新興ストレージベンダー8社を集めて開催した座談会の様子をお伝えしている本企画。今回も引き続き注目の新技術について議論の模様をお伝えする。

前回は3D NANDに関する各社の見通しを紹介したが、今回はDockerやIaaS、SDSなどの話題に触れる。実ユーザーにしかわからない、IaaSの留意点なども挙がっているので、ぜひご覧いただきたい。

シリーズ企画『新興ストレージベンダー座談会』

以下の記事も併せてご覧ください。

ほとんどサーバー!? NASの新たな進化形態

──一方で、NASをサーバのように使えるようになってきました。SynologyさんのDockerはどう実装されているのですか。

Synology(アスク) 児島氏:ハイパーバイザー上でOS単位で仮想化するのではなく、Linux OS上でアプリケーションのみを分離して稼働させます。Dockerでは、DockerHubという共通のリポジトリからアプリケーションなどのイメージを取得できるのですが、それをGUI付きで簡単に利用できるようにしました。ある機能やアプリケーションを追加したいというときにさっと追加できます。

──QNAPさんもハイバーバイザー型の仮想化機能を提供していますが、注目技術としてはDASやNASの集中管理機能を挙げています。

QNAP 神崎氏

QNAP Systems マーケティング部 部長 神崎尚君氏

QNAP 神崎氏:Thunderboltに対応したNASを発表する予定です。Mac等で、動画などの大容量ファイルを扱う用途に提案していきます。そのほか、SnapShot機能実装、セキュリティ対策機能強化、複数のNASの集中管理機能をファームウェアに搭載する予定です。

しばらく使ってから気付く! IaaSの落とし穴

──次に、クラウドと比較してオンプレミスのストレージにどんなメリットがあるか、どう使い分けるかについてお伺いしたいと思います。まずはコストについては意見が多くでました。

Nimble川端氏:規模が小さいうちは経済的なのですが、データが溜まり始めると、コストがかかることが多いですね。データが大きくなるとストレージ容量のコストが増えるのはもちろんのこと、IaaSにはネットワーク転送料をとるサービスも少なくありませんから、移行作業で莫大なコストが生じることもあります。「オンプレミスのほうが安い」という理由で、クラウドからオンプレミスに戻したお客様も少なからずいらっしゃいます。

Violin Memory 青野氏:おっしゃるとおり、見た目のコストは安いのですが、目に見えないコストがかかる場合もありますね。なかにはクラウドベンダーロックインが起こりやすいビジネスモデルを展開しているケースもあります。検討の際には、その点にも気を付けないといけません。

Synology (アスク) 児島氏

Synology販売代理店 アスク 技術部FAE 児島雅之氏

QNAP (テックウィンド) 野嵜氏:この話で最近多いのは医療系のお客様です。医療ではデータの保管期間が決まっているうえ、扱うデータもフルHDの動画などか増えています。クラウドに移行したら年間数千万円を課金されるようになってしまい、オンプレミスに戻したいという相談が増えています。データや用途に応じてクラウドを使い分けなければならないシーンはこれからも増えてくると思います。

──そもそもデータを社外におけないという企業もあります。

Synology (アスク) 児島氏:クラウド上でデータの秘匿性をどう確保するかは、未だに大きな課題ですよね。コスト以前の問題としてデータを外に出すことなど考えられないという企業は少なくありません。

一方で、運用にコストをかけられないという企業もいます。その場合は、必然的にIaaSを選択することになるのでしょう。当然のことかもしれませんが、そうした事情を考慮しながら、オンプレミスとクラウドを使い分けていくことが大事だと思います。

サンディスク 山本氏

サンディスク コマーシャルセールスマーケティング シニアマネージャー 山本哲也氏

サンディスク 山本氏:時折クラウドは信頼性が問われることもありますが、個人的にはオンプレミスもIaaSも同じレベルだと思っています。シミュレーションツールを提供しているサービスもありますので、そうしたツールを利用しながら、クラウドの課金体系とサービスレベル、そしてお客様自身の用途を考えてコスト評価を行っていくことが大切でしょう。

ティントリ 羽鳥氏:ティントリは、IaaS,DaaS,SaaSサービスの基盤としても多くの実績があり、クラウド事業者様は、先述のティントリの特徴を生かし高品質なIaaS,DaaS,SaaSサービスを提供いただいています。 クラウド、サーバSAN、SDSなどの流行りが、外付けの共有ストレージと対峙するように見られる向きもございますが、実を言うとパブリッククラウドの環境にもティントリは使われているんです。お客様の意識がオンプレミスからクラウドに移りつつありますが、ティントリの用途もクラウドの基盤として同じように移ってきます。要するにトレンドが変わってもティントリは変わらず使われているということです。

一方、サーバコンポーネントでストレージを構築しているような価格重視のパブリッククラウドでは、性能の不安定さや、サービス品質の低さから、”クラウド離れ”も起こっているとも聞きます。