2004年にリリースされて以来、多くのWebサービスで開発・サービス双方のプラットフォームとして採用され、今や大きな市場シェアを誇るLinuxディストリビューション「Ubuntu」。幕張メッセで6月8日から3日間にわたり開催された「Interop Tokyo 2016」の初日の基調講演には、Ubuntuプロジェクトを推進するCanonicalの創業者であり、製品戦略バイスプレジデントでもあるマーク・シャトルワース氏が登壇。氏は「ドローン、ロボットからクラウドまで、広がるUbuntuの世界」と題し、現在の企業ITが抱えるオペレーションの問題と、それを解決するサービスオーケストレーションツール「Juju」のアプローチについて語った。

ソフトウェアのコストは下がったがITコストは増えている!?

Canonicalの創業者 マーク・シャトルワース氏

Canonicalの創業者 マーク・シャトルワース氏

ここ10年ほどの間、企業ITの世界ではOSS(オープンソース・ソフトウェア)への移行が続けられてきた。例えば、分散処理技術「Hadoop」は大量のデータに隠された知見を取り出す非常に強力な機能によってビッグデータ活用を推進しているし、「OpenStack」や「CloudStack」はいずれもクラウドシステムを構築するうえで極めて重要なインフラとなっている。

このようにビジネスにおいて利用価値の高いOSSが普及したことで、企業がソフトウェアに費やすコストは年々減少している。にもかかわらず、IT予算自体は増え続けているのが実情だ。その理由について、シャトルワース氏は次のように熱弁を振るう。

「ソフトウェアのコストが下がっていく速度以上に、急激な勢いで運用コストが増加しているからです。私は日々さまざまな企業のITリーダーと話をしますが、世界中の企業で合法的に無料でソフトウェアがダウンロードされているにもかかわらず、誰もが口をそろえて『OpenStackは高い』と言います。それは、ソフトウェア自体ではなく、運用にコストがかかっているからにほかなりません。したがって、コスト問題を解決したいのであれば、新たな運用手法を見つける必要があります」

運用コストの増加を招いている要因は、企業のITシステムの構成が年々複雑化していることにある。15年ほど前であれば、業務システムを構成するのはデータベースとアプリケーションぐらいだった。しかし現在では、どのシステムも非常に多くのコンポーネントから構成されるようになり、その運用管理に膨大なリソースが必要になっているのである。

例えば、複数のコンポーネントで構成されるOpenStackだが、そのコンポーネント数は今も増え続けている。そのため、かつてのようにサーバ2台だけでシステムを構成するといったことは難しくなり、「場合によっては、100台ものサーバを用意しなければならないケースすらある」(シャトルワース氏)というのだ。

「大量のマシンをどう管理するかが重要です。例えば、クラウドであればどんなシステムが必要で、どのようにマッピングするかが大きく問われることになります。『100トンのH2O(水)を今日中に東京から大阪に運べ』と言われたと想像してみてください。同じH2Oでも、水(液体)なのか、氷(固体)なのか、水蒸気(気体)なのかによって運ぶためのツールは変わってくるでしょう。システムもこれと同様で、環境に応じて使うツールを変えなければいけないのです」とシャトルワース氏は訴えた。

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