ガートナー ジャパンは2月21日、22日の2日間にわたり、「ガートナー カスタマー 360 サミット 2017」を開催した。2日目となる22日のスーパーセッションでは「ここがおかしい、日本企業のアプローチ」と題したディスカッションを実施。ガートナーのアナリストら4名が登壇し、日本におけるIT投資の現状と課題、海外から見たマーケティングや営業の特異さについて語られた。

世界から見た日本のビジネスの「変化」と「遅れ」

当日、登壇したのはガートナー ジャパン リサーチディレクターの川辺 謙介氏、米ガートナー バイスプレジデント兼最上級アナリストのマイケル・マオズ氏、同マネージング バイスプレジデントのジーン・アルバレス氏、英ガートナー バイスプレジデント兼最上級アナリスト エド・トンプソン氏である。

ガートナー ジャパン リサーチディレクターの川辺 謙介氏

日本を含め、日頃から海外を飛び回る彼らは、日本という国におけるビジネスのやり方についてどうとらえているのだろうか。

日本で30年間仕事をしているというマオズ氏は、「日本の文化は複雑で、最後にYESと言ったのが実はNOの意味だったりもする。でも、そうした印象は徐々に変わってきた」と語る。

具体的にはどのように変わってきたのか。2000年に初来日したというトンプソン氏は、17年前と現在では日本に3つの違いが出てきていると言う。

「当時は『飲みニケーション』が必須でしたが、今は強制されなくなりました。英語の標識も多くなり、よりフレンドリーになっています。17年前と比べて世代が変わったのかもしれません。ビジネス面ではまだ難しいところもありますが、国としては素晴らしいと思います」(トンプソン氏)

日本でビジネスをする難しさについては、1995年に初来日し、女性物の靴を日本で販売する事業を手がけていたアルバレス氏も次のように述べている。

「日本の顧客サービスの質は素晴らしく、海外ブランドは日本でたくさんの経験を積むことができました。ただ、課題となったのは言葉や文化です。日本で事業を立ち上げるのは大変でした」(アルバレス氏)

米ガートナー マネージング バイスプレジデントのジーン・アルバレス氏

彼らが語るように、最近になってビジネス面でのグローバル化が進んできた日本だが、海外と比較するとまだ遅れている点もある。

例えば、ITへの投資金額だ。

川辺氏によると、米国を100とした場合の日本のIT投資の割合は20%。日本が熱心に投資するのはインフラ系で、ハードとソフトとでは、ソフトへの投資が少ないのだという。比較対象として挙げられた英国と比べてもその傾向は顕著で、CRMやマーケティング、営業、デジタルコマースなどへのIT投資は約2倍以上の開きがある。

川辺氏は、「日本企業は、(マーケティングや営業など)顧客系の業務に関しては、テクノロジーに頼るよりも人手を介したほうがよいと考えています。また、安心・安全思考が強いため、インフラには投資するものの、顧客系まで十分に手が回っていません」と分析する。

日米英の違いはIT投資割合だけではない。技術や文化の面で日本と欧米には大きな隔たりがある。

トンプソン氏は「日本企業は、ロボットなどの領域においてはとても進んでいる」としながらも、「日本は現金主義ですが、英国にはもっと進んだスキームがあります。それにベンチャーキャピタルの資金調達領域でも、日本はまだ遅れています。ビジネスも紙ベースで、びっくりすることも少なくありません。日本はある領域では5年進んでいるが、別の領域では5年遅れているという状況です」と指摘した。