病院・医師のニーズを把握せよ! 地域医療マーケに「効く」ビッグデータ活用とは?

[2017/05/09 08:00]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

分析ツールで何ができるのか? - 3つの活用事例

こうした説明に続き、塩飽氏はWhytPlotの具体的な活用事例を3つ紹介した。1つ目は「乳がん領域に投資を行うべきかの判断」に活用したA病院のケースだ。まず、A病院の二次医療圏(医療の地域圏)における乳がん患者数の将来予測をツールで作成する。これは、人口データと疾患の年齢別の受療率から予測できるという。

次に、二次医療圏の乳がん患者の流出・流入数のグラフを見て、自身の医療圏でまかなわれているか、流出しているかを判断する。これは、次のようにグラフにすることで、A病院のある二次医療圏から乳がん患者が流出している様子がわかる。

二次医療圏間の乳がん患者の流出・流入数

さらに、WhytPlotでは近隣の病院を含めた乳がん患者数の推移も抽出することができる。次のグラフからは、近隣のB病院が実績を伸ばしており、地域の「チャンピオン」になろうとしていることが読み取れる。

二次医療圏内の乳がん患者数の推移

「B病院が1強体制になりつつあります。と言っても、乳がん患者は今後も増えることが見込まれます。こうした分析データをA病院に持っていき、乳がん領域への投資を提案するわけです」(塩飽氏)

2つ目の事例は、「肘・膝の外傷患者の獲得」に活用したC病院のケースだ。C病院の二次医療圏を分析すると、肘・膝の外傷患者は、東北部医療圏からの流出が増えていた。ただ、エリアを分析すると、立地的にはD病院から流出した患者を獲得しやすいことがわかった。

立地条件に着目し、患者の獲得について検討

さらに分析すると、患者数を減らしているE病院のエリアが医療空白地帯になっていた。そこで「この医療空白地帯を狙って、流出患者を取りにいきましょう」という提案をC病院に対して行うことにした。

「これまでのMRは、同じ医療圏の病院に公平に足を運ぶことが多かったと思います。しかし、こうしてデータを分析することでプライオリティを設け、各病院に適した提案を行うことができます。また、肘・膝の外傷患者は、入院時と退院時では異なる対応が必要です。外来の医師と関係を作り、それを他病院との連携に活用することもできるでしょう」(塩飽氏)

3つ目の事例は、呼吸器系疾患の患者について、転院先との後方連携を図ったケースだ。DPCデータからは、病院ごとの呼吸器系疾患の患者数の構成を知ることができる。これを平均在院日数のデータと組み合わせ、その結果から「在院日数が長期化している疾患は、回復期・慢性期の病院との連携を高めることで日数の短縮を図る」といった判断を行い、施策を打っていくわけだ。

「呼吸器疾患でも、がんとぜんそくでは治療は異なります。また、急性期・回復期・慢性期の違いもあります。もちろん、肘・膝の外傷患者とも違います。それぞれについてツールの使い方も変わりますし、異なる地域医療のあり方を作っていく必要があります」(塩飽氏)

塩飽氏は、実際にツールを利用したMRからの声として「施設実権者や診療科部長との面談機会が創出できる」「エリア内や院内の取り組み事例を教えてくれる」「とても感謝され、その場で支援依頼につながる」「地域医療支援室など、これまであまりかかわりがなかった各種関係者を紹介してもらえる」などを紹介した。具体的な数字としても、開始から5カ月で「関係性指標が平均1アップ」「アポ面談の回数が大幅アップ」「平均面談時間が3倍以上にアップ」といった成果が上がったという。

会場では、ツールで利用できる「三大経営指標」のグラフを表示するデモも行われた。三大経営指標とは、「新規入院患者数」「病床稼働率」「平均在院日数」のこと。縦軸に新規入院患者数を、横軸に平均在院日数を取り、各病院をプロット。それを病床稼働率のグラフと比較しながら、病院の経営状態や状態の推移をひとめで把握できるようにしたものだ。

このように、ビッグデータ活用のさまざまな可能性を示した塩飽氏は、最後に「患者の流れや近隣病院の動向などを伝えながら、病院や医師のニーズを把握していくと、最終的には地域全体の患者さんがハッピーになっていきます。病院がやるべきことを製薬企業が代わりにやるのではなく、活動そのものが地域を巻き込んだ取り組みだという意識が大切です」と訴え、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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