データを基に販売戦略を立て、SNSを活用してプロモーションを行うというのは、もはやどの業界においても当たり前のことになっている。しかし、本当に正しくデータを活用できているのか、あるいはSNSを効果的に運用できているのか、確信が持てない企業や担当者も多いのではないだろうか。

そんな企業にとって参考になる事例がある。データとSNSを巧みに活用し、ブランディングに成功している企業――スターバックス コーヒー ジャパンだ。

8月30日、31日の2日間にわたり開催された「プロモーション&クリエイティブフォーラム2016」。その2日目のセッションでは、スターバックス コーヒー ジャパン マーケティングコミュニケーション本部デジタル戦略部部長 長見明氏が登壇し、「データ&SNS時代のブランディング~スターバックスの場合」と題した講演を行った。本稿では、その内容をレポートする。

データ&SNS時代のブランディングを成功させる「4つのキーワード」

スターバックス コーヒー ジャパン マーケティングコミュニケーション本部デジタル戦略部部長 長見明氏

スターバックス コーヒー ジャパン マーケティングコミュニケーション本部デジタル戦略部部長 長見明氏

長見氏が所属するデジタル戦略部は、主にオウンドメディアやSNS、スターバックスカード、オンラインサービスなどを運用する部署である。それらのサービスを利用した顧客のデータを分析し、スターバックスのブランディングにつなげていくのがデジタル戦略部の役割というわけだ。

では、どんなデータをどのように活用しているのか。

まず、スターバックスカードにはオンライン入金やオートチャージなどの機能が備わっており、会員・非会員を問わず多くの顧客の購買履歴データが入っている。それらのデータとメールのログ(開封率やクリック率など)、アンケートデータ、会員マスタ、商品マスタなどを合わせて分析し、商品開発や店舗の売上分析などに生かしているという。

また、スターバックスではSNSの活用にも力を入れており、Twitterの公式ナビゲーションサービス「ツイナビ」の調査によれば、Twitterのフォロワーは約320万人と国内6位。ユーザーローカルのソーシャルメディア解析によると、Facebookのファン数も国内12位に位置するほどの人気となっている(いずれも2016年8月時点での数値)。当然、そこからはさまざまな顧客の生の声を拾うことができる。

こうして集まったデータがスターバックスにもたらしたものの1つが、「透明性」だ。

「5年前と今とでは、売れる商品と売れない商品の初日の売上額が大きく変わりました。5年前なら売れたとしても120%程度の売上額だったものが、今は200%ということもあります。また、以前であれば、『その商品がなぜ売れたのか』という理由については3カ月以上調査しないとわからなかったのですが、今はデータとSNSの活用により、誰が何を評価して買ってくださったのかがすぐにわかるようになりました。おかげで、結論を先延ばしにすることはできなくなったのです」と長見氏は苦笑する。

5年前にはわからなかった、あるいは想像で語るしかなかった「売れた理由と売れなかった理由」が、今はデータとSNS分析ですぐに判明する時代になった。これを長見氏は「透明性」と呼んでいるわけだ。

その上で、長見氏は「データ&SNS時代のブランディング」を成功させるキーワードを4つ挙げる。それは、先ほどの「透明性」に加え、「一貫性」「心からの言葉・やさしさ」「感動体験」だ。

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