ZOZOTOWNを支える"縁の下"のシステム開発

[2018/07/09 08:00]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

開発ソフトウェア

無いモノは作る! 多忙を極めた急成長期

開発環境は、Web、ミドル、データベースをIIS、ASP、SQL ServerとWindows環境でそろえ、フレームワークを独自開発した。当時は、LAMPなどのLinux環境が人気だったが、なぜWindows環境を選択したかと言えば、「まず僕自身が”無宗教”で何でも良かったこと、そもそも前身のシステムがそうだったから」(同氏)だ。前身のシステムは、前述のとおり、前澤氏が秋葉原で買った本を基に作られたものだが、その本はASPの本だった。大蔵氏は「もしPHPやApacheの本を手に取っていたら、今頃ZOZOTOWNのシステムはLAMPで構成されていたかもしれません。開発環境はあくまで道具だと捉えていて、そこに強いこだわりはありませんでした」と振り返る。

独自フレームワークの開発についても、今でこそ「独自に作るとメンテナンスも面倒だし良いことがない。なぜ作ったのか」などと指摘されるというが、そもそも、開発に着手した2003年当時はRuby on RailsやSpringなどのフレームワークすら存在しなかった。「無いので自分で作るしかなかった」(同氏)という事情がある。

「フレームワークを自社開発する利点は、どうにでもなるということです。ありもののフレームワークを使ってバグフィックス待ちになることはありません。またチューニングしやすいことも大きい。アクセス数が増えてサイトが遅くなったとき、この利点には大いに助けられました。フレームワークはWindows環境であることからCOM(Component Object Model)で実装しました。COMはC+でネイティブで書くのでパフォーマンスが非常に良いという特徴があります。パフォーマンスがボトルネックになってもフレームワークをパパッと書き直してトラブル対応にあたるということが何度もありました」(大蔵氏)

フロントの開発言語はVBSだ。大蔵氏はこれについて「そもそもVBSを書けないという人はいません。ちょっと勉強すれば誰でも書ける。システムの勉強をしっかりしないと書けないような言語、例えばJavaなどを採用しなかったことが、後々効いてきます。人材採用が難しいとき、社内の未経験者にコードを書いてもらうことができるようになったのです。VBSの書き方が問題になることもありますが、そこは開発のノウハウでカバーしてきました」と振り返る。

人柄重視の採用活動と腹をくくった社員教育

オープン後2~3年は、エンジニア4~5名、デザイナー2名という体制で、サービスの急成長を支え続けた。当時は0時過ぎに帰宅することが多く、完全にブラックな状況。さすがにまずいとなって採用を進めるものの、「社風」に合わず、中途では人材が全く採れなかったという。

「独特の社風があって、採用に関しても人柄を重視していました。ゴリゴリのエンジニアの方でスキルやノウハウで全く問題がなくても、社風に合わずお断りすることがほとんど。スキルやノウハウは勉強や経験で身に付きます。時間が解決してくれることも多い。でも人柄は難しい。30歳を超えるとパーソナリティを変えるのは大変です。今から振り返ると、人柄で採用するというのは悪くない選択肢だったなと思っています」

開発量が増え、人が採用できないなかで取り組んだのが教育だ。ZOZOTOWNは倉庫や写真撮影なども自社運営していた。ユーザーは在庫管理や撮影した写真のアップロードなどでシステムの管理画面を直接操作するため、システムがどんなものであるか、ビジネスの観点から理解している社員がほとんどだった。そのため「システムに興味のある人来てください」と募集をかけると、そのたびに2~3人が来てくれる状況だった。

「腹をくくって、『キーボードを打ててExcelは触れます』という(レベルの)人を一から育てていきました。ここでVBSが役に立ちました。基本的なアルゴリズムを勉強してもらったら、僕らが書いた資産を見てもらって、コピペでの修正や改善をお願いする。1年もすると即戦力です。今一番古い人で13年目。データセンターに日夜詰めて頑張ってくれた人もたくさんいます」

現在、スタートトゥデイテクノロジーズの社長である久保田竜弥氏も、長年にわたってZOZOTOWNの縁の下で力を発揮してきた一人だ。一方、未経験者を採用することの弊害もあった。しばらくすると3年未満の経験者が6割という状況になり、設計や運用といった経験者層の負担が格段に高くなった。そこで、さまざまな”仕組み化”を進め、負担を少しずつ軽減していった。

こうして、初期から中期のZOZOTOWNの開発陣容は30~40人規模になった。独自フレームワークを使うことで「かなりガラパゴスな状態」(同氏)ではあったものの、自分たちなりの最適化が進み、チームとしてまとまり、開発効率も高かったという。また、独自フレームワークは外部からはブラックボックスであるため、セキュリティ的にも外部攻撃に強いことがZOZOTOWNのサービスを支える土台の1つにもなった。

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