3Dデータ+PLM活用で広がる製造業の可能性 - エリオットグループの挑戦

[2019/09/13 08:00]伊藤正子 ブックマーク ブックマーク

開発ソフトウェア

日米拠点の共同開発で目指す「完全自動設計」

一方、ジュネット工場では、2009年から自動設計に着手。マスタモデルからジョブモデルを作成する考え方は袖ヶ浦工場と同様だが、ジュネットでは、リレーションではなく、Creo Parametricの基本的な操作を自動化するアドオンソフト「Smart Assembly」を採用した。Smart Assemblyに設計情報を手入力して実行すると、マスタモデルの寸法やパラメータへ値を自動入力し、ジョブモデルが完成する。ただし、自動化した部品は一部だったため、統合的な自動化はかなわなかった。

袖ヶ浦工場の自動設計手法では、リレーションを利用

ジュネット工場では、Smart Assemblyを利用

その後、袖ヶ浦とジュネットの両拠点の経営統合に伴い、2013年、両拠点でPTCのPLM製品「Windchill(ウィンチル)」を導入。2017年には、競争力のさらなる強化に向け、完全自動設計システムの日米共同開発が開始された。

それまで両拠点で使用していた自動設計システムは、いずれも部品単体の自動設計に留まり、アセンブリまでの完全自動化には至っていなかった。そこで、共同開発ではジュネット工場で使っていたSmart Assemblyを採用。これには、「(袖ヶ浦工場でできていなかった)PLMの操作やアセンブリ作業などのマニュアル操作部分をちょうどまかなえることが決め手となった」(吉田氏)という。

目指すのは、ワンクリックで設計仕様の読み込みからマスタモデルの複製編集、標準部品のダウンロード、構成部品のアセンブリまでを全て自動化すること。帰宅時にボタンを押して帰れば、翌朝出社したときに全てのモデリング作業が終わっているイメージだ。

また、日米の設計指針の差異をなくすために、共通のマスタモデルを使用することにし、CAMと加工機にダイレクトに連携できる3Dデータを同時に作成することも目標に掲げられた。

講演では、このコンセプトの下に開発した完全自動設計システムのデモ動画が披露された。人手が必要なのは、製造番号を入力して実行ボタンをクリックするところまで。2時間ほどでアセンブリまでの全ての作業が完了し、図面も自動的に作成される。すでに運用開始されているものの、まだ一部のコンプレッサ仕様への対応であることと、作成後のモデルや図面の修正作業が残っていることから、今も設計時間ゼロを目指して開発を続けているという。

PLM/3Dデータ活用に広がる可能性

エリオットグループが目指す設計時間ゼロの効果は、単に設計にかかる時間が短くなるというだけではない。吉田氏は「開発したツールをフロントローディングにし、受注時点で使えるようになれば、見積もり精度の向上や、顧客への3Dモデルを使った設計提案、提出図面の早期発行が可能になります」と説明する。

後工程の生産に与える効果も少なくない。通常、受注設計生産の設計作業では工程に沿って随時図面を作成していくが、早期に全ての図面を出せれば、加工や組立の現場が想定外の図面に備えてマージン(予備期間)をとる必要がなくなり、急な短縮要求などにも柔軟な対応が可能となる。

また、吉田氏は「客先仕様を受け取ってから製造を完了するまでの各セクションで、いかに情報の受け渡しをPLMによってシームレスに行うかが重要」だとも語る。

このPLMに蓄積されている3Dデータについては、製造データとして使う以外の活用も考えているという。

その1つが、配管レビューへの適用だ。エリオットグループでは、コンプレッサを納品する際、蒸気タービンやモーターを組み合わせて1つのユニットとして納めているのだが、その周辺には小配管があり、二次元の図でレビューするのは非常に難しい。ここに3Dモデルの活用が有効というわけだ。

そのほかにも、吉田氏は3Dデータを使って作成したバルブや計器などへのアクセスを確認するためのVR動画や、コンプレッサ分解組み立てのアニメーションなどを紹介。こうした動画を図面や手順書に埋め込んで現場でタブレット端末で確認したり、顧客に提出する取り扱い説明書に埋め込んだりといった使い方を考えているという。

「3Dデータの活用は、製品の3Dモデルがあることが前提です。まずモデルがあり、そこから図面や加工系の3Dデータ、VRやARを作成し、それら全てがPLMのなかでつながっている状態がデジタルトランスフォーメーションに向けてあるべき姿だと考えています」

技術の進歩により、PLMに蓄積された3Dデータの用途にはさまざまな可能性が広がっている。吉田氏は「当社は、最新技術を積極的に取り入れていくことで、お客様へより良いサービスを提供できると考えています」と力を込め、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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