顧客目線に立ち、その行動や感情を時系列に並べて理解することで顧客体験を最適化するマーケティング手法に注目が集まっている。一方で、購買に至るまでの各フェーズでは最適化できていても、それぞれが局所的な取り組みに留まっている企業が多いのも事実だ。その原因はどこにあるのだろうか。

2月23日に開催された「Adobe Marketing Cloud Customer Experience Forum 2017」では、アドビ システムズ アドビ グローバルサービス統括本部 ソリューション コンサルティング本部 マーケティング クラウド テクノロジー部 ソリューション コンサルタント 石迫 龍司氏が登壇。カスタマージャーニーマッピングにおける課題と解決策が語られた。

カスタマージャーニーマッピングの「目的」と「課題」

石迫氏によると、カスタマージャーニーマッピングとは「商品やサービスを認知してから購買に至るまでを『旅』になぞらえ、顧客の行動・ふるまいをマッピングする手法」のこと。

その目的は3つあり、まず「顧客の振る舞いや態度、感情から真のニーズを考察すること」「事業課題などをあぶり出し、その解決指針について合意形成すること」、そして「ブレインストーミングを通していろいろなアイデアを出し合い、イノベーションを促進する環境を作ること」である。

このうち、特に重要なのは2番目で、真の目的だと言えるのは3番目だという。

「しかし……」と石迫氏は続ける。

「カスタマージャーニーマッピングを実践したことのある企業は少なくないと思いますが、特定の部門で閉じてしまっているケースが多いのです」(石迫氏)

アドビ システムズ アドビ グローバルサービス統括本部 ソリューション コンサルティング本部 マーケティング クラウド テクノロジー部 ソリューション コンサルタント 石迫 龍司氏

カスタマージャーニーマッピングに期待できる効果としては、購入単価の増加や購入頻度の向上、顧客定着、知人への推奨などがあるが、こうした効果を実感できていない企業が多いというのだ。これは、企業がカスタマージャーニーマッピングのマネジメントをうまくできていないからだという。

石迫氏によれば、その理由は2つの「分断」にある。1つは、「組織上の分断」だ。

「上層部と現場で情報を共有できていなかったり、営業と顧客が情報を共有できていなかったりするのは、『あるある』な問題です。こうした組織上の問題については、組織の仕組みを変えることで解決するという流れが出てきています」(石迫氏)

例えば、とある銀行では社内にカスタマージャーニー専門の部署を設けることで対処した。銀行には口座開設や入出金などさまざまな顧客体験(ジャーニー)があるが、それらを部署ごとに細切れにするのではなく、横断的にマネジメントする取り組みで成功しているのだという。

もう1つの理由は「データの分断」である。

石迫氏によると、カスタマージャーニーの最適化に必要なデータは3種類ある。サイトのPVや滞在時間、離脱率、コンバージョンといった「デジタルデータ」と、店舗データや外部メディアのデータ(地域の天気予報など)といった「オフラインのデータ」、そしてCRMやERPといった「企業が持つデータ」である。

カスタマージャーニーの最適化に必要な3種類のデータ

氏は、「これらのデータを、それぞれ別の部署で管理している現状にこそ問題がある」と指摘する。

「例えば、CRMデータはWeb部門が管理していて、マーケティング部門は利用できないといった状況が『データの分断』です。ただし、これはプラットフォームを利用することで解決できます」(石迫氏)