ZOZOTOWNを支える"縁の下"のシステム開発

[2018/07/09 08:00]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

開発ソフトウェア

設計思想の意識改革 - ZOZOTOWNの”今”

ZOZOTOWNをシステム的に見ると、急成長するビジネスとそれに伴って急増するアクセス数との闘いの歴史でもある。初期の頃は、セールのたびに「重い」「遅い」という批判を受けた。大蔵氏によると、サービス提供が遅延する要因は「回線」「ネットワーク」「Web」「DB」という順で推移していく。

「遅くなって回線を増強すると、ルータに負荷がかかります。ルータを増強するとWebに負荷がかかり、それを改善するとデータベースに負荷がかかります。データベースを改善すると、また回線が足りなくなって振り出しに戻る。軽くなってたらその分お客さんが来て、また重くなって……という繰り返しが4~5年続きました。全部の要素を一気に1.5倍にしたこともありますが、それでも足りません。最後のほうはお金で解決しようと、回線を一気に10倍にしたこともありました。2011年頃の話です」

平常時とセールなどのピーク時でアクセス量は3~5倍の差があったという。全てのシステムはオンプレミスで動作していて、リソースは全てピーク時に合わせていた。平時の稼働率が20%に満たないこともあったいう。

このように10年近く運用し続けてきたシステムだが、限界も見え始めていた。データベースが肥大化するなか開発案件は急増していた。ガラパゴス化したシステムは密結合になり、将来的なビジネスの成長に耐えられるか、大蔵氏自身が懸念を持ち始めていた。

「2012年ごろに設計コンセプトを疎結合アーキテクチャに変えようと個人で画策したことがあります。ただ、現場のスタッフに話したところ『絶対にできない』と大反対されてしまいました。ちょうどDockerが出始めたころで、環境としては整いつつあったのですが、一気に変えることは難しいとなり、断念しました」

その後、社内の調整などを進め、ビジネスの状況の変化もあり、2016年頃から再び疎結合アーキテクチャへの変更に着手し始めることになる。

「コーディネートサービスの『WEAR』といった新サービスの展開や、ZOZOTOWNのなかでのサブサービスの増加など、システム側でスピーディーに対応する必要が出てきました。例えば『今カートの中身を触っているのでほかの開発は中断してください』では物事が進みません。並行開発で開発速度を上げたり、中途採用やM&Aで獲得した人材を活用したりといった工夫が求められるようになりました。そこで緩やかに結合したシステムに少しずつ変えていっている状況です」

また、これまでオンプレの良さを享受してきたシステムも、PaaSを中心としたクラウドネイティブ化でステートレスな環境にしていくことを構想している。また、現場のエンジニアやスタッフの考え方についても、クラウドネイティブ化に向けて「オンプレで基本的に落ちないシステム」から「クラウドでインスタンスが落ちることを前提としたシステム」へと設計思想を変える意識づくりに取り組み始めている。

「疎結合アーキテクチャを今の言葉で言えばマイクロサービスです。クラウドネイティブやマイクロサービスをキーワードにして、いま基本設計を進めているところです。もっとも、うちもそこそこ大きいサービスですから、一気に入れ替えることは現実にはできません。サービスをどう切っていくか、それぞれのつながりをどうしていくかを慎重に考えて進めています。基本的にはコツコツとはがしていくことになります」

また、大蔵氏は、システム設計におけるシンプルさの重要性を次のように述べる。

「最初にZOZOTOWNのシステムを作ったときもそうですが、シンプルであることが大切です。Simple is Best。『星の王子さま』を書いたサン・テグジュペリの言葉にも『完璧がついに達成されるのは、何も加えるものがなくなった時ではなく、何も削るものがなくなった時である』とあります。システム設計では複雑なものを作るのは簡単です。シンプルなものを作ることが難しい。今後は、そうしたことを新しいシステムを作るエンジニアにも伝えていければと思っています」

先日開かれた2018年3月期の決算発表で前澤氏は「10年以内に時価総額5兆円企業を目指す」と宣言した。途方もない夢物語にも映るが、年商1億円の頃に「100億円売れるシステムを作れ」と大蔵氏に依頼したことを思えば、現実に見据える目標の1つにすぎないとも言える。スタートトゥデイの企業理念は「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」だ。大蔵氏もまた、その理念の実現に向けて新しいチャレンジに乗り出しているところだ。

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