説明力があるものです。さまざまな活動に活用できる可能性があります」と訴え、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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