前回はWSLで利用できるLinuxのデスクトップ環境として「Window Maker」を紹介した。Window Makerはウインドウマネージャと呼ばれる種類のソフトウエアで、GNOMEやKDEのような統合デスクトップ環境のように周辺のアプリケーションが揃っているわけではなく、ウインドウ環境として機能する基本的な機能のみを提供している。しかし、ドックアプリが豊富にあり、カスタマイズも豊富に用意されているなど、使い込むのに適したソフトウェアでもある。
今回はWindow Makerの基本的なカスタマイズの方法をかいつまんで紹介する。Window MakerのUI/UXは現在主流のWindowsやmacOS、Linuxと比べるとちょっとばかり概念が違うところがあるので、少しでも理解しておくと役立つだろう。
起動と保存
まず起動方法だが、VcXsrvをフルスクリーンモードなどで起動した後で、次のようにコマンドを実行することで起動する。毎回起動したいなら、このコマンドを~/.bashrcファイルの最後に追加しておけばよい。
export DISPLAY=localhost:0.0
wmaker
そして保存方法だが、メニューから「Session」→「Save Session」または「Session」→「Exit」を選択する。「Save Session」または「Exit」を選択することで登録したドックアプリに関連するデータの保存などが行われる。メニューはデスクトップの上で右クリックすると表示される。右ボタンを押し続けることで表示させながら操作することもできる。
この操作をしないでWindows 10を再起動したりすると、登録したドックアプリがWMClipにもWMDockにも登録されていない状況になる。この点については、後ほど詳しく説明する。
テーマ
最も簡単なカスタマイズはテーマを変えることだろう。メニューから「Appearance」→「Themes」と選択していくことでテーマを変更することができる。
テーマを変更するとダイナミックにUIが切り替わる。例えば次のスクリーンショットは、それぞれのテーマを変えた場合のWindow Makerの見た目の変化だ。
デフォルトのテーマを選択しておけばよいが、とりあえず一通りテーマを切り替えてみるとよいと思う。個別に細かく変更することもできるので、メニューをたどりながら変更してみてもよいだろう。
アプリケーションアイコンをショートカット登録
アプリケーションを起動すると、四角いアイコンがデスクトップの下に表示されるはずだ。これは左上、または右上の四角へ向かってズルズルと移動させると、そこに登録することができる。左上の四角はWMClip、右上の四角はWMDockと呼ばれるアプリなのだが、これに近づけると磁石のようにアプリアイコンが引き寄せられてくっつくようになる。
くっつけたアイコンはそのままそこに残るようになる。例えばこの状態でアプリケーションを終了しても、WMClipまたはWMDockにくっついたアイコンはそこに居続けてくれる。次回以降はこのアイコンをダブルクリックすることでアプリケーションを起動することができる。よく使うアプリケーションはこうしてアイコンを登録しておく。
WMClipとWMDockにはちょっとばかり違いがある。WMClipは上下左右に粘着してくれるが、WMDockは上下方向にしかアプリを粘着してくれない。
ドックアプリ登録と自動機能設定
ドックアプリの登録はアプリケーションアイコンの登録に似ている。ドックアプリを起動したら、それをWMClipまたはWMDockまで引きずっていってくっつければよい。
大切なのはこの後で、WMClipまたはWMDockにくっつけたら、ドックアプリのグレー色の部分を右クリックしてメニューから「Settings…」を選択し、設定ダイアログを起動する。これにより起動した設定ダイアログの「Start when Window Maker is started」を選択しておく。
この選択をしておくと、Window Maker起動時に自動的にドックアプリが起動するようになる。ドックアプリは常に起動しておいてほしいものなので、この設定は常に有効にしておく。
フォント設定
Window Makerの振る舞い自体はWPrefsというアプリケーションで実施する。このアプリケーションはWMDockのダブルクリックで起動するように設定しておくとよい。WPrefsを使うとさまざまな挙動を変更できるのだが、まず確実に設定しておいたほうがよいのはフォントの設定だ。
デフォルトの状態だと次のようにタイトルバーなどWindow Makerが管轄している部分で日本語フォントが設定されていないので日本語の部分が□で表示されてしまう。この場合の□は”豆腐”と呼ばれることが多い。
WPrefsにフォントの設定があるので、ここで日本語フォントを設定する。前回フォントとしてNotoフォントをインストールしてあるので、ここではNoto Sans CJK JPフォントを設定しておく。
すると、次のように日本語部分が表示されるようになる。
Notoフォントの名前は「Noto Tofu」から来ている。フォントが設定されていないために「□(豆腐)」で表示されるのを避けるという意味が込められたフォントで、まさに今回の例そのものがNotoフォントの目的そのものだ。
メニューカスタマイズ
メニューのカスタマイズも頻繁に行うことになるものだ。WPrefsからメニューの変更ができる。よく起動するアプリケーションはメニューに登録しておくとよい。
メニューはアプリケーションの起動にも使えるし、任意のコマンドを実行する目的でも利用できる。デフォルトのメニューは使わない項目や使えない項目も多々存在しているので、そういった項目は削除し、自分が使うものを随時追加していってもらえればと思う。
仮想ワークスペース
Window Makerには仮想ワークスペースの機能が備わっている。これはほとんどのウィンドウマネージャが備えている機能で、Windows 10でいうところの仮想デスクトップのことだ。仮想ワークスペースの機能はウィンドウマネージャの特徴的な機能の1つだ。
デフォルトでは仮想ワークスペースは1つしかない。メニューから「Workspaces」→「New」で新しく仮想ワークスペースを追加することができる。
WMClipには右上と左下に三角形のボタンがあるわけだが、これが仮想ワークスペースの切り替えになっている。または、Alt-1、Alt-2、Alt-3… のショートカットキーで仮想ワークスペースを切り替えることができる。
上記スクリーンショットをよく見てほしいのだが、WMClipにくっつけたドックアプリは仮想ワークスペースを切り替えると表示されなくなる。WMClipは仮想ワークスペースごとにドックアプリが登録される。一方、WMDockに登録したドックアプリやアプリケーションアイコンはどの仮想ワークスペースにも表示される。これも、WMClipとWMDockの違いだ。
仮想ワークスペースや仮想デスクトップは使わない人はまったく使わない機能だが、使う人になっとてなくてはならない機能だ。
自分だけの高効率デスクトップをつくる
Window Makerはこのようにカスタマイズしやすく、さらに簡単だ。GUI環境はCUI環境と比べるとどうしてもカスタマイズ性が劣るところがある。このためGUI環境は提供されているものをそのまま使うといったところがあるが、やはり不便な部分は変更して扱いやすくしていった方がよいんじゃないかと思う。
幸か不幸か、現状のWSLではWindow Makerのようなウインドウマネージャが利用しやすい。ぜひともこうした環境を一度使ってみていただきたい。自らカスタマイズしていくGUI環境の扱いやすさや作業効率のよさなどを体感してもらえると思う。