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身近な業務に隠れたIoT活用のヒント

【連載】

IoTでできることを見つけるための発想トレーニング

【第1回】身近な業務に隠れたIoT活用のヒント

[2021/05/31 08:00]松下享平(Max) ブックマーク ブックマーク

こんにちは。ソラコム テクノロジー・エバンジェリストの松下です。本日より、「IoT(Internet of Things)活用の始め方」をテーマに連載をスタートします。IoTとは「センサーや通信デバイスを利用し、クラウド上で離れた場所のモノを管理する技術」です。

IoTとは

私が所属するソラコムは、IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供しています。私の肩書きであるテクノロジー・エバンジェリストの役割は、IoTの活用方法や事例、必要となる技術を多くの人に知っていただくことです。今でこそ活動の多くはオンラインセミナーになりましたが、数年前までは全国津々浦々にお伺いして年間100本以上の講演を行っていました。講演活動では、IoT活用をこれから始める方、製造業などで現場の技術に精通した方、さらには個人の趣味でIoT工作をされている方、といろいろな方と情報交換する機会があります。その中で、成果が出るIoT活用には「共通点」があることが見えてきました。

それは「習うより慣れろ」。IoTを自ら体験することで何に使えそうかを体験し、さらなるIoT活用につなげているという点です。IoT活用の近道はまず「使って試してみる」こととも言えます。しかし、実際に使ってみたいと思うアイデア、それも自分の業務に役立つ仕組みに関するアイデアがないと、なかなか取り組みを始められません。つまり、IoT活用を始めるために最も重要なのは、「何をIoTで便利にするか」というアイデアです。

そして今、アイデアを形にするコストが劇的に下がっています。

皆さんご存じのように、スマートフォンのような高性能なデバイスが数万円で購入できるようになり、センサーやIoTデバイスも安価に入手できるようになりました。また、データなどの可視化やアラート通知のためのアプリケーションも、WebメールやLINE、Slackといったコミュニケーションツールと連携したり、クラウドを活用したりすることが可能です。通信においては、有線LANがなくても、スマートフォンと同じセルラー通信を、IoT向けに少ない初期費用でリーズナブルに利用できるようになってきました。こうした環境が整い始めたことで、IoTの活用がぐっと身近になったのです。

本連載では、数万円で実現できるIoT活用のアイデアと、その実現のために必要な技術をわかりやすくご紹介していきます。さまざまなIoT活用のアイデアをご覧いただくことで、”IoTの使いどころ”を考える思考回路を育て、実際の業務において「この仕組みにはIoTが使えるはず!」と気づけるようになることをゴールとしています。

総務の仕事を楽にするには?

それでは、早速IoT活用のアイデアを考えていきましょう。

冒頭で触れたように、IoTとは「センサーや通信デバイスを利用し、クラウド上で離れた場所のモノを管理する技術」です。これにより、遠く離れた事象を手元で見られるようにすることができます。

遠くと言っても、数百キロ離れた場所だけではなく、数メートルの距離でもIoTが活用できる場面があります。オフィスの中で、席を立ってその場に行けばわかるけれど、実際に行くのが手間になることはありませんか? 例えば、自分が総務担当の立場だったとして、少し考えてみてください。こんなケースがあるのではないでしょうか。

  • 受付に荷物配達があったことを把握したい
  • 備品が足りないときに、場所と不足物を知りたい
  • 郵便受けに荷物が届いたら通知を受けたい

受付に宅配便などの届け物があったとき、受付から総務の担当に連絡が入ります。これは非常によくあるシチュエーションなので、すでに受付管理システムを導入されている企業も多いかもしれません。

では、プリンタの紙やインクなど、備品が切れた場合はどうでしょう。切れたことがわかりさえすればすぐに補充を手配できますが、頻繁にチェックしに行くのは手間がかかります。同様に、配達された荷物もできるだけ早く確認したいものですが、いつ届くかはわからないことのほうが多いでしょう。

このように、「(まだシステムは導入されていないけれど)その場で何か動きや変化があれば知りたい」といったニーズは普段の業務の中にたくさんあります。そして、IoTをうまく活用すれば、そうしたニーズに応えられるのです。

IoTボタンで会議室の備品の在庫切れをお知らせ

今回は「会議室を使った人が、ホワイトボードペンなどの備品不足や取り替え時期に気づいたときに、総務部門に通知する」の仕組みを考えます。

今回のように、人が知らせることができる場合は「ボタン」が有効です。ボタンなら直感的に使い方がわかり、誰でも利用できます。レストランなどで見かける呼び出しボタンのイメージです。ボタン自体は自作してもよいですし、市販の製品を利用してもよいでしょう。

ボタン

左:開発ボードと接続可能な「Seeed Studio Grove-Button(P)」/中央:セルラー通信搭載で3つのボタンアクションをカスタマイズできる「SORACOM LTE-M Button」/右:市販のボタン部品、マイコンを筐体に格納した自作ボタンの例

しかし、ただボタンを置いてもお知らせはできません。何らかの通信環境を導入する必要があります。オフィスで使える通信には、いくつかの種類があります。すでにネットワーク環境がある場合は、有線LANやWi-Fiを設定して利用することもできますし、常にスマートフォンと連携して使える場合には、近距離無線通信のBLE(Bluetooth Low Energy)の利用も検討できるでしょう。

そして、管理しやすい通信として利用が増えているのがセルラー通信網です。身近なところで言えば、スマートフォンの通信にも使われています。「SIMカード」と言えば、イメージできるでしょうか。セルラー通信に対応した端末さえあれば、公衆網なのでオフィスフロアはもちろん、ビルを移動しても使えます。

ネットワークの準備ができたら、次は通知の仕組みを作ります。IoTシステムでよく使われる仕組みは、メール送信、SMSでの通知、社内で使っているSlackなどのコミュニケーションツールへの連携などです。さらに、音声読み上げのプログラムと組み合わせれば、スピーカーを通じて音声で通知することもできます。

IoTアイデア「備品の不足を通知する」

この「備品の不足を通知する」仕組みにより、会議室の備品切れに気づいた人が「わざわざ総務担当の連絡先を検索して、電話もしくはメールで通知する」という作業をしなくてよくなります。

総務担当は、連絡があった会議室だけ見回って備品を補充すればよいため、定期点検の手間を削減できます。さらに、通知に関する時系列の履歴データをクラウド上に蓄積すれば、データ活用や分析が可能です。どの会議室が備品の消耗が早いのかを把握し、普段から設置しておく備品の数を増やす、といった数値データに基づく業務改善にも着手できるでしょう。

定期点検の自動化は、実はIoT業界ではよく聞くニーズです。総務の仕事で言えば、ほかにもコピー機の紙やインク切れを通知する、郵便受けに荷物を入れたときに配達した人がボタンを押して知らせるという仕組みにも応用できます。

ほかの部署の業務についても想像してみてください。例えば、営業部ではお客さまの現場に納品した機械の消耗品がなくなったときに通知が欲しいといったニーズがありませんか。工場では、手が離せない作業をしているときにリーダーに連絡を取りたいこともあるはずです。手軽に通知できることで、便利になるシチュエーションはないでしょうか?

今回説明したように、IoT活用を始めるハードルは低くなってきています。IoTのアイデアを思いついたら、ぜひ実際にシステムを作って試してみることをお勧めします。

次回は、「コーヒーの置き忘れを知らせる」仕組みとアイデアについて考えます。

さらに詳しく!

今回の仕組みは、以下の3点を用意することで実現できます。

IoTで呼び出しシステム
  1. 気づいた人が、押して通知するための「IoTボタン」
  2. IoTボタンとクラウドをつなぐ「ネットワーク」
  3. IoTボタンを押したときに通知する「プログラム」

具体的なIoTボタンの開発手順を詳しく知りたい方は、ソラコムが無料で公開しているSORACOM IoT DIY レシピ「IoTで呼び出しシステム」を参考にしてください。

本稿でも紹介したセルラー通信搭載のIoTボタン「SORACOM LTE-M Button」を使って、通知システムを作るために必要な機材一式と、ステップごとの手順が記載されています。レシピをご覧いただいて、まず自分で手を動かして作ってみることもできますし、理解が難しい部分があれば自社のシステム部門やエンジニアに相談することも選択肢になります。

著者紹介

株式会社ソラコム
テクノロジー・エバンジェリスト
松下 享平(ニックネーム:Max)

エバンジェリストとして、SORACOMサービスを企業・開発者により理解、活用いただくための講演活動を担当。エバンジェリストとしてのTIPSを紹介するブログも執筆。

最近は、IoTをもっと手軽に使っていただけるデバイスを提供する「SORACOM IoT ストア」にて、IoTで身近な作業を便利に改善する「IoT DIYレシピ」の作成をリード。これからのDXを実現するためのキーテクノロジーであるIoTを民主化し、アイディアとパッションをもつあらゆる人がIoTを使えるようにするべく情報発信を続けている。

気軽にフォローしてください。
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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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