今週は、Active Directoryで利用可能なグループについて解説しよう。グループそのものはローカルコンピュータでも設定できるが、Active Directoryには複数の種類のグループがあり、それぞれ機能的な違いがある点が異なる。

グループとは?

グループとは、複数のオブジェクトをまとめて取り扱うためのオブジェクトだ。もっともポピュラーな使い方は、複数のユーザーアカウントをグループに登録して、アクセス権の設定などのに利用するものだろう。もっとも、グループのメンバーとして登録できるのはユーザーアカウントだけではなく、コンピュータアカウントや、(後述するように制約があるが)グループのメンバとして別のグループを登録する、いわゆるグループの入れ子も行える。

共有資源などのアクセス権を設定する際には、個別のユーザーアカウントごとにアクセス権を設定するよりも、グループを対象にする方が効率が良い。設定対象となるユーザーアカウントの数が多くなると、ユーザーアカウントに対して直接設定する方法では煩雑になって、管理しにくいからだ。

グループに対してアクセス権を設定しておけば、グループのメンバに追加したユーザーアカウントは、グループに設定したアクセス権を継承する。逆に、アクセス権の設定を解除したいときには、対象となるユーザーアカウントをグループのメンバから削除するだけでよい。これは、「継承」と呼ばれるメカニズムによるもので、「グループに対して設定したアクセス権は、そのグループに所属するユーザーも継承する」という理由による。

Active Directoryで扱うグループの種類

ローカルコンピュータでもグループの設定は可能だが、グループといえば一種類しかない。それに対してActive Directoryの場合、グループの機能そのものが2種類あり、さらにそれが複数の種類に分かれている。

機能的な分類としては、以下の2種類がある。

・アクセス権の設定対象になるグループ
・Active Directoryに対応した電子メールソフトが、電子メールの配布先として利用するグループ

グループの大分類としては、セキュリティグループと配布グループがある。セキュリティグループはアクセス権の設定と電子メール配布の両方で利用できるが、配布グループは後者の、電子メール配布先でしか利用できない。したがって、グループを用いたアクセス権の制御を行うには、セキュリティグループを作成する必要がある。

グローバルグループ、ローカルグループ、ユニバーサルグループ

さらに、Active Directoryが取り扱うセキュリティグループは、複数の種類に分かれる。グループの種類と用途の違いは、以下のようになっている。

Active Directoryで扱うことができるセキュリティグループの種類

グループの種類 有効範囲 使用目的 所属可能なメンバ
ドメインローカルグループ ドメイン内のサーバ アクセス制御 フォレストのアカウント
ドメイングローバルグループ フォレスト全体 ユーザーの分類 自ドメインのアカウントのみ
ドメインユニバーサルグループ フォレスト全体 ユーザーの分類 フォレストのアカウント

個々のコンピュータが持つグループのことを「ローカルグループ」と呼ぶことがあるので、ドメインローカルグループとの区別が難しくなるかも知れない。他の種類も含めて、「ドメイン○○グループ」と呼ぶ方が混乱しないだろう。なお、個々のコンピュータが持つローカルグループのメンバにできるのは、そのコンピュータのローカルアカウントと、フォレストのアカウントだ。

なお、Active Directoryの機能レベルが混在モードになっているときには、ドメインユニバーサルグループは存在しない。機能レベルを上げると、ドメインユニバーサルグループの利用が可能になる。

グループの種類は変えられない

セキュリティ/配布の別、あるいは各種のセキュリティグループの種類は、グループを作成する際に指定する。後から種類を変更することはできないので、種類を変更するにはグループの再作成が必要になる。

グループに対する参照の制限

一般サーバやクライアントPCからは、アクセス権設定の対象としてドメイングローバルグループは参照できるが、ドメインローカルグループは参照できない。

そのため、一般サーバやクライアントPCでActive Directory上のグループをアクセス権制御に利用するときには、対応するドメイングローバルグループを用意する必要がある。それを逆手にとって、一般サーバから参照されたくないグループをドメインローカルグループにする方法も考えられる。

グループ同士の入れ子の制限

グループのメンバとして別のグループを指定する、いわゆるグループの入れ子は、グループの種類によって、行える場合と行えない場合がある。入れ子を行えるのは以下の場合のみだ。

ドメインユニバーサルグループのメンバ
・ドメイングローバルグループ
・ドメインローカルグループ
・ユーザーアカウント

ドメイングローバルグループのメンバ
ドメイングローバルグループ
ユーザーアカウント

ドメインローカルグループのメンバ
ドメイングローバルグループ
ドメインユニバーサルグループ
ユーザーアカウント

こうした制約を反映して、グループのプロパティ画面でメンバ、あるいは当該グループが所属するグループを追加する画面では、追加するメンバ、あるいは所属する先を選択する際に、実現可能なものしか表示しないようになっている。