3Dデータ+PLM活用で広がる製造業の可能性 - エリオットグループの挑戦

[2019/09/13 08:00]伊藤正子 ブックマーク ブックマーク

開発ソフトウェア

9月5日、PLM(Product Lifecycle Management)活用のベストプラクティスについて考える年次フォーラム「Product Lifecycle Management Forum 2019」が都内にて開催された。「物理世界とデジタル世界の融合が創り出すイノベーションの未来」をテーマに掲げた今回は、PLM/IoTの活用によるデジタルトランスフォーメーションや、イノベーション創造の可能性について、さまざまな事例や解説が繰り広げられた。

そのなかから本稿では、エリオットグループ エンジニアードプロダクツ プロジェクト&エンジニアリング統括部 設計開発部 詳細設計課 吉田晃氏による事例講演「すべてはお客様のために。~設計時間ゼロへの挑戦~」の模様をダイジェストでお届けする。

「設計時間ゼロ」を目指して

産業機械メーカー荏原製作所の風水力機械カンパニーであるエリオットグループでは、千葉県袖ヶ浦市と米ペンシルバニア州ジュネットに製造拠点を置き、コンプレッサ/タービンの設計生産を行っている。

主力は、石油化学プラントの心臓部として動作する「遠心コンプレッサ」と「蒸気タービン」。遠心コンプレッサは、ローターが回転することで遠心力を発生させ、ガスを圧縮する仕組みになっており、ガスの流路を形成するための「中胴」のほか、「ケーシング」「軸受」「シール」「羽根車」「ノズル」などで構成される。顧客の仕様に応じて羽根車の数や種類が変化したり、ノズルの数が変化したりするため、「受注設計生産型(ETO:Engineer to Order)」の製品となる。

また、サイズは3,200kgほどのものから、158,000kgを超える大型のものまでラインナップされているが、「構成部品についてはほとんど変わらないのがコンプレッサ設計の特徴」(吉田氏)だという。

エリオットグループ エンジニアードプロダクツ プロジェクト&エンジニアリング統括部 設計開発部 詳細設計課 吉田晃氏

上述の通り、エリオットグループのコンプレッサはETOだ。どこまでの製造工程をあらかじめ進めておくかに応じて製造業のビジネスモデルを分類すると、ETOはその性質上、販売までのリードタイムが長い部類に入る。

赤枠がETO。図の上に行くほど、販売までのリードタイムが短い。例えば、PCのBTOは「受注加工組立生産」、家電量販店で売っているような商品は「見込み生産」に相当する

自動化によってコンプレッサの設計時間がゼロになれば、ETOから「受注生産型(MTO:Make to Order)」に転換し、リードタイムを短縮できることになる。

先んじて、ジュネット工場では1998年から、袖ヶ浦工場では2006年からPTCの3D CAD「Creo Parametric」を導入し、設計の3D化は進められていた。加えて、自動化への取り組みのきっかけとなったのは「設計思想の転換」だったという。遠心コンプレッサのフルモデルチェンジが行われ、(3D CADと相性の良い)パラメトリック設計が可能となったのだ。

こうして始まった自動化への取り組みには、「生産側から『設計が遅い』と言われるのを何とかしたいという想いもあった」と吉田氏は”本音”をのぞかせた。

まずは「固変分離」から - 設計自動化に向けた施策

自動化に向け、まず実施したのが「固変分離」だ。数ある部品のうち、形状が固定されている部分と変化する部分に分けようという施策で、「固」とは、そのまま再利用できる標準化された部品(標準部品)であり、「変」とは設計仕様に応じて都度、形状を変化させる部品(都度設計部品)を指す。

標準部品に関しては、事前に図面やモデルを作成し、モデル名と部品番号をデータベース化。一方、都度設計部品は、変更部分をパラメータ化していった。

「経験上、固変分離が自動化を進めるための第一ステップだと考えています」(吉田氏)

遠心コンプレッサの固変分離。エンドウォールやベアリング(軸受)などは標準部品だが、都度設計部品も多い

固変分離をした上で、袖ヶ浦工場では都度設計部品にCreoのリレーション機能を使用した自動設計手法を確立した。

具体的には、変化する部分にパラメータを設定できる「マスタモデル」を作成し、このマスタモデルに設計仕様から自動生成した「リレーション(パラメータ値)」を読み込ませる。これにより、仕様に沿った「ジョブモデル」が完成する仕組みだ。

自動化以前には、過去に作成した図面のなかから、今回の仕様に近いものを流用して編集/設計する方法をとっていた。だが、このやり方では、どこかのタイミングでオリジナルの設計に問題が発覚して派生図面を変更した場合、その後、どれを流用していけばよいのかを判断するには知識と経験が必要になる。

「利用実績があるからといって、全て完璧な図面だとは限りません。過去に不具合を起こした図面が地雷のように潜んでいる可能性もあります。一方、マスタモデルを利用するやり方では基は1つなので、何か設計変更があっても1つ変更すれば、全てに反映されることになります」(吉田氏)

こうした取り組みにより、袖ヶ浦工場では2006年~2010年で設計時間を約70%削減することができたという。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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